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光の鳳雛、時の伏龍 8

 

 

「ふ〜ん。結構いさぎ良いじゃないか?
 ・・・・傷の方は、だいじょうぶか?」
 サウザーは、まじまじと白狐の顔を眺めて手をさしのべる。
「ありがとう。大丈夫です。
 ところで、さっきの質問に答えてもらえませんか?」
「ああ、俺には妹がいてな」
「・・・・なるほど」白狐は苦笑したあと、観客席に顔を向けて口をひらいた「マクシミリアン、テストは合格です。しかし、彼の身内を人質にとるのはいただけませんね」
「私も望むところではなかったのですがね、なかなか、彼が応じてくれなかったのでね、やむを得ない処置です。
 とはいえ、彼の妹は君に預けますよ。白狐」
 スピーカーから、マクシミリアンの声が聞こえる。
「白狐。何を考えているの?
 あなたの仕事にサイクラフトは必要かしら?
 むしろ、彼のように戦闘能力のあるサイクラフトなら、蝦夷谷の下につけるのがいいのじゃなくて?」
 不意にスピーカーから女社長の声が響いた。
「いいえ、社長。
 むしろ、サイクラフトでなくては情報収集できないこともありますし、なにより、いざというとき切り抜けるだけの戦闘能力が必要です」
「その貴重なナチュラルの素材をスパイにつかうというのか!
 だったら、その素材を私によこせ!
 サイジュエリーを検出してやる!」
 エルストのいやらしいくら甲高い声が響く。
 その声を聞いたサウザーがあからさまに眉をひそめた。それはそうだ。自分を物扱いする人間を軽蔑しない人間はいない。
「おだまり、エルスト」
 凛とした声がエルストの言葉をかき消した。
「いいわ。白狐。何をたくらんでいるかは、結果を見る事にしましょう。
 あなたが相手だと、言いくるめられそうで恐いわ」
「ご冗談を」白狐は、うつむきかげんに苦笑した。
「社長の許可もでた。
 君に、このマクシミリアン・伊集院のプランに協力してもらって感謝しますよ」
 マクシミリアンの言葉を聞いた白狐は、サウザーに向き直った。
「あなたを縛っていた鎖はたった今斬りました。私が新しいあなたの鎖です。私の命令がない限り、あなたは自由です。あなたの妹も出来る限りのことはしましょう。まぁ、解き放つことはないでしょうが・・・・
 そうそう、さっきの戦闘、楽しかったですよ」
 白狐が手を差し伸べた。
「ああ、俺もだ。
 今は素手だけじゃ、かなわないかも知れないけど、これからも
っと修行してからもう一度やろうぜ」
「恐いですね」白狐は苦笑する。
 こうして、時の伏龍は、光の鳳雛を得た。この時、すでに伏龍の復讐の鎌首はもたげられ、鳳雛を復讐の刃に育て上げる計画を立てていた。

 光の鳳雛、時の伏龍 ・・・・了。

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 呟き尾形 2006年10月8日 アップ

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