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白い時計搭のある村の物語発表会

山桜

 

 

 

 

 

 

 

 


★★★
 登場人物紹介
『呟き尾形』:メールマガジン発行者
クニークルス:奇妙な物言うウサギ。司会者のはず・・・。
「ムーシコス」:音楽の好きな少年。司会者だと思います。
※各台詞は、名前を囲んでいる括弧の人物の台詞です。


ボォン ジョルノ! こんにちわ。白い時計搭のある村の物語発表会の司会のクニークルスと
「こんにちわ。ムーシコスだよ。
 今回は、ヤーダさんという方から、初の投稿小説がありました(⌒θ⌒)v タイトルは”山桜” ちょっと怖い話だと思うな」
 じゃぁ、早速、ヤーダ作、山桜をはじめようか!
 イニーツィオ!!!

★★★

「 山桜」

吉野の山奥、古い朽ち果てた家の前に一本の枝垂れ桜が見事な花を
付け、重たげに枝を地面に向け咲いている。随分年を取っているらしい
立派な古木だ。
月光の明かりだけに浮かぶ桜は、幻想的で、少し恐ろしげでもある。

ここまで来る車の中で、口数の少なくなる二人であった。
深雪は、屈託の有りそうな木内に声を掛けるのさえ怖い雰囲気を感じていた。
《別れる気なのね!、別れるくらいなら貴方を殺して私も死ぬわ》
木内は、深雪に言えない秘密を抱えていた。会社の上司から逆玉の輿の縁談が持
ちこまれ、先日深雪に内緒のまま見合いをしてしまい、話はとんとん拍子に進み
、もう断れない所まで着てしまっていた。
二年も一緒に暮らし、新鮮味が薄れてきたというものの、深雪が嫌いになってし
まった訳ではない。しかし、一途過ぎる深雪の性格が疎ましくも、怖いとさえ思
うこともある。上司にはっきり彼女のいる事を話せない、かといって深雪ともう
まく別れ話に持っていけない自分の弱さに、腹が立っていた。
なぜか深雪は気が付いているように思われた。先日もそれとなく探りを入れるよ
うな話ぶりで『もし、子供が出来ていたらどうする?』などと聞かれ、言葉に詰
まってしまった自分に歯痒さをと同時に、彼女がいなくなってくれたらと理不尽
な事を考えている自分に、驚きつつも何故か心の何処かで納得している自分がい
る事に、恐怖心さえ覚えるのだった。

「ねぇ、桜の樹の下には人間の骨が埋められてるって,本当?」
あどけない調子を装って深雪が聞く。
「あぁ〜だから桜はこんなに綺麗なのだと言うね〜」
内心舌打ちしたい気分で、それでもさり気なく木内は答える。
木内の心の中は複雑だ。《殺すか?》と思い、《そんな事出切る訳ねぇよな〜》
気弱に打ち消す。

深雪は木内の心の内を見透かすように、彼の心の動きを解かってしまう自分に
、彼との距離が遠くなってしまっていることに、二重の寂しさを感じる。
深雪には愛し合った時間が遥か遠いものに感じられ、そしてとてもいとおしいも
のに思えてきた。
いっそう寂しさが募って、そんな自分が惨めでいやっだった。
桜を見上げながら、思えば家を出る時からなにか尋常でない事に対する覚悟のよ
うなものが付いていたような気もする。
《これって、消極的自殺ってやつかもね》ボンヤリとそんな事も考える。
深雪は、焦って落ちつかなく動き回る木内を目の端で捕らえながら、
「私、日の光の中で見る桜より夜桜の方が好きなの、得に人の居ないこんな山奥
にひっそりと咲いている桜が・・・」
《感づかれたか?》何時もとは違う彼女のトーンに、うっとりと桜を見上げてい

深雪を盗み見ながら、木内の背中を冷たい物が走る。
《どうする、どうにかしなければ・・・》
木内の心は焦る自分と、臆病な自分がせめぎあっている。情けないとも思う。
「ねぇ、今夜は此れからどうするの?」
彼の心を知りながらわざとゆっくり話し掛ける。
「私はこの花の下で夜明かししたって良いのよ。今夜は暖かだし
まさか凍死って事も無いでしょうから」
深雪は無防備を装ってやわらかなの霜草の上にゴロリと寝転び、
木内の顔を仰ぎ見ながら出方を待つ。
それはいらいらと歩き回る木内の耳に、嘲るようにも哀れむようにも聞こえる。
《チクショウ!》心の中で毒づきながら、さりげなく深雪から視線を逸らす。
「こんな所で夜更かしは良くないよ、そろそろ帰ろうか?」
と言ってみる。
「あら?『美しい枝垂れ桜を見ながら、夜通し二人っきりで過ごすのも
楽しいよ』っておしゃったのは貴方よ。」
「そうだけど〜ヤッパリ静か過ぎて気味がが悪いよ。」
《どうする? どうすれば良い?》今、切羽詰って、顔は引きつっているんだろ
うなと思う。
フェミニストの自分のそんな顔は考えただけで我慢がならない。
そこまで追い詰める深雪に、故も無く怒りを増幅させる木内なのだ。
何とかしなければ、ますます焦り、決断のつかない自分に腹が立ち、思わず
「好きにしろよ!」
と、大声を出してしまい《シマッタ!》と唇を噛む。
「まぁ、それも悪くは無いかもナ」
と、優しげに話し掛けながら深雪の傍に腰を下ろし、、ポケットから煙草を取り
出して、
美味そうに火をつけて一服してみせる。
《魔化しきれるか?》不安がのどを締め付けて、煙草の味すら覚束ない。

気まずくなり話し声の聞こえなくなった闇の中にさらさらと桜の枝が風になる
音だけがして、
それがかえって辺りの静けさを意識させる。
あまりの静かさに深雪は思わずブルっと身を振るわせた。
何気なく振り向いて木内の顔を見て、
深雪の身体が勝手にビックと反応し、霜草の冷たさに心が凍る。

枝垂れ桜は今日も桃色の花びらを朝日に輝やかせ、春の風にゆったりと
枝を揺らしている。

そう、桜の樹は人の骨を栄養に毎年色艶良く咲き誇る物なのだ。



★★★

「桜って本当に人の骨を栄養にしてるの?」
 (ー_☆)キラリン
 それは人の骨にはたくさん栄養が詰まっているからね〇o。.(-。-)y-~~~
「じゃ、じゃぁ\(●o○;)ノ」
『んなわけないでしょ。だいたい、科学的には立証されていないよ。
 それよりも、ムーシコス、クニークルス。読んだ感想は?』
「ん〜、桜が怖いくらい綺麗だッてことは伝わってきたけど、木内さんと
深雪さんの気持ちってよく理解できなかったなぁ」
 そこが男女の恋愛の奥深いところさムーシコス君。
 可愛さ余って憎さ100倍凸(●―●メ
 っていうのは、おかしくないんだよ。
「だからさ、木内さんも深雪さんもお互い好き同士だったんでしょ?
 ホントにそうだったの? って思うんだけど」
『たしかに、そういったところはあるけれど、それは山桜の美しさで描写
されているんじゃないかな。
 桜の花とかけて恋と解く』
 してその心は?
『桜も恋も綺麗に咲き、そして、あっという間に散る』
「お後がよろしいようでm(__)m

 

 

 

 

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