村の広場へ戻ろう いや、ホームかな?

白い時計搭のある村の物語発表会

花火

 

 

 

 

 

 

 

 


★★★
 登場人物紹介
『呟き尾形』:メールマガジン発行者
クニークルス:奇妙な物言うウサギ。司会者のはず・・・。
「ムーシコス」:音楽の好きな少年。司会者だと思います。
※各台詞は、名前を囲んでいる括弧の人物の台詞です。


ボォン ジョルノ! こんにちわ。白い時計搭のある村の物語発表会の司会のクニークルスと
「こんにちわ。ムーシコスだよ。最初にクニークルスからのお詫びです。」
 前回はヤーダさんの小説のタイトルを間違って紹介したこと、ごめんなさい。
『このように、クニークルスも反省しております。発行者であるσ(^0^) 
呟き尾形からもお詫び申し上げます』
 というわけで、早速、ヤーダ作、「花火」をはじめようか!
 イニーツィオ!!!
『だめだこりゃ(-_-;)』

★★★

花火

ババッバ、ドーン、ドドーンパチパチパチ・・・・

うつむいて、暗がりを幸いに泣きながら歩いていた友香は、あまりの音の
大きさに、思わず飛び上がるほど驚いた。
わーとあちこちから歓声と拍手が沸きあがっている。
《あぁ、花火が始まったのだ》
夜空一面に広がる花火。連発で上がる花火に、辺りは夕焼けほどの明かるさ
になり、思わず手で涙を拭う。
後ろを振り向いてみたが、やはり謙二は追っては来ていない。
友香は心の痛むまま、たった今の、謙二との諍いを思い出す。

今日はデートの約束をしていた訳ではなかった。何か用事があるというの
で、それじゃ、私も行くのよそうかな、なんて言ってはみたものの 、家にい
るのも詰まらなく1人で出掛けてきたのだ。
花火の始まるのを待ってブラブラと土手道を歩いていて、偶然謙二の後姿を
見つけ《な〜ぁだ、やっぱり来てくれたのね》と嬉しくなって、ほんの冗談
のつもりで、
「何方かと、お待ち合わせでしょうか?」
と、後ろから声を掛けただけなのだ。
「ビックリするじゃないか!!どうしたんだよ、今日は家に居るって言って
たじゃないか?」
友香と認めた謙二の怒りように、つい、
「あら、悪かったわね、オジャマさま!!」と、何時もの甘えた気分ですね
てみただけなのに、今日の彼は少し異常なくらい怒っていて、傍を離れる友
香を、なぜか止め様ともしてくれなかった。

《あんなに怒らなくても!》友香には訳が解らず、また涙が溢れる。
何時もの彼なら直ぐに後を追ってきてくれるのに。
《どうしょうか?》このまま帰る気にも成れず、流れる涙を拭いながら友香
は思案にくれた。
帰るもならず、かといって戻るのも癪に障る。

そんな間にも、花火は夜空に美しく花を競い合っている。

泣いて、化粧も落ち、醜くなってしまったであろう自分の顔を謙二に見ら
れたくは無い。でもこのまま帰ってしまうのも心が残る。
友香は、今来た道をのろのろと戻り始めた。
わーあと一際大きな歓声が上がり、夜空の高みからなだれをうつように、光
の束が大きな川のように落ちてくる。

一瞬、友香の足が止まった。
花火で明るくなった土手の上に、笑顔の謙二の顔が見えたのだ。
「ヤッパリ待っててくれたんだ。」
さっきまで萎んでいた知花の心が、花火の風船が入りこんだみたいに、一気
に明るく膨らみ、笑顔がこぼれそうになった。
「けんじぃー」と、声をかけようとして、思わずたたらを踏んで立ち止まっ
た。声は、喉のおくで詰まって出口を探している。
謙二の笑顔の先に、花火の光で輝く美しい女性の笑顔があった。
大人びた仕草で前髪を無造作にかきあげながら、なにごとか謙二の耳元に話
しかけ、いっそう弾けるような笑顔を見せている。
《誰?何あの女? なんなの謙二!?》
知花の足は、じりじりと光の届かない所まで後ずさりしていく。
今度こそ友香は人にぶつかるのもかまわずに走りつづけた。
「知らなかった、知らなかった……」ブツブツとお経のように呟きながら、
少しでも遠く、今見たものから遠ざかろうと走りつづけて、何時の間にか人
ごみの一番前に飛び出してしまっていた。
どーん、どどーん、
一際大きな花火が漆黒の空に大輪の花を咲かせた。
一瞬後、回りは闇に戻る。
呆けたように暗い夜空を見上げながら、友香の頭の中には今見た光景がはな
れない。
さっきの花火が最後の合図だったらしく人々がぞろぞろと帰り出す。
一番前に飛び出していた知花は 、帰る人々に背を向けたまま、まだ呟き続け
ている。「知らなかった! 知らなかった……」
上がるはずの無い花火を待つかのように、誰もいなくなった会場に立ちすく
み、夜空を見上げながら、切なく思う。
「もう一回だけ、もう一回だけ花火が上がってくれたら……」
そうしたら、もう2度と戻らないであろう18歳の友香と、謙二との初恋を、
花火と一緒に夜空に散らしてやる事が出来るとでもいうように・ ・ ・ 。

おわり


★★★

「友香ちゃん。かわいそうだったね」
 チッチッチ、わかってないねぇ。ムーシコス君。
 男と女の関係は、一言では言い表せないくらい複雑怪奇なんだよ。
「ふーん、クニークルスってば物知り何だねぇ」
 ・・・それはさておき、タイトルにもなっている、花火。綺麗だったよね。
「そうだね。花火なんて生まれてはじめてみたからビックリしちゃった」
 ははは、そうか。ムーシコス君は白い時計搭のある村からあまり外に出たことが無いんだったよね。
 花火の美しさとシニョーラ友香の謙二への気持ちって南下にている幹事しなかった?
「う〜ん、言われてみればそんな感じがしないでもないなぁ。でも、花火が消えた後の寂しさは友香ちゃんの気持ちとはあんまりだ分ないような気ははするけど」
 まぁ、ムーシコス君には早すぎたかな。初恋は花火のように美しくはかない。そんな印象までは進まなかったみたいだね。
「ふ〜ん。クニークルスはそんな感想なんだ。僕はなんだか謙二がゆるせないなぁ」
 まぁ、それは男のサガってことで許してあげましょう。もっとも、二股かけるような奴にいい未来なんて無いけどね。それが自然の摂理。
 シニョーラ友香もさっさと縁が切れてよかったと思うしね。
「なるほど。そう考えれば、なんとなく納得するね」

 

 

 

 

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