孫子の兵法 15 調虎離山
孫子の兵法 15
第十五計 調虎離山「虎を調って山を離れしむ(とらをあしらって、やまをはなれしむ)」
背水の陣というものがあります。
これは、漢の韓信が、川を背に陣立てし、味方に必死の覚悟を固
めさせて、趙の軍勢を破ったという故事からきています。
それが現代では、一歩もあとにはひけないせっぱ詰まった状況や
立場。また、そういう状況に身を置いて、必死の覚悟で事にあたる
ことの意味を持つようになりました。
しかし、乾信の背水の陣は、味方に死力を引き出しただけでは
ありませんでした。
なぜなら、漢軍一万に対して、趙軍二十万です。
必死に戦っても知れているというものです。
名将、韓信は一計を案じました。
まず、韓信は河を背にして布陣しました。
その布陣を引く前に、二千の軽騎兵を別働隊として編成しました。
別働隊は、趙軍の砦を見下ろせる山陰に息を潜めることにしました。
背水に布陣した漢軍を見て、兵法の定石を知らない将軍に率いられた軍恐るるに足らずとばかり、一斉に砦を出て応戦してきたのです。
その隙に山陰に潜んでいた部隊が砦を占拠し漢軍の旗を立てました。
動揺したのは、趙軍です。
この動揺につけこんで、韓信の軍が前後から挟撃したため、趙軍は総崩れとなりました。
これは、韓信の「調虎離山」の計で相手をおびき出したことによる勝利だったといえるでしょう。
「調虎離山」の計は、虎が有利な土地で戦うことは、虎に有利になります。
そこで、まずやるべきは、虎を棲みかである山からおびき出し、自分に有利な場所で戦うというたとえです。
ここから、敵を要害からおびき出して攻撃することに通じています。
敵が有利な地形を占めていて味方から手を出せないような時は、無闇に手を出すのは、賢明とはいえません。
ですから、敵の有利な条件を取り払うことがポイントです。
敵の有利な条件ではないところに誘き出して戦うということが、「調虎離山」の計の目的といえるでしょう。
一般に城攻めを行う場合の前提は敵の十倍の兵力が必要だと言われます。
しかも、正攻法の城攻めは、味方の損害が大きいので、「城攻めは下策である」と『孫子』にも書かれています。
これは、堅固なところを攻めれば、自ら敗北しにいくようなものです。
ですから、敵が状況的に有利な条件を占めているのに無理矢理攻めるのは愚かな行為だといえるでしょう。
敵がすでに地の利を得ていれば、その地を争ってはいけないということです。
逆を言えば、相手が有利な条件さえ取り払えば、相手は、有利な条件を失い、自分は、不利な条件が無くなったことから、対等どころか、精神的な優位にたてるわけです。
つまり、有利の裏には、必ず不利があるということです。
さて、このような調虎離山を現代ではどのように利用すればいいのでしょう?
これは、ズバリ「ニッチ」を埋めるです。
ニッチとは、隙間の事を指します。
これは、ニッチという、西洋建築で、壁面を半円または方形にくぼめた部分。が転じて、隙間のことをいうようになりました。
「ニッチ」を埋めるということは、つまり、隙間を埋めるということです。
ここで言う隙間とは、他者があまり進出していず隙間となっている分野・市場のことです。
つまり、既に、他者が有利になっていることにわざわざ手を出すのは、虎が有利な土地で戦うことと同意です。
だからこそ、他者があまり進出していず隙間となっている分野・市場で優位な立場に立とうとすれば、まさに、調虎離山であるということがいえるわけです。
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