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●神崎耀
神崎耀は腕にはめられた端末からの命令と、その命令に逆らうように
促すエレンの歌声の狭間で葛藤していた。
「うわぁぁぁ」
矢島、工藤、小川、轟、綾小路、ナオ、神崎恵子はその様子を見守っ
ていた。それしか選択肢が無いように思えたのだ。
「みなさん。耳を澄ましてください。耀の心が聴こえるはずです」
6人は恵子の言葉にうなずき耳を澄ました。
「耀、あなたはUNIT64に逆らうことはできないの」
クイーンは、耀にかける暗示をさらに強くする。
「違うわ。耀。あなたが望んでいるものは違うわ」と香子。
「そうよ。機械は人間が作ったもの」とマコト。
「だから、人間が機械を操ることはあったとしてもだ」と矢島。
「機械が人間を操るのはありえないよ」とゆうあ。
「こんな、あたりまえのことすらわからないのか?」とナオ。
「俺たちと一緒に戦おう」とジョー。
「ネエサン? ジョーサン・・・。
そうだ。俺はこんな風になるために生きているんじゃない」
「耀! 本当にそれでいいの?
UNIT64に逆らうなんて!!!」
クイーンがヒステリックに叫ぶ。
「いいえ、クイーン。あなたも私ならわかるはず。私たちはもともとU
NIT64に逆らうために造られたNEO―G0のシステムの一部のレ
プリカだから」
最後にエレンが、歌を終え、クイーンを諭した。
その瞬間、耀の心の呪縛は解き放たれ、苦しみから開放されたのだ。
●その後・・・。
LDを外の世界から見る24瞳があった。
元刑事の矢島智樹、元女医の工藤香子、元探偵の小川真琴、元レーサ
ーで元ベーシストの轟丈太郎、元新聞記者の綾小路ゆうあ、元パペット
パイロットのナオ・ベルディス、元歌手のエレン、元シスターの真理
逢、元牧師の姫崎剛、神崎耀、神崎恵子、そして、修復された十六夜ら
が、トレーラーに乗り、マツドLDから離れてゆく。
「やれやれ、退職金をもらい損ねたな」と矢島。
「でも、報酬は払ってもらうからね」とマコト。
「何を言っているの。命あってのお金じゃない?」と香子。
「でも、これからどこに行くんだ?」とナオ。
「UNIT64を敵に回しているんだったな」とナイト
「まぁ、次に行くのはヨコハマLDにはあてがあるから・・・」とジョー。
「え? そうなんですか?」とゆうあ。
「龍か?」と姫崎。
「龍?」とエレン。
「UNIT64に対抗するレジスタンスのことよ」と恵子。
「姉さん、ものしりー」と耀。
「リリス、リリト、クイーンと融合しただけあって情報量はすごいわね」とエレン。
「それでは、皆さん。目的地は龍の本拠地のあるヨコハマLDですね」
と十六夜。
姫崎は真理逢を顔を見て「いいのか?」と無言で確認を取る。
「今は終わりではなく、始まりです。新しい葡萄酒は新しい皮袋へ入れ
よですわ」
真理逢は女神のように微笑んだ。