無数の国旗が吊り下げられ、風にはためくその下には、無数のペガサスが整列していた。
「すげーな、これだけペガサスがそろうなんて!」
天馬哲郎は、興奮気味に、感嘆の声を上げた。
ここは、ペガサスエクステンションの会場である。
ペガサスエクステンション。
各技術者が、自作の最新鋭のペガサスを展示する祭典である。
様々なペガサスが立ち並び、壮観である。
人類が、初めて飛行機に乗り飛び立ったのは、旧世紀の20世紀の初頭のことである。アメリカ・ノースカロライナ州のキティホークの海岸で、ウィルバーとオーヴィルのライト兄弟が、人類初の動力飛行機の初飛行に成功したといわれている。
その飛行機は、フライヤー1号といい、その模型が展示されていた。
それは、とてもユニークな姿で、とても、人類初の動力飛行機だとはおもえなかった。
なぜなら、人類初の動力飛行機なら、飛行機の原型ぐらいとどめようなものだが、フライヤー1号の後継機と思えるような飛行機はない。
構造も、一つのエンジンからチェーンを介して互いに反転するプロペラを回しているというもので、フライヤー1号という記録がなければ、空を飛んだとは、とても信じられなかった。
「こんなので、本当に離陸できたのか?」
哲郎は、ホンネをこぼした。
「ああ、技術屋の俺もしんじられねぇな」
哲郎の隣にいた初老の男が言う。
男の名前は天野鉄心。
哲郎と同じチームのペガサス メテオール号のメカニックである。
「だが、それでも挑戦したってことがすげぇことだと思うぜ。
人生になんて、都合のいい解決方法なんてないしな。
ただ、やりてぇことを、がむしゃらにやるってのが、人生さ」
「違いない。
なにもしないで、考えてばっかりなんて、頭にカビがはえそうだしな」哲郎はニヤリと不適な笑みを浮かべる。
「そいうことだ。
技術屋はやってみせてなんぼだ。
口でしのごのいう必要はねぇ」
「たしかに、そのとおりだ」
「よし、よく言った。
こんどこそ、ここいらに在るペガサスをぶっちぎれ。
言い訳なんざきかねぇぞ」
「うは、やぶへびだったな」
哲郎のさっきまでの不適な笑みは吹き飛び、苦笑に変わっていた。
呟き尾形 2007年5月6日 アップ
呟き尾形 2012年3月25日 修正
呟き尾形 2015年3月15日 修正
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