●フォルスの塔
シンとティアがフォルスの塔に訪れるとフォルスの数人の弟子達が3人を迎えた。
弟子達の態度を見るとシン達は招かざる客であることは明らかではあった。
「悪いけど、あまり時間がないんだ。
フォルスって言う魔法使いの残した巻物を捜してくれない?」
いつものシンなら、単刀直入な言い方をしないのだが、なんといっても時間が無い。
戸惑う弟子達の中でもまとめ役らしい魔法使いが一歩前に出てシンに差し出す。
「これをどうぞ。
中を読んでも構いませんがあなたには読める文字ではないでしょう」
魔法使いは、シンを見下すような言い方言う。
シンは巻物を受け取り巻物を広げる。
シンの読めるはずの無い文字で書かれているのだが、文字がシンに語りかけて、シンに一つのイメージを伝えた。
漆黒の闇の中に浮かぶ3つの弱い光。光達はバラバラに漂っていたのだが、4つ目の光が現れると光は一つにまとまる。
●フォルスの独白
「ついに語るべき時が来たのじゃな」
その声は、シンの頭の中に直接語りかける。
「わしは悪魔退治をする前にシグルーンと言う不思議な女性と出会った。
今にして思えば、女神の仕組んだ必然的な偶然だったのかもしれん。
シグルーンは人ならざる力を吸い込むという能力が潜在的にあった。
わしはその能力を知ったとき、人外なる力を持つ悪魔を滅することよりも、悪魔を封印するべきだと判断した。
実際にうまく言ったし、もし、あのとき、悪魔の死を狙う闘い方をしていれば、確実に我々の街は廃墟と化していただろう。
彼女の中に悪魔を封印するのは彼女の死と共に封印が解けてしまう。
そこでわしは、彼女の力を利用して宝石に閉じこめてしまう魔法を創り出した。
しかし、宝石もまた形ある物である限りいずれは破壊される。
ならば、その宝石を4つに増やし一つの封印が解けてもいいようにした。
仮に、封印が解けたとしてもその間になんらかの対策が練れる訳じゃ。
その宝石をそれぞれ半分に砕き粉にし、絵の具として使えるようにした。
わしはジャールとアルクィンと呼ばれる兄弟に宝石を宝飾品に宝石を砕いてつくった絵の具でシグルーンをモデルに絵画を描くよう依頼したんじゃ。
あの兄弟には悪いことをしたかも知れぬ。関係のない者まで巻き込んでしまったのだからな。
こうして4つの宝飾品と4枚の絵画ができたんじゃ。
じゃが、ここでわしの心の隙ができてしまった。悪魔は封じ込められる前にほんの少しだけ自分の分身を創り出し、わしらに呪いをかけるよう命じていたんじゃ。
幸いその呪いは完全なものではなかったから、抵抗はできたが完全に防ぐことはできなかった。
不完全な呪いはわしを正気のまま狂気に支配され、悪魔が復活するまで悪魔の下部になるよう運命が決められたんじゃ。
わしの苦しみを理解してくれとはいわん。せめてこの哀れな老人の話を聞いてもらえさえすれば・・・・。
心残りは孫のパッセルの事じゃ。
弟子達はシュトルムを始め、自分のことばかり考えている。
彼らはパッセルの保護者になっても良きともに離れぬ。
今のパッセルに必要なのは心を許せる友。せめてパッセルが孤独を感じさせぬような友を1人でも良い。見つけだせれば・・・・。
呟き尾形 2014年9月28日 アップ
呟き尾形 2015年1月25日 修正
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