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呟き尾形的孫子の兵法
 第9回 隔岸観火

 

 

 

 

 

 

 

 

 

孫子の兵法 9 隔岸観火

第九計 隔岸観火「岸を隔てて火を観る(きしをへだてて、ひをみる)」

 三国志の時代のお話です。
 「官渡の戦い」という戦で、曹操は袁紹を打ち破り、北中国一帯を支配下に置きました。
 その戦いで、袁紹は命をおとしましたが、袁紹の子の袁尚、袁煕らは北方の異民族烏丸のもとに逃れました。
 そこで曹操は、烏丸討伐に乗り出し、これを撃破。
 敗れた袁尚、袁煕らは遼東の公孫康を頼って落ち延びていきました。
 公孫康は以前から、曹操に服属することを拒んでおり、曹操を共通の敵として手を組もうとしたのです。
 再び、曹操が袁尚、袁煕らの逃れたことを口実に公孫康を攻めると思われましたが、曹操は公孫康を攻めたら、袁尚と手を組んでしまうだろうと考え、逆に兵を引いてしまったのです。
 すると、元々袁尚を恐れていた公孫康は、袁尚曹操の元へ送り届けたのです。

 隔岸観火のポイントは、相手の内紛から自滅を待って、高見の見物をすることです。
 実際、相手に内紛がある時は、不用意にに手を出すと、予想外の火傷をします。
 これは、別に戦争に限った事ではありません。
 夫婦喧嘩や、他人の家族の事情に他人が口を挟めば、大抵、やけどをします。

 対岸の火事は、見物しておくに限る。というわけです。

 隔岸観火は、趁火打劫の逆といえるでしょう。
 どちらが、良策であるかは、状況によって変わってきますので、相手の弱みに付け込んで、漁夫の利をを得るか、高みの見物をするか、冷静に状況を観察し、その結果を分析しつつ、リスクを考慮して、選択すべき策といえるでしょう。
 
 最近では、日本や中国において、自国の国民へのパフォーマンスとして、この計が使われています。
 対立する国内世論を統一にしむけたり、或いは関心を他に逸らす為、強力且つ悪逆な、敵対する他国を作るのです。
 日本は、北朝鮮の悪逆振りをアピールしたり、韓国の竹島問題、中国においては、潜水艦やら海底資源の問題を、解決するそぶりばかり見せて、実質的な解決に手を出さないなどです。
 中国にいたっては、靖国問題において、日本をさかんに批判しますが、批判のみだったり、記憶に新しいかもしれませんが、反日デモにおいても、デモを放置するなどの処置をしています(ちなみに、日本も隔岸観火をつかっていたとおもわれ、面白いくらい日本の世論は、反中国に傾いていたと感じます)。
 つまり、「手を出さない」ということが、一つの効果を産むというのが、この隔岸観火の特徴といえるでしょう。
 ただ、自国の場合は、それをコントロールを失敗すれば、何もしないという無責任というレッテルを自ら貼り付け、面子丸つぶれになります。
 自国へのパフォーマンスとしての隔岸観火は賢明とはいえませんし、自国民に対して不誠実な策だといえます。
 つまり、隔岸観火こそ、反発世論を生み出し、高みの見物のつもりが、自分の家を放火するという愚かしい結果になります。
 つまり、自国へのパフォーマンスとして、隔岸観火を使うのは、むしろ愚策だといえるでしょう。
 なぜなら、本来果たすべき責任を、果たさないということが、マイナスだからです。

 となれば、果たすべき責任が特にない。
 という場合に、隔岸観火が有効だといえますし、家族の問題にしろ、組織の問題にしろ、外部の人間が、むやみに口出しするのは無責任な行為とも言えるわけです。
 ともあれ、ついつい口出ししたくなるのが人の常ですが、隔岸観火は、新たなややこしい争いを生まなくする、それを抑制する策である。
 ともいえます。

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