ホーム > 目次 > エッセイ > 呟き尾形的孫子の兵法 

呟き尾形的孫子の兵法
 第4回 以逸待労

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第四計 以逸待労「逸を以って労を待つ(いつをもって、ろうをまつ)」

 古代中国の戦国時代にて。魏の国が精鋭部隊を率いて、韓の国を攻めたそうです。
 韓の国は、斉の国に助けを求め、斉の国は、応じて、再びもって、囲魏救趙ならぬ、囲魏救韓を行おうとしました。
 が、魏の国は、その手は食わぬと、すぐさま軍を引き返し、斉の軍の背後に回りました。
 困ったのは、魏を囲もうとした、斉の軍です。
 魏の兵士は、精鋭の兵ばかりで、士気も高く、まともに戦ってしまっては斉の軍に勝ち目はありません。
 しかし、それがゆえに、魏の兵士は、斉の軍を見くびっています。
 そこで、斉の軍は、ある一計を講じました。
 まず、宿営地を決めて、1日目に、ご飯を炊くカマドを10万にし、次の日は、5万、その次の日は3万と徐々に減らしていきます。
 それをみた魏の将軍は、「見よ! 斉の兵士は腰抜けだ! 3日もたたずに兵が半分以上逃げ出しおった」
 といって、そのまま、勝機とみて、歩兵を残し、騎馬兵で斉の宿営地を攻め立てます。
 しかし、一計をこうじていた斉の軍は、待ち伏せしています。
 魏の騎兵は、待ち伏せにあい、またもや魏は斉に敗北してしまいました。

 人は、ついつ、先手、先手を取りたがります。
 たしかに、先手必勝とあるように、先手を取る事は、有利にことを進めることができます。
 が、しかし、それは、先走って、むやみに先走ることとは似てて異なることです。
 「孫子」の兵法の中には「敵より先に戦場におもむいて相手を迎え撃てば、余裕を持って戦うことが出来る。逆に敵より送れて戦場に到着すれば、苦しい戦いを強いられる。
 とあります。
 一般に相手より先に準備を整えるためには、とにかく、通常よりもすばやく、迅速に動くことに注意がいきます。
 しかし、実は、準備を整える場所を、自分自身に有利な場所に決めて待つ。
 ということこそ、以逸待労の真髄です。
 そうすれば、通常より、すばやく、迅速に動くことはなくなります。
 通常通りのマイペースで、待ち時間で準備を済ませることができます。
 さらに、計画的に待つということは、余裕を持たせることが出来るということです。
 余裕を持つことができれば、着実で的確な準備が可能になります。

 さて、戦場とか場所というと、待ち合わせ場所ぐらいでしか思い当たらない現代人にとっては、ちょっとわかりづらいとおもいます。
 現代においては場所というよりも、時間に相当します。
 ときおり、スケジュールをクライアント(お客様)から言われたとおり、最後(納期)から逆算して立てる頭が良いとは言いがたい上司がいます。
 すると、合理的な部下からすると、「アホ! きちんと部下のこなせる作業量と工数の妥当性考えてスケジュールたてろや!」と心の中で叫ばれるの請け合いです。
 これは、言われたとおりの納期ではなく、きちんと、理由をもった工数を根拠に納期と作業計画を主体的にたてる(自分で戦場を決める)ことが、最良の仕事だということです。
 納期がどうしようもないなら、クライアントから金をせびるべきですが、頭がよいとは言いがたい上司はそういうことをしません。
 その結果、余計な作業をした挙句、その分のお金はもらえず、赤字。
 つまり、敗北です。

 と、上述したとおり、ここで言う「待つ」というのは、ただ漫然と時間をつぶしているという意味ではありません。用意周到に、抜かりなく打つ手は打つ。そして、いつ来てもいいように鋭気を養い、力を蓄え守りを固めて、チャンスを待つ。ということです。

 つまり、重要なのは「その後の先手」をとることです。

 ところで、以逸待労は、相手を攻撃する事を前提としていますが、実は攻撃しなければ、争いを回避する方法論にもなりかわります。
 万全の守りや準備を備えていることをアピールすることで、相手の戦意をそぐ。
 ということです。
 いわゆる、抑止力というものです。
 抑止力というと、軍事的な意味合いを連想しますが、逆に相手にとってなんらかのメリットになる、相手に攻撃することが、なんらメリットにならない。という状況を作り出すことによる抑止力だってありえるわけです。
 たとえば、非暴力を徹底すると、無防備の人間を攻撃すること自体が、攻撃する側の立場を悪くし、攻撃する側に不利になります。
 あるいは、博愛を徹底すると、すべてを愛する人間を攻撃すること自体が、攻撃する側の立場を悪くし、攻撃する側に不利になるというわけです。
 なにも、守るといっても、武にこだわる必要はありません。
 理による守りというものもあることを忘れてはいけません。

 

質問、感想などは、呟き尾形的孫子の兵法掲示板などに書き込みしていただければ、モチベーションもあがります(笑)

 

タイトルへ戻る