合一蓮托生
僕の名前はカーズ・セレジア・エリアス。
みんな、僕のことを子ども扱いして仲間はずれにする。
それは、たしかに、僕は6歳で子供だけれども、だからって、最初から何もできないと決め付けて、仲間はずれにすることも無いと思う。
気がつけば、夕暮れ時。
しばらく休んでいこうといって、昼間から宿屋の部屋に着くと、僕は今までの疲れもあってそのまま眠ってしまった。
でも、僕がおきると、伎雄だけがいた。
なにも、僕が寝ている間に、探索に行く事もないじゃないか。
それを伎雄に言ったら、
「そんな風に言うから子供なんですよ」
と、にんまり笑顔でごまかされた。
僕がほっぺたを膨らませていると、伎雄はため息をついた。
「カーズ君。
君は、大人と子供の違いがわかりますか?」
「それは、大人は、力が強いとか、いろんな事をしっているとか、いろいろあるさ」
「そうですね。
でも、もっと大きな違いがあります」
「それはなに?」
「自分が出来る事と出来ないこと、そして、やるべき事を知っている。
ということですよ。
子供や若者ほど、何でも自分ひとりでやりたがるものです。
まるで、人に頼る事を悪いことだ、自分の無能さを示すものだと思っているようですが、本当は違います」
「ふ〜ん、そういうものなんだ」
伎雄の言う事は、全部はわからなかったけれど、なんとなく説得力があるように思えた。
「そういうものです。
それに、いつもは菖蒲と留守番ですが、今日は私がここにいるかわかりますか?」
そういえば、なぜ、今日は伎雄なのだろう?
それに気がつき、僕は首をふる。
「それはこういうことです」
伎雄がそういうと、腰にあったナイフを僕めがけて飛んできた。
そんな、まさか、足手まといになった僕が邪魔になったの?
そんな風に思っているうちに、伎雄の投げたナイフは僕の耳元をとおり、ヒュンと音を立てて通り過ぎ、次にグェというゴブリンの断末魔のようなにごった音が聞こえた。
僕はとっさに振り返ると、後ろには、ゴブリンそのものが横たわっている。
ゴブリン・・・。
容姿は醜く、洞窟や鉱山の地下に棲んでい邪悪で、他の生き物に悪意をもった亜人間だ。
ゴブリンは日光をひどく嫌い、洞窟の中か、野外に出るときは、夜に限られている事が多いけど、夕暮れ時のいまだった、たしかに、ゴブリンにとっては、ぼくらにとっての朝みたいなものだ。
それにしても、こんな宿屋にゴブリンがでてくるなんて正直、僕はびっくりして声もでなかった。
「まぁ、単刀直入にいえば、私の仕事は、カーズ君。あなたの護
衛です。
菖蒲さん。やっぱり何人か取り逃がしましたね。
もっとも、それだけゴブリンの数が多かったんでしょうけど」
僕は部屋の窓から外をのぞかせた。
すると、ゴブリンの死体の山が横たわり、菖蒲がぐったりとして座り込んでいる。
「え? え?」
僕は、どういうことかぜんぜんわからなかった。
わかることができなかった。
「まぁ、先手必勝とでもいいますか、菖蒲さんは、あなたを危険にさらさないために、外で戦いっていました」
伎雄はそう言って、窓の外を指差した。
その指先には、泡を吹いて横たわるゴブリンたちの山があった。
「やっぱり、僕は足でまといだから・・・だから・・・」
「やれやれ、もし、本当にあなたが足手まといなら、私たちはとっくの昔に、あなたを見捨てるか、誰かに預けていますよ。
カーズ君、私たちとあなたは一蓮托生なんです」
「いちれんたくしょう?」
僕は首をかしげた。
「ええ、最後まで行動や運命をともにするという意味です。
私や菖蒲さんの仕事があるように、あなたはあなたなりの仕事があるのです。
そして、あなたは、戦いが役割ではなかった。
それだけのことです」
伎雄の言っていることばはよくわからなかったけれど、僕にはみんなのためにできることがあって、決して、僕は足手まといではないことはわかって安心できた。
「そうです。
カーズ君。その笑顔も、あなたにしか出来ない仕事です」
呟き尾形 2006年12月24日 アップ
呟き尾形 2015年5月3日 修正
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