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ナイチンゲールの恋(2/3)






 小鳥は、長い間飛び続け、空の月は満ち欠けを何回も繰り返していました。暖かか
ったバラ園を去って、ちょっとだけ暑さが涼しさに変わってきた頃、くらいくらい緑
色の森の中に、魔女の住む家がありました。
 魔女は今よりも、もっと強力な魔力を得られるクスリをつくっていました。魔法の
クスリは大きくて黒い鍋の中でグツグツ言っています。魔女はそれをかき混ぜていま
した。
「ヒッヒッヒッヒッヒ〜、煮えてきたねぇ。後は恋するナイチンゲールの血の滴る心
臓さえ入れればできそうじゃて。
 ワシよ、ワシよ、禿ワシよ。死肉を喰らいし、死者の国の住人よ。かわいい小鳥、
春の歌い手、春の運び手、恋するナイチンゲールを取ってきておくれ!」
 そう呪文を唱えると急に黒い煙の玉が出てきて、煙の玉がボンと破裂しました。煙
がはれると黒い禿ワシが現れます。頭の毛が全くなくて頭が黒光りしています。
「グゥワァ、グゥワァ」
 不気味な鳴き声をあげた後、魔女の家を出ていきます。
「ヒッッヒッヒッヒッヒ〜、たのもしいねぇ、おや、禿ワシを待たなくてもかわいい
小鳥がやってくるよ!かなわぬ恋に悩むナイチンゲールがねぇ。ヒッッヒッヒッヒッ
ヒ〜」
 魔女の家にやってきたのは、パッセルと一緒にいた小鳥でした。
『ああ!魔女様!魔女様!あなたにお願いがあってここまで来ました。お願いです。
赤いバラのある場所を教えて下さい。』
「ヒッッヒッヒッヒッヒ〜、いいとも、いいとも。赤いバラは何処にもないが、白い
バラを赤く染める方法はないでもないぞ」
『ど、どうやって!?』
「お城のバラ園があるだろう?そのバラ園のバラに一滴だけ血をたらせばいいのさ!
 なに、簡単さ。刃物の代わりにバラのトゲで傷を付けてしまえばいいのさ。その小
さな胸にね。」
『□×△☆!?・・・』
 小鳥は、声にならない悲鳴を上げましたが、パッセルのことを思うとそんなもの恐
くもなんともないと感じました。
『あ、ありがとう魔女様!お礼は後でするわ!』
「はいよ。ナイチンゲール!ヒッッヒッヒッヒッヒ〜」
 不気味なくらい森に不気味な魔女の声がこだますると、カラスが一斉に泣き出しま
した。ナイチンゲールはカラスの鳴き声が恐くてたまりませんでしたが、パッセルの
ために急ぎました。
「禿ワシよ!先回りしてバラ園でナイチンゲールを待ち伏せしていなさい。いいかい。
小鳥は死んでも良いけど、血の一滴だってもらしちゃいけないよ。」
 禿ワシは遠くから魔女の声を聞いて、白いバラ園の方に飛んでいきました。
「そう。ほんのちょっとの血をこの鍋のクスリに入れてしまえば、このクスリはでき
あがるのさ。
 たった一羽の小鳥の心臓があればね。これさえできれば、もっと強い魔力が得られる。もう小生意気な細目のキツネなんかに口出しさせないよ」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 


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