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ムーシコスのバイオリン 第3回
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 さて、音楽隊の練習が終わって、家に帰ったとたんに、兎と話して不
思議なことばかりで起こっているムーシコスですが、招待された宴とは
いったい何のことなのでしょうか。
「コンコン。ムーシコス様。ムーシコス様。お迎えにあがりました」
 静かで優しげな声が、毛布の中のムーシコスにささやきます。
「ファー、ん? なんだい? もう、朝なのかい?」
 ムーシコスは寝ぼけ声で言いました。
「まだ、真夜中です。しかし、そろそろ出ないと、宴に間に合いませ
ん」
「間に合わないって何にだい?」
「宴です。私どものクニークルスの伝言を聞いて、今夜のパーティーに
出席なさるとお返事されたではありませんか。ですからレオー様からの
ご命令であなた様をお迎えにあがりました」
「え? クニークルス君が言ったのは今日のことだったのかい?」
 宴と聞いて、ムーシコスはガバッと起きあがりました。そこには上品
そうな黒い背広を着た狐が、ムーシコスを見おろしています。
「お目覚めになられましたか。レオー様の使いの者でウルペースと申し
ます。
  以後、よろしくお願いいたします。あまり時間がございません。急ぎ
ましょう。
 それとも今日は都合が悪いのですか?」
「そのう・・・行きます!」ムーシコスは背筋をピンと伸ばして答えま
した。
「ではこちらへ」
 ウルペースは、そう言うと、音を立てずにドアを開あました。ドアの
外からは黒い風が吹き込んできます。家の中にいたずら盛りの子供の死
神が、部屋の中を暴れ回っていき、部屋は散らかり放題です。
 ムーシコスは、びっくりして外に逃げるように飛び出すと、今度は腰
を抜かしました。
「あわわわ、ほ、ほね」
 そこには、黒いどくろの形をした馬車がありました。どくろの馬車に
つながれた2頭の馬は、象牙色した骨だけの馬でした。
「・・・初めはどなたも驚かれます、では行きましょうか」
 ウルペースは、ムーシコスの驚きぶりを楽しむように言いました。言
われたムーシコスは自分の体が硬くなって動けませんでした。
シュウゥゥゥグゴォォォ! グギギガッガ!
 夜よりも暗い馬車の中から不気味な音がしました。
「ひぃぃぃ!」
 悲鳴を上げて、腰を抜かしたムーシコスを見て、ウルペースは何かい
いたげに肩をすくめました。ウルペースは、どくろの馬車のドアを開け
ました。馬車の中には醜い豚が、大いびきをかいて居眠りをしていま
す。ウルペースは、思いきり豚の頭を殴りました。
ボカ!
「ン、ガンガゴガ、ブーブー、痛いブー!」頭を抑えて豚はわめきまし
た。
「この馬鹿者。ムーシコス様が恐がっているではないか。わたしはもう
一人のお客様をお迎えに上がる。ヒュース、おまえはムーシコス様をご
案内しろ」
 さっきまでのウルペースとはうって変わって豚を怒鳴りつけました。
 無理矢理起こされたヒュースは、しぶしぶ馬車から降ろされ、その後
ウルペースはどくろの馬車に乗ってどこかへ消えてしまいました。
「・・・ああ、行っちゃった・・・あのう」とムーシコス。
「なんだブー」豚は不機嫌そうに答えます。
「あ、あの・・・僕の名前はムーシコスって言います。よろしく」
「俺、ヒュースブー」ぶっきらぼうな豚の答えが返ってきます。
「ヒュースブー?」
「違うブー! ヒュースブー」
「だからヒュースブーなんだよね」
「だぁかぁらぁ! ヒュースは名前でブー、ブーは口癖ブー」
「アハハ、ヒュースは名前で、ブーは口癖か。それで名前を言うときは
ブーがどうしてもつくってことか。おもしろいや」
「うるさいブー!」
「ごめんごめん。謝るよ。ごめんよヒュース君」
「まぁいいブー」
「じゃぁつれていってよ。これから行くところへ」
「ただじゃぁ、やだブー。飯を食わせてくれれば、話は別ブー。もう朝
から何も喰っていないのに、馬車の掃除をさせられて、腹がペコペコ
ブー」
「ご飯はこれから用意しないとないよ。宴まで時間がないんだろう。そ
んな暇はないよ。僕はどうやって宴に行けばいいんだい?」
「城までは3日はかかるブー。宴は今夜ブー。間に合わないブー」
「僕は魔獣レオーに招待されてウルペース君が僕を迎えに来たんたよ。
そして僕を連れていくように君が頼まれた。そうだよね。
 それに、僕を連れていかないと、ヒュース君はウルペース君にまた怒
られるんじゃないのかい?」
「そうだブー。おまえを連れていくのは面倒だけど、怒られて飯抜きは
イヤだから、おまえを連れていくブー。それじゃぁ背中にしがみつく
ブー」
「え? どう言うことだい?」
「いいからしがみつくブー!」
 ムーシコスは、ヒュースの言われるまま、汚い背中にしがみつきまし
た。ヒュースは、思いきり息を吸い込むと、鼻から一気に息を吐き出し
ました。息の強さは、ムーシコスの家を吹き飛ばしてしまうほどでし
た。
 ムーシコスとヒュースは、一気に東の方向に飛んでいきました。後に
残ったのは、ヒュースの鼻息で飛ばされて、元の形がほとんど残ってい
ない、ムーシコスの家だけでした。
「う〜ん。しまった、しまった。ムーシコス君に時間を教えていなかっ
た・・・あれ?」
 西の森の向こうから、あわてて走ってきたのはクニークルスでした。
クニークルスは、変わり果てたムーシコスの家を見て呆然としました。
「ギィィ・・・バタン」
「うひゃ! びっくりした。なんだドア君か、そうだ。ドア君ドア君。
いったいどうしたんだい?」
「それが・・・」
 ドアはクニークルスに、ウルペースが来てからのことを、一部始終を
話しました。
「う〜ん。まいったな。それではドア君。ムーシコス君はバイオリンを
持っていったかい?」
「いいや。そこにある」
「う〜ん。そいつは弱ったな。持っていってやろうか」
 クニークルスは、瓦礫の山からバイオリンを探し出しました。
「ん? 何だろう? このペンダントは」
 クニークルスが手にしたのは、銀色のペンダントでした。クニークル
スはちょっとだけ首をかしげて、バイオリンと一緒に届けて上げること
にしました。そして、クニークルスは西に向かって走り出しました。あ
たりは今まで事が嘘のように、月も星も東から西に傾き、すやすやと静
かに眠っていました。
 さて、クニークルスはムーシコスのバイオリンを渡せるのでしょう
か? そしてヒュースの背中にしがみついたムーシコスはどこに行って
しまうのでしょうか?

★★★ムーシコスとクニークルスの座談会

「わー、ボク、バイオリンをわすれちゃってるよq(//▽//)pきゃー」
 大丈夫、この私が届けてあげるよ
「だから心配なんだよ・・・(-_-;)ボソ」
 なんだって?
「いや、なんでもないよ( ̄ε ̄;)
 あれ・・・でもクニークルス君は西へ・・・僕は東へ・・・。
 どうなっちゃうの?」
 それは次回のお楽しみ。

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