●帰還
くらいくらいやみのなか。
わたしはひとり、ここにいる。
ときどきひかりとすれちがうけれど、ただ・・・まぶしいだけ。
くらいくらやみのなか。
わたしはひとり、ここにいる。
ときどきひかりとすれちがうけど・・・。
なぜ、なぜとまるの?
あなたがそこにいたら、まぶしいだけじゃない。
じゃまよ。どこかにいって。
「そうはいかない」
膝を抱えてうずくまるエリザにそう話し掛けたのは、シン・イチジョウである。
なぜ、わたしはひとりがいいの!!!
「それで寂しくないの?」
さみしくない!
「こんな暗いところは嫌だろう?」
ここはいや、でも、どこでもおなじ
「いったことも無いのにどうして分かるの?」
・・・。
「人はね、みんな一人では飛べないんだ。
それは、人の翼は一つしか無くて、一人では飛ぶことはできないから。でも、
二人でいれば大空を飛べる。
どこへだって行ける」
その瞬間、エリザの中で何かがはじけた。
アイアンホースは、MSを回収後、即座に大気圏突入した。
「艦長! 発見しました。ZRF、ZAIRともに・・・無事です!!!」
オペレーターの声に、アイアンホースのクルーは一斉に歓声をあげた。
「よし、イチジョウ中尉、聞こえるか?」
「な、なんとか」
ノイズ交じりの音声がブリッジに響く。
「操縦可能か?」とケイス。
「な、なんとか」
「だったら、アイアンホースに着艦できるな」とリュージ。
「やってみる」
「エリザは無事か?」とカイン。
「た、たぶん」
「この、スケベ」とジャネット。
「な、なんで?」シンは狼狽したように応えた。
「私・・・大丈夫です」
エリザが通信可能になり、通信してきたのだ。ブリッジのディスプレイにノイズ
交じりに写るエリザの顔は、なぜかきつさが無くなり、好感が持てるような雰囲
気があった。
「ありゃ、男に惚れたな」とリュージがぼそりと呟く
「へぇ、顔で分かるんだ」とバナード。
「ああ、俺みたいに、経験豊富になると顔を見ただけで分かるのさ」
リュージはさわやかな笑顔で応えた。
そうして、シンのZRFはZAIRを乗せたままアイアンホースに着艦する。
アイアンホースはペガサスのように、地球ならではの晴天を翔けていた。