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花の童話

 

わすれな草

 勿忘草

 むかし、むかしあるところに白い時計搭のある村がありました。
 リムネーは、おてんばで歌好きでお喋りな娘です。
 いつも、村の真中にある白い時計搭でいろんなお話をしています。

「今日はわすれな草っていう小さな可憐な花のお話よ。
 なんでも、わすれな草を摘んで手にして、愛を誓った恋人たち
は、結ばれるというお話よ」

 昔、昔、神様が世界を作ったころのお話です。
 神様は、人間のために、楽園に無数の花を作り出し、最初の
人間にその名前をつけさせました。
 最初の人間は、楽園中を周って、花の名前を一つ一つつけて
いきました。
 名前をつけられた花達が喜んでいましたが、可憐なブルーの
小花だけががっかりしていました。
 ブルーの小花は、まだ最初の人間に名前をつけてもらえな
かったのです。
 勇気を出して最初の人間に声をかけました。
『私の名前はなんていうの?』
 声をかけられた最初の人間は、目を見開いてブルーの小花
を見つめます。
「こんな可愛い花を見落とすなんて!
 君のことを忘れないように、”わすれな草”という名前を
あげるよ」
 それからそのブルーの小花は”わすれな草”という名前に
なりました。

 そして月日は流れ、わすれな草は、その名前すらわすれら
てれしまいました。
 そんなある日、フォゲールとニザブートカという、とて
も仲の良い恋人同士が川岸にある青い小さな花を見つけまし
た。
「ねぇ、フォゲール、あの小さな青い花はなんという名前?」
「小さくてわからないね。
 図鑑でもみたことがないや」
「とても綺麗な花ね。
 フォゲール、あの花に私たちの愛を誓いましょ?」
「どうして?
 誰も名前を知らないような花に?」
「だれも知らない花だからよ。
 これから、ずっとお互いをわすれないように」
「よし、あの花をとって、あの花に名前をつけよう。
 二度とわすれないように、わすれな草なんてどうだい?」
「素敵。
 でも、川の流れは急よ。大丈夫?」
「大丈夫、大丈夫。
 川に落ちるわけも無いし、落ちたって、俺は泳ぎが得意
なんだから」
 そうして、フォゲールは、ブルーの小花をとろうと、手を
伸ばします。
 しかし、川の水が、フォゲールの足場を削り、不意に崩れ
てしまい、フォゲールは川に落ちて急流に流れてしまいまし
た。
 フォゲールは必死に泳ぎますが、急流がそれを邪魔します。
 フォゲールはニザブートカにいいところを見せたいばかり
に、川の急流を甘く見た自分の愚かさ悔いました。
「ニザブートカ、俺のことを忘れないでくれ!!!」
 フォゲールは、最後の力を振り絞り、向こう岸にいるニザ
ブートカにそう叫び、ニザブートカのほしがっていた小さな
青い花を、岸辺に投げました。
 そして、フォゲールは、力尽きて、急流に飲み込まれ沈ん
でしまいました。
「ああ、フォゲール、貴方の事をわすれるものですか。
 この”わすれな草”に誓って」
 するとどうでしょう、ニザブートカの手にある青い小花
が光だし、その光はフォーゲルの沈んだ水面に当たると、
フォーゲルが浮かび上がってきます。
『私の名前を思い出してくれてありがとう』
 わすれな草はそう言って、フォーゲルを岸まで上げると、
その岸にいっぱいにわすれな草が咲きわたります。
 それは、フォーゲルとニザブートを祝福するかのよう
でした。
 そして、二人はわすれな草の前で二人の愛を誓いました。

 それ以来、わすれな草を摘んで手にして、愛を誓った恋
人たちは、結ばれるという言い伝えができました。



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呟き尾形 2006/8/13 掲載

 

 

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