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占星学の歴史

 ルネッサンスのオカルティズム 

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 ルネッサンスのオカルティズム

 占星学は、オカルトの一分野として受け継がれ、宗教改革の真っ只中、ヨーロッパに根強く生き残りました。
 ルターの本国ドイツでは、プトレマイオスの『アルマゲスト』が翻訳されました。
 アルマゲストは、過去に、占星学とプトレマイオス
http://blog.livedoor.jp/tubuyaki1/archives/27425300.html
 で、触れたとおり、世界最初の天体地図のことです。
 さらに、現在のホロスコープの室区分法に名を残す、レギオモンタス(ヨハネス・ミュラー)。
『オカルト哲学』を著したハインリッヒ・コルネリウス・アグリッパ(アグリッパ・フォン・ネッテスハイム)が活躍しました。
 また、スイスでは、パラケルススが、占星術、錬金術、医学をミックスした独自の医学体系を築き上げられました。
 ルネサンス期のオカルティズムの根底にあったのは、プラトン主義を神秘的に再解釈した、新プラトン主義だといわれています。
 新プラトン主義では、あらゆるものを超越した、究極的存在からエネルギーが流出すると考えられていた。
 そして、そのエネルギーから離れるほど、精神の完全性は低下すると解釈されていました。
 この究極的な存在と完全に合一することが人間精神の真の目標であるというのが、新プラトン主義の主張です。

 さて、『オカルト哲学』を著したハインリッヒ・コルネリウス・アグリッパですが、(アグリッパ・フォン・ネッテスハイム)アグリッパは、1486年にドイツのケルンで生まれました。
 アグリッパは、生家が裕福だったこともあり、新設されたばかりのケルン大学に入学し、教育を受けています。
 アグリッパはケルン大学で、法律学、医学、哲学、各国語を学びましたが、特に、新プラトン主義に、大きな影響を受け、哲人として有名になりました。
 これが後のオカルティストの道を進む土台の一つとなったと思われます。
 アグリッパは、十代後半で神童と呼ばれ、優秀な成績を納めて注目を集めました。
 実際、アグリッパは、卒業後の1501年に、神聖ローマ帝国皇帝マクシミリアン1世の宮廷書記となり、後日、密偵として敵対国フランスへ赴くよう命じられました。
 パリ滞在中、アグリッパは自分に近い精神の持ち主やカバリストに出会い、これがきっかけで、魔術的なものに魅かれはじめたといわれています。
 とくにゲマトリアに強い興味を抱いたといわれています。
 のちにアグリッパはマクシミリアン皇帝の娘へントのマルガレーテと恋仲になりましたが、この恋は成就しなかったそうです。
 アグリッパが、カバラに興味を持っていることをフランチェスコ修道会から糾弾され、イギリスに亡命することになったのです。
 イギリスに亡命し、数か月を過ごしたのち、アグリッパはイタリアに渡ってルネサンス魔術とカバラを完全に自分のものとしました。
 その後、アグリッパは、魔女裁判の裁判官を論破したり、既存の学問の間違いを指摘するなど、聖職者達をはじめとする当時の権力者と衝突し、怒らせるなどのトラブルを起こしていき、熱烈な信望者と蛇蠍の如く嫌う敵達を抱えたまま、50にも満たない短い生涯を終えたといわれています。

 オカルト哲学は、アグリッパが24歳のときに3巻からなる論文です。
 1巻目は自然魔術、2巻目は数学魔術、3巻目は儀式的魔術という構成となっていたそうです。
 1巻目の自然魔術は、既存の魔術書に対して、実践的な内容になっていたそうです。
 大まかには下記のとおりだそうです。
 ・四大元素や、その他の物質に関わる魔術的な力について。
 ・宇宙生命の連鎖的秩序から来る共感と反感について。
 ・ヘルメス文書の上位のものと下位のものとの関係について
 ・七惑星や十二宮などの天体の持つ影響と力について。
 ・宇宙を支配する神的存在とダイモンを引き寄せる法について。
 などなど、他にも、占いや薬物などについても記載されているそうです。
  アグリッパいわく、あらゆる事物は、神によって創り出された法則によってうごいており、何の因果関係もなく、予兆もなにもない偶然や気まぐれによって決められるものではない。、 
 それゆえに天体や神の体と力に照応し、調和した関係にある。
 といったことをが述べられていたそうです。

 オカルト哲学2巻目の数学魔術では、数秘術が語られているそうです。
 秘数術というのは、いわゆるカバラのことで、自然の力が世界の事物に対して成すことは、ことごとく、数、大きさ、重さ、調和、運動、光によってなされ、導かれているといったことが記載されているそうです。
 そして、これらの法則を解く学問こそが数学であるともいえます。
 数学的な考え方は、自然学的な考え方よりも論理的で、物質よりも、理解しやすく真実を見つけ出しやすいとされています。
 実際、現在の科学の基礎は数学が土台となっています。
 アグリッパは、こうした数を用いたシンボリズムによって、様々な魔術的作用を引き起こすことが出来ると考えたそうです。
 少々、信じがたいことかもしれませんが、例えば、ある薬草を利用するとき、この薬草を5枚服用すれば、毒を防ぎ悪霊を退けることができるとされています。
 れを1日に2回服用すれば1日熱が治り、3回服用すれば3日熱が、4回服用すれば4日熱が下がるとなっています。
 この考え方は、薬物の物質的な要素よりも、「事物」と「数」が照応し、調和しているからであると考えました。
 そして、オカルト哲学の2巻目の数学魔術では、数が持つ象意、シンボリズムについて詳述されるそうです。
 他にも、七惑星の魔方陣、シジルなども含まれ、複雑な計算を含んだ数のシンボリズムは、後のジョン・ディーによって、さらに発展し体系化されるたそうです。
 さらに、幾何学図形、音楽や音響についても触れられています。
 さらに、幾何学図形のシンボリズムは、現代魔術においても、重要な位置を占め、ペンタグラムや十字などがその代表だといえるでしょう。

 第3の書では、儀式魔術というタイトルで、いよいよ本格的なカバラ魔術が語られたそうです。
 魔術師の心得が書かれているそうです。
 その中に魔術を成功させる根本的な原理について書かれており、肉欲や感覚に過度に関わることを避けることが条件のひとつとされているそうです。
 そして、精神を純粋知性に高めることにより、自らに”尊厳を与えること”が必要だとされています。
 また、魔術師は、自分が魔術をしていることを秘密にしなければならないそうです。その中で、常に神に感謝しながら作業を行わなければならないそうです。
 魔術を成功させる原理の後、”生命の樹”の10のセフィラの解説に入るります。
 各セフィラの象意はもちろん、それに照応する天体や「名前」の解説もあるそうです。
 それぞれの「名前」には、おのおの特別な本質的な力が備わっているとかかれているそうです。
 その本質的な力を用いれば、自然界に驚くべき作用を引き起こすことが出来ると書かれているそうです。
 具体的な用法についても、かかれており、護符や一種の呪文によるものだそうです。
 そして、天界の精霊論、天使論についても詳述されました。
 アグリッパは、書物の中で、精霊、ダイモンを3つ区別し、守護天使と戦いを任務とする悪ダイモンについて解説たそうです。
 また、七惑星、十二宮、四大、その他多くの精霊の名前が列挙され、聖書や天体、ゲマトリア、事物からそれに対応する天使の名を引き出す法が述べられたそうです。
 そして、霊を表すシンボル、幾何学図形、魔術用アルファベットなどが紹介されました。
 アグリッパは、こうした知識を得れば、悪ダイモンを退け、善ダイモンを引き寄せると主張しているそうです。

 最後にアグリッパは、「全論考の結論」という章で、自分の理論の不完全さを認めたうえで、
「私は、これらの事実を真理としてではなく、真理に肉薄する仮説として提示するのである。悪から善を導き出し、あらゆる曖昧な事物を明確なものとすることを学ばねば成らぬ」
 と総括したそうです。

 3巻におよぶオカルト哲学という大冊には、自然魔術やユダヤ教カバラ魔術から民間のまじないまでをふくみながらも、
一つのカバラという象徴体系でまとめあげ、その内容は、大きく近代化させたということがいえます。
 実際、この書物の内容は多くの人から批判されながらも、記されたシンボルや記述には、そのまま後人に引き継がれることにもなりました。

  アグリッパは、オカルト哲学を通して、「魔術は妖術や悪魔とは無関係であり、関係があるのは予言や透視力などのさまざまなオカルト能力である」と述べました。
 そして、
「空想力もしくは想像力は、魂の情念に対する支配力を持っている。想像力は体内の偶発的要素を変化させることがある。つまり、精神が肉体を変化させるのである」
 とものべています。

 つまり、人は、強く念じる事で、精神や肉体に大きな変化が生じるものである。

ということです。
 中世という当時は、人体のしくみがほとんど理解されていなかったのにもかかわらず、アグリッパは数百年も進んだ理論を展開していたといえるでしょう。
 そこで、気になるのが、人間は実際に、魔術が行使できるかどうかということですが、アグリッパはこう語ります。
「誰しもそのような力は持ってはいない。ただ、4大精霊と共生し、自然を征服し、天よりもさらなる高みに到達した者のみが天使を越えてア―キタイプ自体にいたる。そのとき、彼は天使たちと組み、あらゆることを成し遂げる」
 と。
 つまり、普通の人間では到底無理だが、修行次第では可能である。ということでしょう。
 当時、印刷技術はあったものの、この本が認められ、出版されるまでには20年以上の歳月を必要とされたそうです。


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