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航海日誌
宇宙世紀0092 ×月×日
 A・G・Aの宣戦布告後の大規模な地球降下作戦が強行された。
 我々、ホワイトフェザー隊は急遽、A・G・Aの地球降下作戦阻止に向
かった。しかし、連邦軍はA・G・Aの電撃作戦に対応しきれず、まともに
動けた部隊は、我々のほかに、地球防衛ラインに常駐している部隊ぐ
らいなものであった。その常駐部隊ですら、戦況を把握しきれず、ひど
いところでは同士討ちもあったという報告も数件存在する。
 連邦軍の怠惰を嘆くべきか、A・G・Aの作戦を誉めるべきかは判断を
下しにくいところではある。
 少数精鋭のホワイトフェザー隊とはいえ、多勢に無勢。効果的な阻止
ができなかったというのが現状である。その後、ホワイトフェザー隊はそ
のまま、A・G・Aの部隊を索敵し、追撃するという命令を受け、こうして
青い空の下を航海している。
 現在の任務は、A・G・Aの大気圏突入ポイントより、降下ポイントが想
定され、最も近いアラスカのバックランド基地を目指している。
 とはいえ、依然、A・G・Aの次の目的は連邦軍に対する反乱、という以
外は不明のままである。明確な目的が想定できないので、どうしても対
応が後手に回りやすく圧倒的に戦略的不利な状況である。
 そんな中、こうして闇雲に索敵する行為は、最善の策とは言いがたい
が、実際、それ以外に取るべき手段も見つからないという情けない状況
でもある。
 そんな状況下の中、ホワイトフェザー隊の優秀なメカニックスタッフたち
は、いち早くZRFの大気圏内オプションの装着をおこなった。それと同時
にZAIRの試作BWS(バック ウェポン システム)の取り付けも行ってい
た。

●敵機確認
「ドラゴン小隊、スタンバイOK」
 ブリッジにオペレーターの声が響き、メインスクリーンにZAIRのコクピット
に搭乗したシン・イチジョウ中尉の姿が映る。
「ドラゴン小隊。スタンバイOK。これより、定期索敵を行います」
 ノーマルスーツを着ているせいか、あるいはMSのコクピットにいるせい
か、シンの表情はりりしく引き締まっている。
 エリザ・マーカサスはそんなシンを見て少しだけ顔が熱くなったことを自覚
して、他のブリッジにいる人間に気が付かれていないかそっと周りを見渡し
た。
 幸いにも、アイアンホースに乗るクルーたちは自らの職務に集中し、忠実
にまっとうしている様子だったのでエリザは一安心した。と、そのとき、カイ
ン・アベル中尉と目が合ってしまい、うつむくことしかできなくなってしまった。
「よし、今回の索敵はZAIRの試作BWSのテスト、および、ZRFの大気圏
オプションのテストも兼ねている。
無理は禁物だ。分かったな」
リュウ・カノウ艦長がそういうと、シン・イチジョウ中尉、リュージ・サワムラ中
尉、ラグラ・バナード少尉が「了解」と声を合わせて返事をし、出撃した。

 アイアンホースから、3匹の竜が蒼天を舞う。
 その姿を見たエリザは安堵のために大きなため息を吐いた。
「不安だったのですか?」
 エリザに声をかけたのはアベルである。
「いえ、きれいだな。って思ったんです」
 エリザの応えにアベルは珍しく優しい笑みを浮かべた。
 と、その時、ブリッジに警告音が鳴り響く。
「モビルスーツと思われる飛行物が3機発見されました」
「ドラゴン小隊は?」とケイス・ウィンターホース大尉。
「すでに臨戦態勢にはいり、攻撃命令を待っている状態です。
 待ってください。未確認MSのコースの先には小規模ながら、連邦軍の基地
があります」
「目的はなんだ・・・」眉間にしわを寄せるケイス。
「陽動作戦かもしれんな。
 奇襲に備えブレード小隊出撃スタンバイ。
 ドラゴン小隊は未確認MSの確認。状況を考えて、A・G・Aの可能性が高い。
攻撃勧告後、応答がなければ、攻撃を許可する。
 ウィンターホース大尉は状況が把握されるまで、ここで待機。他のブラック小
隊メンバーはMSデッキで待機」
 オペレータの報告を聞くと、カノウ艦長は立ち上がり、指示をしはじめた。

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