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ムーシコスのバイオリン第4回
さて、クニークルスはムーシコスのバイオリンを渡せるのでしょう か? そしてヒュースの背中にしがみついたムーシコスはどこに行って しまうのでしょうか? ひゅぅぅぅぅガサガサ、ドガン! 「いてて、ゔぅぅ、重いよヒュース君」 周りには、太くて大きな木が、沢山ありました。運のいいことに、落 ちたところが湖の水辺で砂が軟らかく、クッションの役割をして、大き な怪我をすることはありませんでしたが、ムーシコスの上に、ヒュース がのしかかった形で落ちてしまったので、ヒュースの重さで体中が痛く てたまりませんでした。 「ごめんだブー・・・あら? ここはどこだブー」 「?」 「あの星があそこにあるってことは・・・反対側に来てしまったブー」 ヒュースは短い手で大きな頭を抱え込みました。 「と言うことは・・・どうするんだい! ヒュース君」 「どうもこうもないブー。腹が減ってもう何もできないブー」 ヒュースは、ドダンと倒れて大の字になり、そのまま眠ってしまいま した。ムーシコスはもう何かなにやら分からず、ヒュースの体を揺すっ たり、耳元で大声を出してヒュースを起こそうとしました。でも、 ヒュースは起きません。 「どうしよう・・・」 ムーシコスは、ヘナヘナと崩れるように座り込で、藍色の夜空を見上 げました。キラキラ光る星達が、夜空の鍋からこぼれて落ちてきそうで す。星達をじっと眺めていると、不思議と気持ちが落ちついてきました。 そうしていると、金や銀色の星達が合奏しているようです。特に夜空 の天の川の岸にダイヤのように輝く、白い琴星のかすかな琴の音色は、 ムーシコスの心を奪いました。 「きれいだなぁ。せめてバイオリンがあれば・・・」 ムーシコスは、星達のと一緒に合奏してみたいと心から望みました。 でもバイオリンはありません。すると、ムーシコス達が来た方から、何 かが飛んできました。それは流れ星のように、光りの線を引いてやって きたのです。それがやってくると目の前が真っ白になりました。気が付 くと、ムーシコスの手には銀色のバイオリンがあったのです。ムーシコ スは目をパチクリさせましたが、ゆったりと銀色のバイオリンを弾き始 めました。 曲のリズムにのって、風は踊りだし、草木は静かに鑑賞していまし た。星たちの七色の照明は、演奏者を照らしだし、そこは、ムーシコス のためのステージとなりました。 『ねぇ、君は誰だい? 僕のバイオリンじゃないね。 君は、さっきの流れ星と一緒に来たのかい? 君は、どこから来たんだい? 君は、誰のバイオリンなんだい? 君は、なぜ来たんだい? どうやってきたんだい?』 『・・・・』 ムーシコスは、いつものように無言でバイオリンに話しかけますが、銀 色のバイオリンは、何も答えてくれません。でも、無口なバイオリンは、 ムーシコスの思い通りの音が出ました。 曲が終わると、銀色のバイオリンは消えてなくなりました。 すると、木や湖の水がぼんやり光り出します。それは蛍の光のよう に、ふらふらと飛び回り、呆然としているムーシコスに吸い寄せられる ように集まります。光は琴星のような、小さいけれど明るい光の玉にな りました。 「こんにちは。バイオリン弾きさん」光の玉が言いました。 「こ、こんにちは」ムーシコスは挨拶をかえします。 「いきなりこんな形で出てきてびっくりしたでしょね。でも私たちには 姿は必要ないの。私たちは言ってみれば森そのものなの。だから姿が無 くても困らないのよ。綺麗なバイオリンを聞かせてくれたあなたにお礼 が言いたかったの」 「綺麗? 僕のバイオリンが? 本当?」 ムーシコスは不思議な力で小さな光に吸い寄せられました。 「ムーシコス! どこ行くんだブー!」 ムーシコスはヒュースの声を聞いてハッとすると、ぼんやりした光り はなくなります。そして自分は水辺にいる自分に気がつきました。湖の 水は今にも凍りそうでとても冷たく、ムーシコスは思わず飛び出しまし た。 「うわぁ。なんて冷たいんだ。この水は氷みたいに冷たいぞ」 「そうだブー、ここはどんなに寒くても凍らない水の湖なんだブー」 「なんだって? 凍らない水なんてあるのかい?」 「ここにあるブー。俺が小さい頃に聞かされた話だと、この湖に住む魔 女が寂しさでいろんな人を家に呼ぶんだけど、みんな溺れてその魔女に 会えないんだ。もし、俺がおまえを止めなかったらおまえは溺れたうえ に凍りついたブー」 「あ、ありがとうヒュース君。でも今の僕には何もできない。でも、も し、もしもだよ。僕がレオーの前でバイオリンを演奏して気に入っても らったときは何かご褒美をもらえるかも知れない。その時のご褒美で ヒュース君に何かお礼をしようと思うんだけど・・・・」 「そうかブー。その前に今夜の宴に間に合わなければご褒美もないのか ブー。でも今夜の宴に行くにはどうやっていけばいいんだブー」 「またさっきみたいに飛べないの?」 「もうそんな体力残ってないブー」 ヒュースは立っているのがやっとだと言いたげに方をすくめました。 「そう・・・・」 2人とも腕組みをして考え込んでしまいました。いくら考えてもお星 様が暇つぶしに夜空を舞台にダンスをするだけで、いい考えが浮かんで きません。あきれ果ててお月様も傾いてコックリコックリと居眠りをし ています。 そうしているとクスクス笑う声が湖の方から聞こえてきます。ムーシ コスとヒュースは周りを見渡しましたが、何もありません。 「ヒュース君、ヒュース君」 ムーシコスがヒュースの肩を叩きながら目の前の湖を指しました。 ヒュースは面倒そうにムーシコスの指す指の先を見ました。湖の水は生 き物のように動き出し、噴水のように水が噴き出し、水柱が立ちまし た。水柱は月明かりに照らされて青白く輝いていました。 「クスクス、おもしろい人たちね。見ていて飽きないワ」 「み、水柱がしゃべったぁ!」 2人はびっくり仰天して飛び上がりました。 「アハハ。ホントにおもしろい人たちだワ。どう? ずっとここにいな い?」 「イヤだブー。おれはうまい物を腹一杯喰いたいブー。ここはそんなに おいしそうな物がありそうもないブー。それにここは寒くてイヤだブー」 「ヒュース君、ヒュース君。確かにここはおいしそうな物なんかなさそ うだし、寒いけど、綺麗で静かなところじゃないか」 「そんな物腹の足しにならないブー。おれは腹一杯物を喰って眠りたい ブー」 「僕は好きなときにバイオリンを弾いていたい」 こんな感じで話が続き、2人とも話し合っている内に声が大きくな り、やがてムーシコスとヒュースは、お互いにソッポを向きました。 「おまえに話ても話すだけムダだブー」ヒュースは旋毛を曲げます。 「お互い様だね」ムーシコスも負けじと旋毛を曲げます。 「アハハハハハハ。ホントにおかしい。ホントに2人を見ていると飽き ないワ。どっちも似たようなことを言っているのに、2人とも全く反対 のことを言っているようなぞぶりなんだもの。アハハハハ」 水柱に大声で笑われて、ムーシコスとヒュースは水柱がいることと、 今の自分たちの置かれている立場を思い出しました。それでも2人はい がみ合うのをやめませんでした。 「不愉快だブー。こんな奴と一緒にしないでくれブー」 「こっちこそ!」 「アハハハハ。そんなに喧嘩するなら2人とも一緒にいなければいい じゃない。ムーシコス、あなたはレオーの宴に行きたいんでしょ? だったら私が宴に間に合う方法を教えて上げるわ。でも条件があるの。 私を宴に連れていって」 「そんなことならおやすいごようです。えーと、お名前を聞いていませ んでしたね?」 「ラクスよ。よろしくねムーシコス」 水柱はただの水柱から白い彫刻の女神様のような姿になりました。 「それでは、水を一口飲んでいただけるかしら?」 ムーシコスはラクスに言われるままラクスの凍らない水を両手です くって飲みました。その水はとても冷たかったのですが、今まで体のど こかに隠れていた力がどこからか現れたように感じました。 「な、なんだかすごく気分かいいよ。なんでもできそうだ」 「そうよ。ここの水を飲むとその人の隠れた力が引き出されるのよ。 ムーシコスあなたは小さな体にとてもすごい力を持っているわ。・・・・巨 人みたい。あなたならエクウスを乗りこなせるかも知れないわね」 「エクウス?」 「そう。見えない翼を持つ白馬、エクウスよ。力のない乗り手はエクウ スに食べられてしまうの。でも今のあなたならエクウスはあなたの思い のままよ。エクウスはそこにいるわ」 凍らない湖の奥に小さな波が立ち、どんどん波が大きくなり、波頭は 馬の頭となり、やがて馬の形どっていきました。馬は水の上に草原にい るように立っており、夢か幻のようにおぼろげなのですが、馬だと言う ことはハッキリ分かりました。馬は耳をひくひくさせムーシコスを見つ けました。 「ヒヒーン。ブルルル」 馬はいななき、ムーシコスの方に駆け寄ってきました。ラクスは子供 を見る母親のように暖かく微笑み、ヒュースはガタガタ震えているばか りです。馬はすいこまれそうな目でムーシコスをみつめ、自分に乗れと 言っているようでした。ムーシコスは答えを返すをようにふわりと馬に またがりました。 ラクスはうなずき、レオーの城の方向を指さしました。ムーシコスは ラクスの指した方向を向いてからラクスを見ました。 「僕はあなたを連れていく約束をした。でも僕はヒュース君を連れてい きたいのです」 「あなたがそうしたいのならそうしなさい。私はすでにあなたと共にい ます。たとえ姿形が見えなくても。あなたのいるところには私がいるの です」 「ありがとう。ラクスさん。行こう! ヒュース君。そうすれば約束は 守れるよ」 「あ、ああ。なんだかおまえが別人みたいに見えるブー」 「気のせいだよ。ヒュース君が僕のことをどう思おうが、僕は僕さ。行 くぞエクウス。おまえの見えない翼を見せてくれ」 エクウスは風のように森の中を駆け抜けました。それは、翼を持つ鳥 が風に乗って飛ぶようでした。ムーシコスとヒュースは風に乗ってレ オーの城へ向かいました。 ラクスがムーシコスの行った先を眺めていると、白い兎が走ってきま した。兎はバイオリンを背負いゼイゼイいいながら湖に着きました。 「ゼイハァ、ゼイハァ・・・・やあ、ラクスさん。こっちにムーシコスとい う名前の人間が来なかったかい? ゼイハァ、ゼイハァ・・・・」 「ついさっきまでここにいましたけど・・・・」 「う〜ん。やっぱり。このペンダントが、こっちの方に向かって光りだ すから引き返してみたんだ」 「戻ってきて正解ね。でも、ムーシコスはエクウスに乗ってレオーの城 に向かったワ」 「う〜ん。なんてこったい。せっかくバイオリンを持ってきたのにエク ウスに乗っただって? う〜ん。まぁいいや僕の仕事はムーシコスの宴 の招待だ。でもここまで来るとバイオリンを届けないと目覚めが悪いか らとにかく城に行ってみよう」 「いつも忙しいのねクニークルスさん」 クニークルスはラクスがの言葉は聞いてはいませんでした。すでにク ニークルスは城の方へ走っていたからです。 さて、クニークルスはレオーの城に付く前に、エクウスに乗ったムー シコス達に追いついて、バイオリンを渡せるのでしょうか? ★★★ムーシコスとクニークルスの座談会 「湖の風景、きれいだったよね」 そりゃそうさ。ムーシコス君は、僕たちの国へやっと到着始たんだか らね。 「へぇ、そうだったんだ。ところで、あの銀色のバイオリン。何だった んだろう?」 それは、この物語のキーワード。すんなり教えられないな。 「意地悪」 細かいことは気にしない。 第3回へ戻る 第5回へ進む 読むのをやめる(タイトルに戻ります) ホームへ戻る |