●その名はA・G・A
シン・イチジョウ中尉はあくびをしながら、食堂へ入っていった。
既に、シン以外のMSパイロットは食堂にそろっており、いっせいに食堂に
ある画面を見ていた。
「あれ、どうしたの? ジャネット」
「し、黙ってあれを見ていて」
シンはジャネットに半ばしかられるように画面を見た。画面には白髪で白い
髭を蓄えた老人が写っていた。
「ダグラス・ベーダー」
シンですら知っているこの老兵は、凛とした声で演説をはじめた。
「我々、Army Golden Age、A・G・Aは、これより、連邦政府に宣戦を布告
する。
過去にあったグリプス戦役を契機に、連邦政府は旧世紀にあった腐敗した
政治を再現しようとしている。
彼らは自らの怠惰がエゥーゴという反乱分子を生んだのを自覚してるのだ
ろうか?
ティターンズは確かに、敗れた。だが、それは、本来の理念を忘れ、つまら
ない自尊心と虚栄心が自滅させたのだ。だが、われらA・G・Aは違う。
A・G・Aは、自らの使命と理念を自覚し、それを基に行動する。規律正しい
エリートによる支配こそ、安定した社会の礎となる。これは人類の有史以来
の事実であり、真実だ。
それを立証するためにわれわれは、実力行使で地球連邦政府を打倒し、
新たにA・G・Aによる理想社会を作り上げることをここに意思表明し、連邦政
府に宣戦布告する」
ダグラス・ベーダーによる演説が終わると、拍手の轟音が鳴り響く。
「始まったな。これでこそ、俺達がいる甲斐があるってもんだ」
とケイス。カインは「避けたいものですがね」といいながらうなずき、バナード
は右手の拳で、左手の掌を叩く。隣にいたルースは緊張した面持ちで、手に
していた紙コップを落としてしまう。
「なにボーっとしているんだ。シン」
そういってシンの背中かを叩くのはリュージである。
「あの老人の言っていること。間違っているよ」
「何が正しいかなんて考え取るひまは無いぞ。中尉殿」
ジュゼッペが会話に入る。
「それも、そうね。結局、あのおじいさんのやろうとしていることは戦争ですも
の」
「そういうことだ」ダムスがめずらしく、他人の意見を肯定した。
それと同時に、警報をBGMにしたアイアンホースは臨戦体制を整える指示
がでた。