フィアールカ聞こえなくなっていたス
ミレの声が聞こえたような気がしたので
す。
「すみれの声なのか?
「やっと、聞こえるようになったのね。
ずっと、話しかけていたのよ。
あなたが結婚してからもずっと」
「そうだったのか。
それなのに、私は君の声を聞こうとしなかったの
か・・・」
フィアールカは、酷く落ち込みました。
「でも、大丈夫、今は聞こえるでしょ」
「ああ、そうだ。
思えば、私の周りの部下は私の言うことをきけな
いし、まわりの貴族は私のじゃまばかり」
「フィアールカ、それは、本当に部下と貴族のせい
なの?」
「え?」
「ずっと、同じことを聞いていたのよ。
部下があなたの言うことを聞かないのは、あなた
がお手本を示さなかったから。
貴族はあなたの邪魔をしたのではなくて、貴族の
忠告を無視し続けたからじゃない?」
フィアールカは、すみれの言葉にぎょっとしまし
た。
そう、すみれの言うとおりだったからです。
フィアールカが、うまくいっていたころは、自分
が部下に手本を見せて、仲間の忠告には常に耳を傾
けていたのです。
それに気がついた時、フィアールカはこれまでの
自分を改めようと決心したのでした。
すると、部下だったはずの兵士がフィアールカに
槍を向け、兵士の後ろには、貴族たちがフィアール
カをにらみつけていました。
「この独裁者をひっとらえよ!」
「すまなかった、これから悔い改める。
これまでの無礼、許してくれ」
フィアールカの素直な気持ちを口にしましたが、
貴族や兵士たちは、許そうとはしません。
フィアールカの言葉は、怖気づいて命乞いをし
ているように聞こえたからです。
「ふん、この期に及んで、命乞いか。
まぁ、いままで偉そうにしていたやつが、我ら
にこびるのは悪い気はしないな。
二度と悪さができないように、島流しにしてや
れ!」
「しかたがない。
それが罪滅ぼしになるのなら・・・。
だが、すみれたちよ。
私はすみれが咲く限り、本国に帰ることを諦め
ないぞ」
フィアールカは、そんな言葉をのそして、貴族
の言葉通り、島流しになりました。
フィアールカが島流しにされた島にはたくさん
のスミレが咲いていました。
悔い改めたフィアールカは島流しになっても、
自暴自棄になることはありませんでした。
島流しの先でフィアールカは、もちまえのリー
ダーシップを発揮して、島の人たちをまとめたの
です。
季節が1周し、再びすみれが咲き誇るころ、フィ
アールカは、貴族たちが横暴な政治で、国民に重税
をかけていることを耳にしました。
そして、本国の人が、一人、また一人とフィアー
ルカに、貴族たちを懲らしめてくれと頼むために、
島までやってくるようになったのです。
フィアールカは正直、迷ってしまいました。
「あなたは、私に、私が咲く限り、本国に帰るこ
とを諦めないって言ったはずよ」
「そうだ。
すみれの花がさくころ、また戻ると誓ったんだ」
フィアールカはすみれのことばに迷いは断ち切
られ、フィアールカに従う新しい島の部下ととも
にフィアールカの故郷に戻るのでした。
その後、フィアールカは、凱旋とともに、横暴
な貴族たちを追い出し、凱旋した時に通った道端
にすみれを植え、フィアールカは、ずっとすみれ
の言葉に耳をかたむけるのでした。
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呟き尾形 2014/3/8 掲載
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