マグニチュードπ 不幸中の幸いと募る不安
★★★ツイッターに呟いた、マグニチュードπ★★★
★★★
074-1 Aさんは、無事とBさんの口から聞けて、目頭が熱くなる。 #MAGNITUDE_P
074-2 Aさんの避難しているのは音楽室だった。音楽室は、PTAの会合などで
集会するときに使った場所だが、今は避難している人たちがぎゅうぎゅう詰めさ
れているようにいた。 #MAGNITUDE_P
074-3 音楽室にいる人たちの顔から希望や笑顔などなかった。当たり前といえば
当たり前だろうけど、その現実を目の前にすると言葉を失う。 #MAGNITUDE_P
074-4 Aさんを待つ時間はほんのわずかだったとは思うが、なんとも重苦しい雰
囲気にやけに長く感じる。 #MAGNITUDE_P
075-1 Aさんはか細く震えながら音楽室から出てきた。 #MAGNITUDE_P
075-2 無事が確認できてよかった。無事? そんなことはない。髪から全部濡れ
ていた。つまり、津波に飲まれたことを意味する。 #MAGNITUDE_P
075-3 Aさんは、とても無事なんてものじゃない。でも、命が助かったのだ。も
しかしたら助かっていないのかもしれないということが、自分の妄想だけで終わ
ったことはよかったじゃないか。 #MAGNITUDE_P
075-4 Aさんが大事そうにバックを抱えていたのが印象に残る。 #MAGNITUDE_P
076 Aさんをお寺につれていくことにする。少なくとも、ストーブがあるし、食
糧も期待できる。ここよりもずっといいのはわかりきっていた。 #MAGNITUDE_P
077-1 なにより、お寺には、職場の人も避難している。つまり、Aさんが知って
いる人がいることが心の支えになるだろう。 #MAGNITUDE_P
077-2 Aさんの手をとる。冷たく体が冷え切っているのを感じながら、この体温
がAさんの恐怖と不安の温度なのだろうと思いながら、階段をおりる。
#MAGNITUDE_P
078 Aさんに気の利いた言葉をかけられればいいのだろうが、多分、自分もパニ
ックなのだろう、大丈夫じゃないのは見ればわかるのに「大丈夫?」程度の言葉
しかかけられない。 #MAGNITUDE_P
079 階段を下りて、玄関までさしかかると初めて、Aさんが靴を履いていないこ
とに気がつく。なんとも注意力散漫な自分に腹が立った。 #MAGNITUDE_P
★★★
AさんとBさんの安否を確認できてほっとしたのは束の間だった。
絶望、不安、恐怖そんな入り混じった気持ちが小学校では漂っていた。
当然、AさんもBさんも同じだったのではないかとは思う。
Aさんの手をとった時の冷え切った体温は、まさに、恐怖と不安の温度といえただろう。
私は直接体験しなかった、恐怖、生き延びたは言いがこれからどうすればいいのかわからないという不安。そうしたものが入り混じったものがそこにはあるように感じた。
ともあれ、二人とも命が助かったということは、私にとっては希望の1つだった。
助からなかったかもしれないという不安は、すべての希望をかき消す勢いの暴風が心の中で吹き荒れる。
暴風といっても、心の中での話だから、自分以外の誰にもわからない。
そう、心の震度は、自分にだけしかわらかない。
心の余震は、未だ続くが、こうして希望をもちつづけることで、心の余震に耐えていくしかないだろう。
それでも、私は、私の心の中の余震は続く。
私自身以外、だれにも気がつかれることなどないだろう。
他人にとっては大したことがないのかもしれない。
それでも、私の心の余震に、気持ちが揺さぶられ、心がどんどん崩れていくのがわかる。
冷静さが徐々に遠のき、暗い闇が悲観的な漠然とした妄想の影が押し寄せる。
それに耐えるには、希望をもち、その希望に向かって行動するしかないのだろう。そして、こうして、当時の自分の体験をまとめ、表現することで、冷静さを取り戻すしかない。
ともあれ、まずは、安否確認によって命が助かったという事実で、希望が持てたのだ。
これから続く、マグニチュードπは、無駄な努力とわかりながらも、心が次々と折れていくことになる。
絶望。
もう駄目だ、
あきらめよう。
頑張っても無駄だ。
どうせ努力は空回りする。
努力なんて実らない。
何をやっても報われないだろう。
いろんなものを失った。
希望をもっても次々吹き飛ばされる・・・希望を持つこと自体無益に感じることすらある。
なにより、先が見えない・・・不安だ。
不安が苦しみと辛さを次々と生み出していく。
何度も何度もそんな思いに支配されかかる。
そうしながら、未だに惰性で頑張っている。無駄な努力であろうと、実らぬ努力であろうと、努力しなければ、何かがじわじわ腐っていくように悪化するのは目に見えているからだ。
震災前とは質の違う、リアルな不安は、徐々にさまざまなものがダメになっていくのが実感できる。
それが何かはわかっている。
さまざまな精神的な支えが失われたということだ。
ある人は自分の力で築いた財産。
ある人は愛する肉親。
ある人はかけがえのない仲間。
ある人は追憶を積み重ねた故郷。
ある人は国家が助けてくれるという期待。
形はちがえど、代替え品のない、そうした精神的な支えがことごとく失われたのだ。
それでも、希望をもって進むしかない。
人生なんてそんなもの。
絶望しようが、希望を持とうが、過去は変わることなどないのだから。
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