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4枚の絵画 朝の目覚め 1

 

 港町。ストーク。
 旅の騎士、シン・マーベリックこと、シンは、人間になりた
いという願いをもつ、人魚のムーンティア・エクセリオンこと、ティアと旅を続けていた。
 人魚。
 上半身が人間で、下半身が魚という種族で、海に住むことに適正のある種族である。
 特に、人魚の女性はマーメイドと呼ばれ、美しく神秘的なイメージが、人間の社会の伝承や伝説に付きまとっている。
 シンと共に旅をするティアもその例外ではなく、月のような長い金髪は神秘的で、かわいらしい容姿は、すれ違う男性を振り向かせずにはいられなかった。
 人魚というからには、とうぜん、ティアの下半身は魚のそれであるはずだが、人魚は、陸地をあるくとき、その身体を陸地に適正を持たせる魔法を帯びた変身する能力を持っている。
 だが、多くの人魚はわざわざ海より狭い陸に好んであがることはめったにない。
 ただ、ティアの陸地への好奇心がもっと陸地を探求したい、なによりも、人間になって、隣の騎士とずっとずっと過ごしたいという気持ちが勝っていた。
 一方、シンは、そんなティアの気持ちを察することなく、ティアが人間になりたいという願いがあるのだからと、一緒にティアを人間にさせる方法を探索する旅を続けている。
 そんな中、伝説の魔法使いが、種族転換の魔法の薬を調合することができるという噂をききつけた、この港町、ストークにくることになった。

 ストークに到着したシンとティアは、船を下りて、宿を探す。
「ねぇ、シン。ここなんか良いんじゃない?」
 長い金髪をなびかせてムーンティア・エクセリオンこと、ティアは、白い雌鹿の絵が描かれている宿屋の看板を指して言う。
「そうだね」
 シンはティアの言葉に即答する。
「ストークか、懐かしいなぁ」
「懐かしいって、ここに来たことがあるの? シン?」
「あ・・・いや、そんなことより、早く部屋を取ろうよ。
 それに、伝説の魔法使いを探すんだから結構時間がかかるんじゃないかな。うん。一ヶ月くらいかな」
「い、一か月ぅ〜」
 話題をはぐらかすシン。ティアは、そのような態度をとるときのシンが隠し事をしていると言うことを見抜く。
 とりあえず、気を取り直し、ティアとシンは白き雌鹿亭のドアを開いた。
「いらっしゃい! おや? 見ない顔だね。
長期滞在だったら安くしとくよ」
 愛想良く笑う宿屋の親父は、なかなかどうしてたいした洞察力の持ち主だ。
 旅人と見て、すかさず商談にはいる。それもシンを見て、いきなり切り札を切ってくる当たりが抜け目無い。
「ああ、1カ月位かな」
 愛想のいい笑みを浮かべて答えるシン。
「よっしゃ、前払いは出来そうもないだろうから、支払いはいつでも良いよ。ただし、面倒なことは願い下げだ」
「ぷっ」
 宿屋の親父の最後の条件にティアは、思わず噴出してしまう。 シンにその気がなくとも、困った人を見れ
ば頬って置けない性格が災いしていろいろな面倒ごとに巻き込まれることを思い出してしまったのだ。
 シンは、そんなティアに反論しようと何か言おうとしたとき、客席からドンと机を叩く音がする。
「おい、マイク! 酒が切れたよもってきな!」
 シンと酒場の親父の商談は、酔った女性の叫び声で中断された。
その女性は歳の頃は30前半で、だぶだぶの服を着ており、金色の髪は朝に起きたばかりの髪に軽く手櫛をいれた程度で、容姿の方は前髪に隠れ、ハッキ
リとは見えないが、やたら赤い口紅が印象深い。
 一見だらしなさそうに見えるのだが、大胆に開かれた胸元には、ふくよかな乳房を連想させるほどの谷間が見えた。
 彼女は、美しいという言葉には似合わないが、彼女のだらしなさは、真赤な唇とふくよかな乳房を、よりいっそう淫らに感じさせた。
「ああ! わるいなジョアンナ! 今日のツケはここまでだ。だからさっさと仕事に行ってしまいな」と宿屋の親父はたちの悪い客を追い払うかのように怒鳴る。
 ティアには宿屋の親父の怒鳴り声の中には酔った女性への思いやりが感じられた。シンの方は商談が中断されて、度惑っている。
「フン、幼なじみのよしみで来てやったけど、こんな安酒しかないボロ酒場に来るんじゃなかったよ」
 ジョアンナと呼ばれた女性はヨロヨロと立ち上がり、机をたたきつけて嫌味を大声で叫ぶと、不意にシンが視界に入ったらしい。千鳥足でシンに歩み寄る。
「いい男だねぇ、あんた好みだよ。こんど出会えたら商売抜きで寝て上げるわ」
 ジョアンナはシンに囁く、そして前髪をかき上げ、妖艶な色目使いでシンを値踏みすると、彼の頬に軽くキスをした。
「え?」
 頬に真っ赤なキスマークを残され、ドギマギするシン。
「シ、シンー!」
 ティアは、この状況では顔を真赤にしてシンに叫ぶほか抗議の術はなかった。
「あらあら、そっちのお譲ちゃんには刺激が強すぎたようね」
 溜息混じりにジョアンナはそう呟くと気怠げに別れの挨拶をしてから白き雌鹿亭を出ていった。
 そんなシンとティアを見る酒場の親父は2人のにワインとミルクを出した。
「少なくともここ1ヶ月は退屈することはなさそうだからな、これは挨拶がわりだ。それとこれから、今の幼馴染の無礼のお詫びに、晩飯をおごってやるからまってな。
 その間にちょっと上の部屋を片付けさせておくよ。おい、パッセル!
 お前明日休むんだから今日は倍は働けよ!」
 シンとティアは親父の言葉に甘えてカウンターに落ちつくことにした。
「ねぇ、シン。さっきの女の人のことだけど・・・もしかして、知り合い?」
「し、知らない人だよ」
「どうかなぁ。
 さっき、懐かしいとか言ってたじゃない?」
「・・・それは、昔、子供の頃ここに来たことがあるだけだよ」
「ふ〜ん、じゃぁ、そのとき、可愛い女の子とであったとか?」
 とティアの牽制。
「そんなことないさ。ティア。
 それに、昔の話だよ。なんで、ティアは、いつも俺の過去のことを詮索するような話をするんだい?」
「え? それは・・・いーじゃない、そんなの。
 僕は、知りたいことをシンに聞いているだけだもん」
 2人の会話を聞いていると、仲がいいほど喧嘩するとは良く言った
ものだ。と酒場の親父は思う。
 確かに、酒場の親父の言うとおり、高みの見物だけなら、この2人を見ていると退屈する暇はないように思えた。

 

 

 

 呟き尾形 2005年3月13日 アップ
 呟き尾形 2014年4月20日  修正


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