ホーム > 目次 > 小説 > 4枚の絵画

4枚の絵画 夜の安らぎ 6

 


●北の洞窟へ
「ねぇ、シンどうしたの?」ティアがシンの顔を覗き込む。
「いや、なんでもない」
 深刻な顔をしていたシンはティアに声をかけられると笑顔を見せる。
「やはり読めなかったようですね」
 シンとティア、そしてシャウティーの3人に声をかけたのは痩せた魔法使い風の男だった。
「その中には悪魔を封じるための方法が記されています。
 この剣で悪魔を切り、この巻物に記されてある呪文を唱えれば悪魔は封じられるはずです。
 私も北の洞窟に連れていって下さい。
 私の名前はシュトルム。フォルス様の1番弟子でした」
 シンはシュトルムと名乗る魔法使いが嘘はついていないことは分かったが、その方法は間違いのような気がした。
「ねぇ、シン。よぉぉく考えてみたら僕たち北の洞窟までの道を知らないよ。シン知ってる?」
「・・・そうだね」
「シャウティーさんは?」
「私も知りません」
「と言うことは私が道案内しなければ、北の洞窟には行けないと言うことですね。それに安全な近道も知っています」
 シュトルムの得意そうな声で言う。
 シンはシュトルムの申し出を受けざる得ない状況だった。
 そして、シン、ティア、シャウティー、シュトルムの4人は北の洞窟へ向かった。

●ロレンツォ邸
 白き雌鹿亭の主人は店を閉めて封印していた剣を持ち、ロレンツォの館ので立ち止まる。
 白き雌鹿亭の主人は鞘から剣を抜くと、いつもは愛想の良かった白き雌鹿亭の主人から、勇者バハトゥーンの顔になる。
「バルバロイ。お前の申し出を断りに来た」
 通る声はロレンツォ邸まで響く。
 すると、ゆっくりとバハトゥーンの姿が足下から薄れ、やがて消えてしまう。
「ホッホッホッホ、正面から来るなんて相変わらず馬鹿正直ねぇ、あなたはあなたの影と闘ってらっしゃい」
 バルバロイは屋敷の窓から呪文を唱えると、バハトゥーンに転送の魔法をかける。
「待て! バルバロイ」
 バハトゥーンの声はむなしく響き、姿とともに声はかき消された。
 バルバロイは消えていく様を眺めて満足げに笑う。
 バルバロイの隣には、バルバロイの僕と化したロレンツォがいた。
「さぁ、ロレンツォ、チュアランプールの門をすべて開けさせるのよ。今夜は楽しい宴になるわよ」
 バルバロイは甲高い声で笑い声をあげると、ロレンツォ邸から出ていく。
 その後ろ姿を物欲しげに見ていたロレンツォは、バルバロイの姿が見えなくなると、てきぱきとバルバロイの命令を実行するよう、指揮を取り始める。
 
●商いの広場
 ジョン達、ギルドのメンバーは、街の人々にゾンビがやってくるから避難するよう民衆に呼びかける。
 そんな中、チュアランプールの門は閉じられるどころか、解放されていることから、ジョン達の警告を信じる者は少なかった。
 そして、チュアランプールの門をすべて解放された頃、空は血で染められたように怪しいまでに赤かった。
 そして、腐臭と共に生ける屍は訪れて、大地も赤く染める。

●展覧会の絵
 商いの広場でジェノサイドが始まる頃、バルバロイは『展覧会の絵』訪れていた。
「シグルーン・・・・」
 そう呟くバルバロイの真意を知る者は誰もいなかった・・・・。

●北の洞窟
 生命を象徴する緑の葉はすべてその力を失い、茶色に変色していた。殆どの木は枯れかかり、死を待つばかりの病床に横たわる病人のように感じられる。
 シン、ティア、シャウティー、シュトルムの4人は進んでいた。森に入ってすぐに10体ほどの生ける屍が行く手を遮る。
「皆さん、下がって下さい」
 シャウティーがそう言うと目を閉じて天に祈る。すると近づく生ける屍の体はあっさり崩れさる。
「シャクティーさん大丈夫?」
 ティアが心配して声をかけた。シャウティーは軽く頷き全員に死臭の漂う陰鬱な森の中をすすみ始めるよう促す。

 この森に入ってからというもの、太陽は傾きかけているがいっこうに沈む気配が無く、天に止まったままだった。
「まるで時間が止まっているようですね」
 皆が気づき、感じていたことを口にしたのはシャウティーだった。
 シャウティーの言葉に過敏なほどに反応したのは温室で学んだシュトルムだった。
「何を言うだ、時間が止まる? あり得ない。もしそんなことができるとすれば、神の力を持って・・・・」
 シュトルムの台詞は空中に浮かぶパッセルが視界にはいることで遮られた。
「4人・・・・予定外だな。招かざる者よ、その罪は死に値する」
 パッセルの口からは重々しい低い声が響き、宙を掴むように拳を握る。
 すると、シュトルムの足下の土が巨大な手となりパッセルの小さな手の動作をまねるようにシュトルムを握りつぶす。
 シュトルムは恐怖の余り断末魔をあげることなくそのまま命の灯火が消された。
 突然のことに他の3人は何もできず、ティアは恐怖のあまり悲鳴を飲み込み、シャウティーは両手で目を覆いその凄惨な光景から目を背けた。
 シンは鷹のような視線でパッセルに乗り移っている悪魔を睨み付ける。
「おお、シンよ、シン・マーヴェリックよ、よくぞ・・・よくぞこの聖地へ来た。汝らの存在は余を癒すであろう」
 パッセルの口から似つかわしくない不快な声が響くと周りは闇に閉ざされた。










呟き尾形 2014年11月9日 アップ

   前へ    

タイトルへ戻る 


質問、感想などは、4枚の絵画掲示板などに書き込みしていただければ、モチベーションもあがります(笑)