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マグニチュードπ
  被災地で流したうれし涙



 

マグニチュードπ  被災地で流したうれし涙


★★★ツイッターに呟いた、マグニチュードπ★★★

★★★ここから★★★


130-1-1 震災から2日目。今夜も冷えるとのラジオからの情報。早めにハウスを閉める。保湿と保温。せめて、なんとか暖房がつかえればとは思うが、停電なのだから無理な話。
 #MAGNITUDE_P

130-1-2 震災で停電と断水は非常に痛い。ないものねだりをしても無駄。それでもないものねだりはしてしまう。弱気になるもできることからやっていくほかない #MAGNITUDE_P

130-2  息子が夕方、プリンを食べたいといっていた。ないものねだりのわがままではなく、震災前に、プレゼントでもらった冷蔵庫にしまっておいたとっておきのプリンだ。 #MAGNITUDE_P

131-1 このプレゼントはPTAでお世話になったAさんから頂いたものだが、息子はもらった時から食べたがっていたものでもある。 #MAGNITUDE_P


131-2 Aさんは、PTAでも一緒に活動したが、とてもいい人で、姉の同級生だということもあり個人的に好感をもっていた。 #MAGNITUDE_P


131-3 Aさんは、PTAの任期がきれて、今年度で本部役員から抜けるもすこし心苦しそうだったように感じるが、個人的にそんなことを感じる必要もないだろうと思っている。 #MAGNITUDE_P

132-1 心配なのはAさんの自宅が海の近くだったということだ。状況は想像もしたくない。 #MAGNITUDE_P

132-2 Aさんから、いただいたプリンを見ると、少し胸が痛んだが、それを息子や妻に悟られないようにできるだけ笑顔で、食べようと返事をしてみた。妻は、ちょっと自分の様子がおかしいと感じたようだが流してくれたようだ。 #MAGNITUDE_P

133  おにぎりが食べられるかどうかの震災の被災者がプリンだなんて贅沢だなとは思いつつ、停電が長期化すれば、プリンが痛んでたべられなくなるのは目に見えているし、そもそも、停電で冷蔵庫が使えない状況を考えれば、そろそろ食べなくちゃいけない。 #MAGNITUDE_P

134  プリンの容器は牛乳パックのような箱に入っており、本来なら皿にあけて、切って人数分に分けるものだが、電気も水もない状況だから、パックから直接ハシで食べることにする。 #MAGNITUDE_P

135 3人家族順番にプリンをハシですくって食べていく。いつ電気がくるのか、水がくるのかわからない不安を忘れさせてくれるくらい、特別においしかった。 #MAGNITUDE_P

136 日が暮れて暗い部屋の中、懐中電灯だけの光の中、一口ごとに、自分も妻も息子も、おいしいと言いながら、まわして食べた。 #MAGNITUDE_P

137  プリンを何口か食べると、息子がおいしいと言いながら泣きだした。 #MAGNITUDE_P

138  不安で、怖くて泣きだしたのかと思い、息子の肩を抱きしめる。 #MAGNITUDE_P

139 息子が泣いた理由は、不安だからでも、怖いからでもなく、うれしくて泣いたのだと言う。こんな状況でうれしいから泣くなんてそうそうできないことだ。その言葉に父である自分も泣いた。 #MAGNITUDE_P

140-1 そう、一つ間違えば、自分も妻も息子も無事でいられない可能性のあった大災害だ。それがこうして家族で生きて過ごせるだけでも幸せなのだ。 #MAGNITUDE_P

140-2  妻は、自分がいない間に、泣くときは、うれしいときに泣こうと息子に言い聞かせていたという。妻の強さ感動した。妻に感謝。 #MAGNITUDE_P

140-3 正直、不安と喪失感で折れかかっている自分の心だが、それが息子の成長と妻の強さに支えられていると思えた。 #MAGNITUDE_P

★★★ここまで★★★


 それにしても、あの時、家族で一緒に食べた時のプリンは忘れられない味だった
 もともと、美味しいプリンだったのだろうけれど、息子の涙は、息子の成長を感じさせた。
 一般に、涙は苦しみや苦痛、哀しみ、悔しさなど負の感情の表れなのだ。
 それが子供ならなおさらだ。
 それが、うれしさで涙が出るというのは、大人にとっては当たり前かもしれないが、子供でうれし涙はなかなかないものだ。
 それが、母親と約束したからといって、東日本大震災、いつ回復するかわからない停電と断水という、非日常という状況下で、うれし涙をみせたというのは、子供が成長していく過程そのものなのだということだ。
 もっとも、こんなことに感動するのは、にわかに心理学を学んでいるだけなのかもしれないが、息子が震災を通して、成長しているというのは、非常に頼もしいとも感じるし、それだけに、心が折れかかっていた親である私の心の支えになるというものだ。
 そんな成長を促した妻の強さにただただ感謝の一言である。

 

 
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