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●エリザ・マーカサス
 エリザ・マーカサス。綺麗な金髪は短く、常に無表情だ。視線はどことな
く冷たく、他者を拒否するような空気を作っている。それゆえ、美人ではあ
るのだが、彼女に好感を持つ人間は少なかった。
 そんなエリザは、AE社の開発した新型テスト機、ZAIRブルーヴァージョ
ンのテストパイロットとして、ホワイトフェザーにやってきた。
 エリザは、ホワイトフェザーを一目見て、綺麗な船だと思った。上司から
は、軍艦と聞かされていたので、もっと無骨な船かと思っていたのだ。また、
船内にいるクルーも、どことなく軍人を連想させるよりも、セーラー服を着
る代わりに連邦軍の軍服を着ている民間船のクルーといった印象を受け
て内心驚いていた。
 だが、それだけにエリザは気が重かった。機械のような軍人ばかりなら、
他人とコミュニケーションを取る必要性もないのだが、ホワイトフェザーの
クルーといえば、今にも気安く話し掛けてきそうな雰囲気だ。
 エリザは他人とのコミュニケーションはできるだけ取りたくなかった。笑
顔で話し掛けてきても、その内心は薄汚い利己的な損得勘定で、近寄っ
てくる人間ばかりだからだ。
 他人はずけずけと、私自身の心の中に土足で踏み込んでくる。笑顔で。
 他人は好奇心を満たすために、あるいは弱みを握ろうと、私の過去を
探り出す。
 他人は独善的に恩を売りつける。後で私に恩を返してもらうためだ。
 他人は自分だけ得をしようと、自分だけ得をするうまい話を、私に持ち
かけてくる。
 他人は自分が寂しいから、私に話しかけて寂しさを紛らわす。
 他人は自分がやさしい善い人間だと信じたいから、私にやさしくする。
 他人は無愛想だと思われたくないから、私に愛想を振り撒く。
 他人は自分の思い通りにしたいから、私に親切にする。
 私は、そんな他人が嫌いだ。
 私はそんな他人を見ると、背筋が冷たくなる。
 でも、私の周りには他人ばかり。
 私は一人で寂しくないから、放って置いてほしい。
 私一人で十分やっていける。
 どうせ、死ぬときは一人なのだから。
 そう、放っておいてほしい。
 だから、私は他人にかかわらないようにする。そうすれば、そうすれば・・・。
 エリザの歩みは、ブリッジの前の扉で止まる。
「エリザ・マーカサス。入ります」
 中には3人の他人がいた。

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