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呟き尾形的孫子の兵法
 第12回 順手牽羊

 

 

 

 

 

 

 

 

 

孫子の兵法 12 順手牽羊

第十二計 順手牽羊「手に順いて羊を牽く(てにしたがいて、ひつじをひく)」

 昔の話です。
 羊飼いが羊を率いて、狭い道を進んでいたそうです。
 そこに縄を持った旅人が通り過ぎました。
 旅人は、羊の群れに一瞬紛れ込み、隙を見て、なにげなく羊を紐にくくりつけ、羊の群れから出たときには、旅人の手に1匹の羊を牽いていました。
 もちろん、旅人が羊を盗んだのは明らかでしたが、旅人が、あまりに堂々としていたので、羊飼いは全く気がつかなかったそうです。


 「順手牽羊」とは、元々、その場にあるものを手当たり次第に失敬するという意味です。 戦略戦術の上から言えば、敵の隙につけこんで、がめつく、小さな戦果を積み重ねる策略ということができます。
 つまり、小さな敵の不手際から小さな勝利を手に入れることで、こちらの少しの利益を獲得し、敵に少しの損害を与えるられるということです。
 小さな利益とはいって馬鹿にしてはいけません。
 敵の隙をついて、利益を得て、敵に損害を与えるというのは、目に見える利害のわりには、味方には士気をあげさせ、敵には重圧をかける事になるのです。
 特に、隙をつかれた敵は、また隙を作れば攻撃されることを警戒するので、心を休める暇もなくプレッシャーを与えるため、精神的にも優位に立てます。
 そして、やがて集中力は切れ、隙が生まれるということです。
 味方にとっては良循環、敵にとっては悪循環を作り出せる策略だといえるでしょう。
 しかしながら、戦略上でこれが成り立つには、以下に示す幾らかの条件があります。
 1・遂行する目的を忘れず常に自覚していること
 2・容易に手に入る利益が目の前に転がっていること
 3・利益に手を出しても、本来の目的達成の支障を生じないこと
 という3点の条件が必要です。

 1・遂行する目的を忘れず常に自覚していること
 これは、利益に釣られて本来の戦略目的を見失うようでは『李代桃僵の計』の餌食になっては本末店頭だということです。

 2・容易に手に入る利益が目の前に転がっていること
 少しの利益は少しの利益にすぎません。
 手軽に少しの利益を得て、敵に少しの損害を与えることで効果的になる策略だということを忘れてはいけません。
 被害や労力が大きくては本末転倒です。

3・利益に手を出しても、本来の目的達成の支障を生じないこと
 あくまで”行き掛けの駄賃”としての行動であることを忘れてはなりません。
 所詮ついでなのですから、少ない労力でなければ本来の目的を達成に支障をきたすのでは本末転倒というものです。

 上記のような条件が満たされている場合に限って、つけこめるときにはどんな小さなことにでもつけこみ、利益を獲得しようとする飽くなき態度が勝利に必要な要素だといえるでしょう。

 しかしながら、上記のような条件とはそんなに簡単に満たされるのだろうか?
 という疑問があるかと思います。
 これが、案外転がっているものです。

 たとえば、大軍が移動する時は、必ず隙ができるものなのです。
 なにぶん、数と規模が大きすぎて、目が届かない盲点が非常に多いのです。
 とくに、仕事や責任分担が明確に決まっていれば、かならず隙間ができます。
 順手牽羊は大軍の僅かな隙を衝き、少しの勝利を手に入れる計略だといえます。
 順手牽羊は、上記の条件さえ満たせば有効な計略です。
 勝負において、勝っていたとしても、負けていたとしても使える計略だといえるでしょう。

さてさて、順手牽羊は現代において、どんな利用方法があるのでしょうか?

 たとえば、大企業の大きなシェアを握られている分野の中に中小企業や零細企業が入り込む場合などを考えたとき、大きな勝利など得られるはずもありませんが、大企業が補えない隙間というものが必ず生じます。
 中小企業や零細企業は、規模の小ささを活かして、その隙間に対応するという活用法があります。
 もちろん、そこから小さな利益しか得られないにしても、利益は利益です。
 馬鹿にせず、ちりも積もれば山となるという精神でコツコツと習慣化していけば、苦にもならずに、順手牽羊を活用できます。

 また、個人レベルでは小銭貯金というものがあります。
 財布にはお札のみ残し、家を出て、帰ってきたときに小銭をすべて貯金箱にいれます。
 そして、また、財布をお札だけにしていくという方法です。
 たいていの人は、お金が足りないと嘆くはずです。
 だからこそ、節約を意識し、結果的に大きな貯金も得られるわけです。




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