22世紀、人類は地球の環境を破壊しつくした後、宇宙へ移民した。
移民した人類の多くは金持ちや特権階級の裕福層みで、貧困層の人類は、地球に置き去りにされた。
残された人類の文明のレベルは、19世紀ぐらいまで低下したものの、むしろ、それが地球環境の破壊の歯止めがかかり、地球環境はもとにもどっていった。
そんな中でも、人間社会の歴史において、すべての人々が平等であったためしは無く、貧富の差は新しい社会の中でも生まれてしまうものである。
地主はやがて、貴族と呼ばれる権力者が生まれた。
そんな中、人類はクレージーな娯楽を見つけ出した。
ペガサスと呼ばれるプロペラ機による低空飛行のレース、ペガサスレーシング。
ペガサスにはナイトの称号を持つパイロットが登場し、命と名誉をかけて速さと度胸を競った。
貴族は、自らの権力を示すために、より速いペガサスとナイトを集めた。
商人は、より速いペガサスを貴族に売り、ペガサスをのりこなす、ナイトを紹介した。
ナイトは操縦技術と度胸を競い合った。
技術者は、自らの腕と想像力を競い合い、それに乗じるように民衆は、彼らに夢を乗せ、厳しい自然と戦う糧としていたのである。
厳しい現実は、時に、人から理想を持つ事、空想にふけることを忘れさせる。
しかし、人は理想と空想をわすれたとき、可能性も同時にみずからたつことになる。
そのためにも、ペガサスレーシングは、人々に夢を与えてくれるといえるだろう。
天馬哲郎は、ナイトとしてペガサスレーシングのデビュー戦だった。
哲郎は、愛馬のペガサス、メテオールを見上げた。
「いいか! 哲郎! 気負いすぎるな!
メテオールはじゃじゃ馬だ」
メカニックの初老のメカニックが哲郎の背中にむかって叫んだ。
「あいよ」
哲郎は、振り返らずに手を軽く振りながら短く返事をすると、愛馬であるメテオールに乗り込んだ。
「自分の限界も、こいつの限界も、決めるのは俺とお前だ。
いくぜ、メテオール。
俺の想いを乗せて飛べ!」
天馬の声に応えるかのように、メテオールはエンジン音という咆哮をあげて、哲郎の思い描く通り飛行するために、大空に飛び立ったのだった。
呟き尾形 2006年10月15日 アップ
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