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花の童話

サフランの魔法

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 
 サフラン

 むかし、むかしあるところに白い時計搭の
ある村がありました。
 リムネーは、おてんばで歌好きでお喋りな
娘です。
 いつも、村の真中にある白い時計搭でいろ
んなお話をしています。

「今日は、あっとおどろく、物語。
 舞台は、昔々の牧場で始まり、牧場で終わ
る物語・・・」

 牧場にサフランの花が咲くころに生まれた、
ので、サフランという、可憐な少女がいました。
 サフランの花は薬草として、使われることが
あるために、医術に長けて、誰にでも慕われる
メディクスという若い青年医師が牧場の花畑に
時々やってきます。
 サフランは、メディクスのことが大好きで、
した。
 サフランは、ときおり、メディクスから医
術の話を聞き、メディクスから医術を少しず
つ学んでいきます。
 そして、いつしか二人は恋人同士になりま
した。
 しかし、サフランの母は、それを快く思い
ませんでした。

 サフランは王様の側室になることが決まって
いる上に、サフランの母は、こともあろうに、
メディクスに恋心を抱いていたからです。
 サフランの母は、夫を裏切ることもできず
に、報われぬ恋をもてあまし、こともあろうに、
メディクスにすべてを忘れる薬を飲ませて、
メディクスからサフランへの恋心と一緒に、
医師の技術も奪ってしまいました。
 そして、すべてを忘れさせられたメディクス
はそのまま、サフランの前に姿を現さなく
なってしまいました。
 そうともしらない、サフランは嘆き哀しみ毎
日、毎日、目が真っ赤になるまで泣きました。
 見るに見かねたサフランの父は、サフランの
花畑のサフランをすべて刈り取り、大量のサフ
ランのめしべを収獲し、メディクスの思いだす
サフラン畑をなくしてしまいました。
 サフランのめしべを使った料理は、目を覚ま
すような美しい黄色にそまりますし、なかなか
量がとれない為、黄金以上の価値があり、国王
でも簡単に手に入らないものです。
「サフランよ。このサフラン畑は、お前の母が
お前をお腹に宿したころ、魔法使いが、お前の
誕生を祝って、魔法でサフラン畑にしたものだ。
 そのとき、魔法使いの魔法の呪文を今でも覚
えている。
 ”与えよ”だ。
 もともと、このお前も天からの私達、夫婦に
与えられた、かけがえの無い娘。
 だから、私達は、このサフランのめしべをす
べてをお前に与えよう。
 お前も、困っている人を見かけたら与えなさ
い」
 サフランは、父の言葉を心に刻み込み、サフ
ランの花畑のめしべをもって、国王の側室にな
りました。

 サフランは、それを国王に差し出すと、国王
は大変喜び、褒美に首飾りを与えました。
 ある日、サフランは国王の使いで、お城の外に
でました。
 すると、麻の布を全身にかぶった一人の乞食が
目に付きます。着るものもろくになく、服の代わ
りに麻の布をかぶっているのです。
 サフランは、魔法の呪文を思い出し、国王から
与えられた首飾りを乞食に与えます。
 乞食は、何度も頭を下げてその場を立ち去り
ました。
 それを知った国王はカンカンに怒り、サフラン
の手首を切り落とし、お城から追放してしまった
のです。
 しかし、サフランは嘆き哀しむことはありませ
んでした。
 メディクスがいなくなったことと比べれば、こ
れくらいのことは、平気だったのです。
 サフランは、隣の国へ行って、メディクスから
与えらた、医術の知識を使って、街の人々の怪我
や病気を治すことにしました。
 手首の傷がいえるころ、サフランは、貧しい
人々を助ける大富豪と出会います。
 大富豪は、顔も声も性格もメディクスと瓜二つ
で、サフランは大富豪に恋に落ちます。
 大富豪もサフランのことを気に入り、やがて二
人は結婚することになりました。
 でも、手首を失った理由だけは話すことが出来
ませんでした。大富豪は、サフランの気持ちを察
して、サフランから聞こうとはしませんでした。
 ある日、ガリガリにやせこけた人たちがやっ
てきました。
 隣の国が戦争で焼け野原になったので、こうし
た人たちが増えたのです。
 その日は大切な大切なお客様がたくさん来ると
いうことで用意していた食事しかありません。
 サフランは、魔法の呪文を思い出し、ガリガリ
にやせこけた人たちに、その料理を振舞いました。
 それを知った大富豪はカンカンに怒りましが、
その理由を聞きました。
 サフランは、魔法使いが「与えよ」といって、
魔法の呪文でサフラン畑を作ったという話をし、
それ以来、本当に困った人がいれば、すべてを
与えることにしていることを話しました。
 そして、今まで黙っていた、手首を失ういきさ
つを話したのです。
 それに驚いたのは、大富豪ですが、ガリガリに
やせこけた人も驚いていました。
「王様、王様、このお方は、あのとても優しいサ
フラン様だったのです」
 サフランは、驚きました。ガリガリにやせこけ
た人たちを、よく見れば、お城で見覚えのある人
ばかりだったのです。
 そして、ガリガリにやせこけた人たちの中か
ら、ガリガリにやせこけた国王が出てきました。
「ありがとう。そして、すまなかった。すまな
かった」
 ガリガリにやせこけた国王は、何度も何度も
頭を下げました。
 そして、ガリガリにやせこけた国王は、ずっと
大切にしていたサフランのめしべで造った香料を
サフランに差し出しました。
 それを見て目を丸くしたのは大富豪です。
「おお! おお! サフランよ、サフランよ。
 私は、お前にずっと秘密にしていたことがある。
 それは、昔、私はお前に良く似た高貴なお方か
ら首飾りを与えられたのだ。首飾りだけではない。
 その高貴なお方から、希望を与えられたのだ。
 そして、その首飾りを元に、こうして裕福な暮
らしができるまでにいたった。
 まさか、まさか、それがお前だったとは・・・
 そして、そのサフランの香料はどこかで見覚え
があるのだが・・・
 サフラン畑、お前の面影のある少女。その少女
の名は・・・サフラン。お前と同じ名だ」
 サフランは思わず涙します。
「貴方、その少女は私よ。そして、貴方の名は、
メディクス」
 大富豪は、サフランの言葉を聞いて、忘れ薬で奪
われた記憶を取り戻しました。
 そして、サフランとメディクスは抱きしめあいま
した。
 サフランは、与え続けることで、本当に欲し
かったものを手に入れたのです。


呟き尾形 2004/8/28 掲載

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