マグニチュードπ 生きていてよかったです
★★★ツイッターに呟いた、マグニチュードπ★★★
★★★ここから★★★
080-1 階段から降りると、瓦礫と泥と水たまりばかりだった。とてもはだしでいけるところ
ではない。だが、Aさんは靴をはいていない。 #MAGNITUDE_P
080-2 とりあえず、自分の靴をAさんにはいてもらい、靴下で外に出ることにする。
#MAGNITUDE_P
080-3 自分ははだしで、ガラスや瓦礫でけがをしないように慎重に進む。 #MAGNITUDE_P
080-4 Aさんの手を引きながら進むが、なんとも、水浸しの玄関がひどく冷たい。
#MAGNITUDE_P
081-1 小学校に訪れる人とすれ違いながら、小学校の校門をくぐる。 #MAGNITUDE_P
081-2 自分の母校だ。帰路は何度も通学した通学路だ。きのうまでなら、歩けば懐かしさを
感じるものだが、今日は違った。 #MAGNITUDE_P
081-3 小学生のころ通学した風景とそれほど変わらないのだが、やけに物さみしい風景に感
じられる。 #MAGNITUDE_P
082 道は凍り、石も転がり、靴下を通して冷たさと痛さを感じるも、心がマヒしているのか
、それほど痛くも冷たくもない。 #MAGNITUDE_P
083 震えるAさんの気持ちを紛らわしたいので、冗談を言うが、多分、冗談にもならないこ
とをいっていたかもしれない。当然、笑ってもらえない。なんとも、笑いのセンスのない自分
がもどかしい。 #MAGNITUDE_P
084-1 Aさんから、昨夜の話を聞けた。体育館での惨劇はやっぱり本当で、想像していた以
上だった。 #MAGNITUDE_P
084-2 体育館に避難していたら、あっという間に、水が入ってきて、浮いてきたものに必死
つかまってかろうじて助かったのだとAさんはか細く言った。 #MAGNITUDE_P
085 車もなくなりました。持っていたものも携帯も全部濡れてダメになってしまいました・
・・でも、生きていてよかったです。それがAさんの言葉だった。 #MAGNITUDE_P
★★★ここまで★★★
小学校に避難してきた人が体育館に集まり、そこへ津波が押し寄せた。
それを聞いたのは、震災当日だが、正直嘘だと思っていた。
もちろん、事実無根の虚偽という意味ではなく、1つの事実が噂が大げさになっただけだと思っていた、いや、そう自分に言い聞かせて、そう信じ込んでいたに違いないと思う。
そう、人は、真実や事実よりも、信じたいことを信じるものなのだ。
そして、今回の震災や津波がそうであったように、真実や事実は受け入れがたいものなのだ。
とはいいつつも、そんな自分の思い込みは小学校で目にした事実をもって、思い込みであることを思い知らされた。
体育館での惨劇は大げさどころか、その真逆だったと言えるだろう。
今でも、あがる話だが、なぜ体育館に避難したのか? 校舎の2階や3階に避難していればこんなにも犠牲者は出なかっただろうという結果論を主張する人が絶えない。
これは、私が仕入れた情報では、体育館に避難し、校舎に入れなかった大きな理由は、校舎が地震の揺れで壁に亀裂が入ったからだという。
つまり、校舎の倒壊の危険性を配慮した対処だという。
実際、2011年2月22日ニュージーランド南部地震でビル倒壊もあり、その危険性を頭をよぎるのは当然といえば当然だろう。
実際、野蒜小学校は、津波防災マップの浸水想定区域にも入っていないし、昨年、チリ地震の津波でも避難の実績がある避難所だ。
それで津波の危険性よりも、校舎倒壊の危険性の方が高いとみるのが妥当性があるだろう。
誰に責任があるという問題は通り越しているし、無理やり、人に責任があるとするならば、個人ではなく、野蒜という社会全体の責任だとしかいいようがない。
そもそも、津波の来る場所に避難所があること自体間違っているし、そこに避難すること自体間違っているのだから。もちろん、それは無意味な結果論にすぎないのだから、もう、ただただ自然現象の凄まじさに呆然資質するほかないのだろう。
ともあれ、そうしたさまざまな要素を含んで、体育館での惨劇が起きてしまった。
その惨劇のさなかにいたAさんの言葉は、少ない言葉一つ一つに、思いが込められていた。Aさんは一緒に仕事をしているわけだが、車も携帯電話もとても大事なものだということは知っていた。それを失った喪失感を思うと、言葉を失い、私自身、無念に重苦しい痛みを感じていた。
実際、私がAさんに野蒜小学校に一時避難するように判断したのだから・・・。
正直、私は恨まれても仕方がないし、その判断ミスについて今も後悔しているし、その時を思い出してはつらい思いをする。なにより、辛いのは私よりもAさんだ。
それでも、生きていてよかったという言葉が聞けたのは1つの希望でもあり、これから折れ続ける私の心の支えの一つになっていたのは確かだと思う。
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