むかし、むかしあるところに白い時計搭のある村が
ありました。
リムネーは、おてんばで歌好きでお喋りな娘です。
いつも、村の真中にある白い時計搭でいろ
んなお話をしています。
今日は、とても強い英雄、フィアールカのお話。
フィアールカはもともと強かったのではありません。
むしろ、小さいころは、争いの嫌いで夢想癖のある
やさしい子供でした。
実際、フィアールカは、毎日大好きなスミレの花が
いっぱいに咲く野原に通っていました。
ある日、フィアールカは、沢山あるスミレの中で、
一つだけのスミレだけを好きになりました。
スミレの花もフィアールカの気持ちに応えるように
風に揺られます。
フィアールカは、きっと、スミレもそれに応えて
くれたのだとおもって、一生懸命スミレに語りかけ
ました。
その度に風が吹き、スミレの花が風に揺られます。
フィアールカとスミレの間には言葉はありません
でしたが、不思議とお互いの気持ちが伝わりあいま
す。
でも、フィアールカは男の子です。
男の子が野原の花が好きというのでは、格好がつ
きませんし、周りの男の子からからかわれます。
そうでなくとも、フィアールカは、まわりの男の
子より背が低くくてからかわれます。
フィアールカは、自分をからかう男の子とケンカ
するのですが、負けてしまいます。
フィアールカは、そのたびにすみれに涙のしずく
をおとし、すみれがフィアールカの涙をぬぐいまし
た。
フィアールカは学校の勉強ができるわけでもあり
ませんでしたが、雪合戦が得意でした。
一度雪合戦がはじまると、フィアールカは、リー
ダーシップを発揮して、相手を倒していきます。
このとき、フィアールカはだれにもいいませんで
したが、雪の下にひっそり冬越えをしているすみれ
の声が聞こえていたのです。
それ以来、フィアールカは、学校の成績は悪かっ
たものの、ずばぬけた行動力とリーダーシップを発
揮して、軍人になりました。
フィアールカは、腕力がつよいわけでもありませ
んでしたが、知恵と勇気をもった行動ができました。
周りの軍人はフィアールカの知恵と勇気をとても
評価しました。
知恵は、フィアールカのものでしたが、勇気はフィ
アールカのものではありませんでした。
フィアールカが勇気を持った行動が出来たのは、
すみれの声が聞こえたときだったのです。
すみれの声が聞こえないときのフィアールカほど、
臆病な軍人はいなかったでしょう。
すみれの声が聞こえないとき、フィアールカはな
るべく人目の着かないところにいるようにして、周
りの視線と声ばかり気にする小心者になってしまう
のです。
そこで、フィアールカは、できるだけ、すみれが
目に付くようにいろいろ考えました。
自分の部屋にはすみれでいっぱいに満たし、いつ
か、自分がよく通る道端には、すみれを植えるよの
が夢の一つだと公言していました。
そのため、フィアールカのすみれ好きはたちまち
有名になりました。
フィアールカが手柄を立てて凱旋すれば、町中の
人が両手いっぱいのちいさなすみれをフィアールカ
に向けてすみれ花の花吹雪を降らせてフィアールカ
の勝利を祝いました。
そうして、フィアールカは、すみれの声を大事に
し、すみれの言葉を信じて勇気をもって、どんどん
行動しました。
そのたびに、どんどん手柄をたてて、どんどん出
世していきました。
フィアールカは、どんどん手柄をたてて、出世を
して、司令官になると、部下や周りの人たちから、
司令官がすみれが好きなのは似合わないと陰口を叩
かれるようになりました。
それでも、フィアールカは気にしませんでした。
すみれが好きなのは本当だし、それをどう考える
かは人それぞれだとおもっていたからです。
ある日、フィアールカは、ある貴族の娘に恋をし
ました。
フィアールカは、その貴族の娘に、フィアールカ
が好きなすみれの花をプレゼントしたのですが、貴
族の娘に笑われてしまいました。
そして、貴族の娘は、司令官なら百本のバラの花
束ぐらいでなければ、司令官の気持ちが本当かどう
かなんてわからないとまで言ったのです。
落ち込むフィアールカにすみれは、人の気持ちは、
物では表せないと必死にフィアールカに伝えたので
すが、フィアールカはすでに貴族の娘に夢中で、も
う、か細いすみれの声なんてきこえません。
フィアールカは、貴族の娘を思う気持ちは、千本
でもたりないと、一万本のバラを貴族の娘の部屋に
敷き詰めたのです。
そして、フィアールカは、貴族の娘の言うものは
すべて、手に入れ、貴族の娘に贈ったのです。
そのたびに貴族の娘は、大変喜び、フィアールカ
はその姿に満足しました。
しかし、貴族の娘は、フィアールカのお金と権力
に恋をしていたのです。
フィアールカは、そうとも気がつかないまま、二
人は結婚したのでした。
貴族の娘が、フィアールカの妻になったとたん、
妻は威張り始めました。
妻は、フィアールカに理不尽な我儘を言い始めた
のです。
その理不尽さは日に日にエスカレートしていきま
す。
それでもフィアールカは、妻の我儘を聞くのです
が、妻はもう、フィアールカに喜ぶ姿を見せてはく
れなくなったのです。
さみしくなった、フィアールカは、道端のスミレ
を見て、スミレの声が聞こえるか試してみました。
でも、聞こえるのは、道の雑踏だけです。
フィアールカの気持ちは夜よりも暗くなりました。
フィアールカがすみれの声が聞こえなくなったと
わかった日から、いままで順風満帆だったフィアー
ルカの人生が、七転八倒になりました。
昔からの友人は、フィアールカの妻の我がままの
言うなりになるフィアールカに愛想をつかしました。
次に、フィアールカは、すみれの声が聞こえなく
なってからと言うもの、フィアールカの判断が裏目
裏目にでてしまいました。
身近な部下たちも、フィアールカの言葉が信じら
れなくなりました。
部下がフィアールカの言葉を信じられなくなると、
部下は言うことがきかなくなります。
部下がフィアールカの言うことを聞かなければ、
仕事が上手くいくはずもありません。
仕事が上手くいかないフィアールカに、貴族たち
はだんだんフィアールカに近寄らなくなって着まし
た。
それでも、フィアールカは、軍人として全力を尽
くしました。
でも、全力をつくしても、すでに部下が言うこと
を聞かないし、貴族は、フィアールカの頼みを聞い
てくれません。
「こんなに、凄い計画でも、無能な部下と愚かな貴
族ばかりではどうしようもない。
どんなに優秀な能力を持ったものでも、その能力
を発揮する機会がないのでは意味が無い」
「フィアールカ、フィアールカ」
フィアールカは、耳を疑いました。
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呟き尾形 2013/12/15 掲載
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