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 ●因縁

 一方、こちらは模擬戦のさなかだった。
『ちぃ! なかなか射撃が正確だ・・・・だが、予測できるんだよ!』
 ケイスはシンの連続して発射されるZRFのビームライフルを回避する。
『ラグナ! 援護しろ。リュージ! 一緒に来いつっこむぞ!』
『『了解』』
 ラグナとリュージは同時にケイスの命令に即答する。
 ケイス機、リュージ機は横に並び、並列に突撃する。ラグナ機は後方か
ら相手のシン機を中心した標的にビームライフルを撃つ。
 一方、シン機を先頭に、後方にサーディガンのジャネット機、ダムス機が
ついている。
『ジャネット、ダムス、僕の援護を頼むよ』
『あいよ!』とジャネット。
『いや、2対1では不利だ。俺も行く』とダムスが横やりを入れる。
『だめだ。ダムス。サーディガンでは、僕のZRFについてこれない』
 そんな通信をしている間に、ラグナ機の的確な射撃はジャネット機を撃墜し
たことを示すメッセージがコクピットにながされる。
『わるいねぇ、あたしは戦線離脱するよ』とはジャネットの通信だ。
 そうしている間に、ケイス機、リュージ機は押し迫ってくる。シン機とダムス機
はとっさにこの2機の固まりにビームライフルを撃ち込むが、ケイス機は上、リ
ュージ機は下に別れ、同時にダムス機にビームライフルと打ち込む。ダムスが
回避活動をせずそのままの位置にいれば2発のビームは当たることがなかった
のだが、この状況でそんなことは分かるはずもなく、回避したが故に、ケイス機、
リュージ機のビームライフルを喰らってしまう。
『うわぁぁぁぁ』
 コクピットにダムス機の撃墜メッセージが流れる。
『ほう、やるじゃねぇか。リュージ』ケイスはニヤリと表情を緩める。
『俺は無敵のリュージですよ☆』 
 二手に分かれたケイス機とリュージ機はそのままシンのZRFに接近戦を挑む。
ケイス機は派手にバルカンを撃ちながら突撃してくる。ZRFはシールドをケイス
のサーディガンに投げつけることでバルカンを防ぎ、下方から迫るリュージ機を
無視して、変形し、バナード機に突撃する。バナード機は、援護のために、その
場に立ち止まっていたため、シンの良い的となってしまったのである。
『うわぁぁぁぁ』
 バナード機はシンのZRFに撃墜のメッセージが流れる。
『フン、良いところに目を付けてやがる。
 リュージ! 奴に追いつけるか?』
『大丈夫です☆』
『よし、俺が援護する。お前のZAIRの性能を見せてくれよ』
『え? ビームサーベル使って良いんですか?』
『許可する。だがMSに傷を付けるな』
『む、無茶な注文しますね』リュージは全力でZRFに突撃する。

 ケイスのサーディガンはバズーカを構え、ZRFに標準を合わせる。
『・・・・』
 シン機はビームライフルを構えるが、ケイス機のバズーカ回避のためにリュージ
機に照準が微妙に狂い、はずれてしまう。
『何処を狙ってるんだ。まぁ、俺様に当てようって考え自体が間違えだけどな☆』
 ZAIRは予測限界速度を越えて、一気にZRFに迫り、背中のビームサーベルを
抜き放つ。
 バリバリバリバリ
 ZRFとZAIRのビームサーベルが交差し、2人のMSの動きが止まる。
 シンとリュージの間は時間は止まり、互いの思考が交差する。
(こ、これは!?)
(なんだ? おまえ)
 シンとリュージは、互いに光の剣を交えるのは初めてではないことを感じとる。
 実際の時間はほんの一瞬だったのだが、シンとリュージの間に流れる時間は遡
り、グリプス戦役の記憶を鮮明にさせた。
「おまえは」「君は」リュージとシンは交互に言い放ち同時に同じ言葉を異口同音に
言い放つ。
「「あのときの!」」
 すると、模擬戦中止のメッセージが各コクピットに流れる。
『イチジョウ中尉、サワムラ中尉。ルール違反です。後で私の所に来て下さい。ゆ
っくり言い訳を聞きましょう。大尉あなたもです』
 カインの無機質な一声に怒りが含まれていた。
 ルールとは、階級すらも超越して守らなければならないこと。それがカインの信念
であった。

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