●模擬線
そのころ、ホワイトフェザー隊では・・・
「これで、異論はありませんね」
カインは呆れ気味に確認する。ケイスとリュージは不服そうな表情は見せたものの、
黙っている。
模擬戦は3対3の団体戦でおこなわれることになった。より実戦に近い形で早急に
チームワークを育む事も意味あいとして強かった。
MSについてはすでに専用機が決定していたので問題はなかったのだが、ケイスと
リュージが不服だったのは、チーム編成であった。まだ、実戦用の小隊編成が決定
されていなかった事もあり、大分もめてしまったのは、ケイスとアリシアの意見の不一
致が原因だった。
もめたあげく、アリシアの提案の、くじによって決定されたのだが、その間、カインは
溜息をついたり、肩をすくめたりしていた。
その結果、以下のようにチーム編成が決まった。
ケイス・ウィンターホース大尉率いるは、リュージ・サワムラ中尉とラグナ・バナード中
尉。ケイスもアリシア側についたリュージも、ぜひとも対戦相手としたかったようだ。
ケイスは生意気な若造と小娘を懲らしめるため。リュージは老兵の鼻をあかすため
に。
シン・イチジョウ中尉率いるは、ジャネット・ラス中尉とアグ・ダムス少尉だった。
「えっと、大尉、お手柔らかに」シンは朗らかな口調でケイスに握手を求める。
「馬鹿野郎、手加減してたんじゃ訓練にならんだろう」眉間にしわを寄せるケイス。
「は、はぁ」
シンはただ、頭を掻いて戸惑った様子だった。ケイスはそんなシンを見て少しだけ不
満そうだった。
(これがあのイチジョウ大尉の息子なのか? 俺が1から鍛えなおさんといかんらしい
な)
ケイスはそんなことを考えながら、サーディガンのコクピットに乗り込む。
『準備はいいな! サワムラ! バナード!』
『へいへい』とリュージ。
『はい』とバナード。
『じゃぁ、行くよ、ジャネット、ダムス。準備はいい?』
『あいよ』とジャネット。
『準備OKだ』とダムス。
『では、ウィンターホース小隊はAポイントから、イチジョウ小隊はBポイントからスタート
して下さい。
ビームライフル等の火器の命中はコンピュータが判定してくれます。バルカン等の実
弾はペーイント弾を使用していますが、結構な衝撃なので気をつけて下さい。それと、
ビームサーベルの使用は禁止。できるだけ格闘戦は避けて下さい』
『おいおい、それじゃぁ、俺のMSが不利ですよ』
リュージが不平を言う。
『大事なMSです。実戦前に壊されたたまったものじゃありません』
カインは有無を言わさずリュージを押さえ込むと、リュージの乗る赤いZAIRは肩をす
くめる仕草をした。
(MSであんな仕草をさせるとはなかなかの技術ですね)
カインはふと、そんなことを思いつつ、模擬戦のGOサインを出した。
6体の新品のMSは順番に出撃し、その機動は暗闇の宇宙に6つの光の帯を描いた。