タイトルへ戻る  一つ戻る  次へ  (3/12)

 ●モビルスーツ搬入

 ケイス・ウィンターホース大尉は、MSのパイロットとして、自分の乗るM
Sを楽しみにして見に来るのは、年齢、経験問わず、どのパイロットも同じ
なのだ。
 MSデッキには忙しそうにはたらくメカニックに指示を出すアナハイム社
の制服を着た女性がいた。
「はい。アリシアさん。一通りのチェックは終わりました! 異常ありません。
 しかし、資料で見ましたが、実物を見ると頷ける性能ですね」
 若いメカニックの1人が女性に仕事の合間に話しかける。
「ええ。このMSなら、パイロットがどんな無茶をしても大丈夫よ。もちろん、
このMSならパイロットの技術なんかもフォローするでしょうしね」
「ほう? それは、MS戦はMSの性能ですべてが決まると言いたいわけだ
な?」ケイスはやけに低い声でアリシアに迫る。
「と、当然でしょ。確かにパイロットの技術は必要よ。でも、その技術はMS
の性能を引き出すためのものなんだから」
「フン! 実戦はパイロットの腕と経験がものを言うんだ。MSの性能じゃ
ねぇ」
 ケイスはアリシアに怒鳴りつける。大抵の者ならここで引き下がってしま
うところだが、信念の持つ女性は強い。アリシアは胸を張って、頬を膨らま
せケイスを睨み返す。
「いい加減にして下さい。
 アリシアさん。大尉を、いえ、私達を挑発するような発言は控えていただき
たい。
 それに大尉、相手は部下でも軍人でもない女性なんですから、怒鳴ったり
しないで下さい」
 カインが見るに見かねて仲裁に入る。ケイスもさすがにアリシアに怒鳴りつ
けたことに関しては非を認めているようである。
「そうですよ、大尉、女の子相手にみっともありませんよ☆ そんなんだと、女
の子にモテませんよ」 つい先ほどデッキについたのだろう。リュージがヘルメ
ット片手にケイスにウィンクしながら言った。アリシアはリュージの姿を確認す
るとその背中に隠れ、影からケイスにアッカンベーをする。
「この小娘!」ケイスは小声でアリシアを罵る。
「それより、大尉、これからMSの試運転するつもりだったんですけどね、どう
です? つき合いません?」
 リュージは傲慢な口調でケイスを挑発する。
「若造がぁ」
 ケイスは歯ぎしりをしながら呟く。
 カインはすでに戦線離脱をして肩をすくめて壁によりかかる。
「あ、みんないたの?」
 緊張感のない場違いなほど能天気な声の主はシンだった。シンの後ろには
ジャネットとダムス、ラグナがいる。
「えっと、みんなで新しいMSの模擬戦しようって話してたとこだったんだ。大尉
とサワムラ中尉もどうですか? あ、アベル中尉も」
「いや、私は遠慮しておこう。ちょうど、ウィンターホース大尉もサワムラ中尉も
模擬戦をする前の前哨戦が終わったところだ。3対3で数もあってちょうどいい
だろう」
「了解しました〜」
 シンの能天気な声と軽い敬礼で、殺気だった緊張感がまるでなくなりケイスと
リュージは少々興ざめしたようだった。

タイトルへ戻る  一つ戻る  次へ