テーマ「歩く(三人称)」
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テーマ「歩く(三人称)」
梅雨明け間近の、日差しの強い日。
理恵は、正人に連れられて、あなたの実家にやってきた。
「ジューンブライドには間に合わなかったけれど、来年まで待てない」
それが、正人から理恵へのプロポーズの言葉だった。
理恵が返事にとまどっていると、正人は子供のようにそわそわしていた。
理恵は内心、仕事では絶対見せない顔だとほくそ笑む。
そんな理恵は、今の正人の様子を同僚に見せたいと意地悪な事を考えてしまう。 そして、理恵は、正人と共に正人の故郷にいた。
理恵は、正人の両親に挨拶するのは不安があったが、正人の両親は、理恵の不安を吹き飛ばした。
理恵は、すべての不安が吹き飛んだわけではないが、うまくやっていけると革新できた。
なぜなら、正人の母は理恵の理想の母親像と重なったからである。
正人は、両親の挨拶もそこそこに、理恵の手を
”ぐぃっ”
と引っ張る。
理恵の手を引く正人は、まるで、仲間を秘密基地に連れて行くようだった。
理恵は、正人に手を引かれつつ、うつむき加減に赤くなる。
理恵はうれしかった。なぜなら、正人は、理恵に誰にもみせない顔を見せたからである。
そして、正人は理恵を小高い岩山までつれてきた。
そこは、ほとんど草木もない小石ばかりの場所だった。
「ねぇ、どこに行くの?」
理恵は、息を切らせて、正人に聞く。
「そうだな。
言ってしまえば、聖地さ。
俺にとっての。そして、これからは、お前にとっての」
正人は、先にある、大きな大きな切り株を指差した。
「本当は、あそこにでっかい木があった。
子供の頃だから、本当はそうでもなかったんだろうけど、でかかった。
天まで届きそうだと思ったよ。
だから、俺は、あの木に神様がいると思ってた。
だけど、大人はそれを切ってしまったんだ」
正人は、理恵に淡々と話す。
「ちょっと、寂しい話だね」
「そうだな。だけど、俺は初めて一人で大人とたたかったよ。
まぁ、結果は、親父に殴られてあっさり敗北。
だけどさ、自分の気持ちに正直にやるってことの大切さをしったさ。
まぁ、子供の頃のバカな話さ」
正人は、自嘲した。
理恵は、そんな正人を見て、自分が、正人の正直なところがすきなのだと改めて実感した。
「そうね。
でも、素敵じゃない。
じゃぁ、あそこは、私たちにとっての聖地ね。
やりましょう、一足先の私たちだけの結婚式」
理恵の言葉に、正人は、きょとんとする。
「あの聖地に、あなたと私が人生を一緒に歩くのを誓うのよ。
結婚式って、新郎新婦がそういう約束をすることなんだから」
正人は理恵を抱きしめて、理恵の気持ちに応え、暖かく包んだのだった。
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★★★
歩く(二人称)の小説を、三人称で書いてみました。
読み比べていただければ幸いです。
歩く(一人称)もあります。
呟き尾形 2006年7月9日 アップ