●遭遇戦
連邦軍の基地を襲撃するMSは炎を連想させる赤いMSで、ブレッダと呼ば
れている。
ブレッダを先頭にR−ジャジャタイプのMS、サイコガンダムを思わせるMS
と連なり、低空飛行をしている。
「アルベルト、エイシア、目的は例のズサンスキーが、例のものを潜水艦に収
納が終わるまでの陽動だ。忘れるな」
ブレッダのパイロットが2人に任務の目的の念押しをする。
「わかってるわよ、カイ」
「エイシア、この作戦は・・・」
「シャア大佐がジオン復興をかけているんでしょ。しっているわよ」
「エイシア、アルベルト、来たぞ。ゲタに乗ったジェガンが3機だ」
「なめられたものね」
「いや、腐敗した連邦政府が軍縮をしてくれたおかげさ」
(まったくだ・・・
ン? なんだこの感覚は! 雑魚にかまっているヒマはない!)
アルベルトの言葉を最後にブレッダが3機のジェガンに飛び込む。
ブレッタは赤い火の玉となり、熱線をうち放ちジェガンの腹部を貫通させ、す
れ違いざまに隊長機のジェガンのシールドもろとも真っ二つにした。
「どうしたんだ、カイ。目的は陽動だぞ」
アルベルトは普段冷静なカイが意外な行動をしたことで唖然としている。
「気をつけて、アルベルト! 本当の敵が来る!」
エイシアが警告すると同時に、アルベルトの搭乗するジャジャXの脇をミノフ
スキー粒子の固まりが飛び込んでくる。
アルベルトはとっさにかわすが、少なからずダメージを受けたようだ。コクピッ
トにダメージを受けた警告音が鳴り響いた。
アルベルトにビームライフルを撃ったのは、紅いガンダムである。
「ガンダムか! こしゃくな!」
アルベルトは舌打ちし、ジズザグ走行をしながら、紅いガンダムへ接近する。
「熱くならないで、アルベルト!」
エイシアは指摘する。
「大丈夫だ。エイシア。アルベルトの行動は的確だ」
カイはエイシアをなだめる。
ジャジャXは、R−ジャジャの後継機であり、R−ジャジャは格闘戦を得意と
する、ギャンの後継機である。
アルベルトは一見熱くなっているが、MSの能力を十分に引き出す戦術に
でているのだ。
そして、紅いガンダムとジャジャXは接触し、ビームサーベルを重ねる。
エイシアは、激しくぶつかり合うMSをよそに、神経を研ぎ澄まし、冷静に
戦場の状況を把握しようとした。
そして、エイシアのように、戦場を冷静に見極めようとしている、碧のガンダ
ムの気配をつかむ。そして、信じられないスピードでカイのブレッダに向かう
蒼いガンダムも見つける。
「カイ! 気をつけて。圧倒的な何かが・・・何かが・・・」
エイシアがそう叫んだときには、ブレッダのビームサーベルと、蒼いガンダ
ムのビームサーベルが重なり合っていた。
「っく、エイシアをあれだけ錯乱させるとは、蒼いガンダムのパイロット。ニュー
タイプか。
だが・・・あまい!」
ブレッダはすばやく蒼いガンダムの腹部に蹴りをいれ、蒼いガンダムはそれ
に反応してブレッダの足を踏み台にして、ブレッダの頭上に舞い上がり、バル
カンをうち放つ。
ブレッタはいったん後ろへ下がり体制を立て直したとき、カイの目の前のモニ
ターにノイズが入る。
碧のガンダムが撃ったビームライフルだと判断するのに一瞬だけ時間を要し
た。
だが、その一瞬の時間が戦場では命取りとなる。
無傷のジェガンが伏兵となり、その一瞬の隙をついたのだ。
無傷のジェガンがビームサーベルでブレッダを貫いたかにみえた。
だが、ブレッダはジェガンのビームサーベルを紙一重でかわし、ジェガンの腕
をそのまま脇に抱えた。
ブレッダはそのままジェガンを投げ飛ばす。蒼いガンダムは落下するジェガン
を受け止めるが、蒼いガンダムには、MSを抱えて地上で飛べるほどの推進力
はないらしく、そのまま落下速度を上げながら落ちていった。
ブレッダは次のターゲット、碧のガンダムに襲いかかる。
あまりのスピードに、碧のガンダムは反応が遅れる。
「俺様が相手だ! 紅いMS」
と、そのとき、碧のガンダムとブレッダの間に紅いガンダムが割り込む。
「なに」カイがとっさにアルベルトの方を見る。
「すまない、カイ」
アルベルトのジャジャXは片腕が無い。
戸惑うカイに紅いガンダムが視界から消え、背後にいた碧のガンダムがビー
ムカノンを発射する。
「ふん、このブレッダの装甲、甘く見るな」
ブレッダは碧のガンダムのビームを受ける。
爆音と熱線が空中にはじける。
そして、そこに残ったのは、赤いMSブレッダだった。
碧のガンダムのパイロットは少なからず動揺しているのだろう。動きがピタリと
とまってしまった。
だが、その時、紅いガンダムがブレッダの背後をとる。
「カイ! 危ない」
エイシアの搭乗するMSが数発のミサイルを発射する。
紅いガンダムはミサイルの弾道をすばやく計算し、回避活動をとろうとしたとき、
ミサイルは予想外の行動をとった。紅いガンダムの回避した先に向かったのだ。
「チィッ」
紅いガンダムは背中に搭載されていたバックパックを射出し、バックパックをた
てにした。盾にされたバックパックはミサイルとともに爆炎を上げて落下していく。
「連邦にも、手応えのあるパイロットがいるのだな」
カイが嬉しそうにつぶやくと、搭載完了の知らせが入った。
「楽しみは、後にとっておけということだな。
よし、アルベルト、エイシア、戻るぞ」
そうして、カイ、アルベルト、エイシアは戦場を撤退した。