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テーマ「料理」


 太陽が空のてっぺんから、おきろと叫んでる。
 この夏の日差しがその絶叫。

 昼の正午が少しだけ過ぎた時間。

 時計の長針と短針は6時前を指差し、秒針も含めて止まっている。
 窓が一つだけのワンルームマンションの真中に、布団に横たわる男が一人。
「は、はらへった」
 そう、彼はとてつもなく空腹なのである。男はナマケモノのように、這いな
がら冷蔵庫をあける。
 冷蔵庫の中の白がまぶしいが、カラッポ。というわけでない。賞味期限ぎり
ぎりのタマゴと半分ぐらいのこった塩コショウ。そして粉チーズだけだった。
 男はガックリ肩を落としたが、ふと何かを思い出したかのように隣の戸棚に
目を向けた。大分前に作った「パパー」と書かれたパスタが残っている。
「こ、これだ!」
 男は別人のようにテキパキ動き始めた。
 水道の蛇口をひねり、手を当てた。夏の水道の水は最初はぬるい。
 水が少しだけひんやりするとパスタを作るには小さいのナベを取り出し、蛇
口から出る滝の下に置く。
 何をかくそう、このナベこそ、男の所有する唯一のナベである。
 ナベはすぐに満タンになると、男は、水をとめた。
 溢れるナベの水を少しだけ捨てると、コンロに青い火をともし、塩コショウ
を入れる。
 男はその流れで、小皿を出して、タマゴを割ってその小皿に入れた。
 男はそのまま粉チーズをタマゴが固まる程度に振りまくと塩コショウを少々
いれて小皿のタマゴコナチーズをかき混ぜる。
「ショシャ、カルボナーラソース、いっちょあがり!」
 男が言い終えると、グツグツとナベが言い始める。
 男はパスタの束を取ると両端を持って、ムンと力を入れる。当然、パスタの
束は真っ二つ。
 再び、男はニヤリとすると折れたパスタをナベに入れ、パスタの輪を作る。
 ゆでること10分、男はナベから1本パスタを取り出し、もぐもぐ食べる。
「ん、チョイ、かたいな。まぁ、セに腹はかえられぬ」
 男は100円ショップで買ったザルを引いてナベのパスタをぶちまける。
 湯気の壁と熱気が巻き起こり、105円ザルに残ったパスタの水をきる。
 男はもう一本、パスタをつまみ食いすると、大皿に半分の長さのパスタわけ
て、手作りソースをからめて出来上がり。
 ズル、ズル・・・チュルルン。
 ふんわり、卵の舌触りに、粉チーズ独特の風味と甘味がパスタに絡んでおな
かも舌鼓をうっている。
「うま!」
 

呟き尾形の野望
 料理を作っている情景が読者にイメージできて、読んだ後にああ、パスタくいてーと、台所かコンビニに向かってもらえば、最高です。

 

 

 

 呟き尾形 2004年9月5日 アップ

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