●ホワイトフェザー隊、出撃
アイアンホースが出撃し、全速力でA・G・Aの艦隊を追跡した。ホワイトフェザー隊のアイアンホースは強襲策敵を目的として建造されたため、艦隊行動よりも、1隻による活動の方が有利である。
アイアンホースの艦長、リュウ・カノウは、他の艦を置いて、アイアンホース一隻のみで、A・G・Aの艦隊を追跡することを決断した。確かに、いかに速く敵と接触し、敵を足止めするかが今回の任務最重要の目的である。
とはいえ、目標のA・G・Aも、宣戦布告するのであるから、かなりの戦力を保有していることは自明であった。アイアンホースが高性能MS10機を搭載した艦であり、それを操るMSパイロットが乗っているからこそできた決断である。
「目標、補足。敵艦より、MSが出撃されました。その数・・・12」
オペレータの驚きを含めた声がブリッジに不安な空気をよどませた。
「MS出撃」
カノウはオペレーターから得られた情報に動じることなく、凛とした声が響く。
艦長の声は、さっきまで暗い雰囲気のブリッジを一気に鼓舞したように明るくした。
「フレイム小隊、ドラゴン小隊、ブレード小隊、スクランブルよろしいですか?」
オペレーターの声がスピーカーを通してMSデッキに響く。
ケイス・ウィンターホースはコクピットにある計器をチェックしつつ各小隊長に通信を入れる。
「全員、用意は言いか!」
「ドラゴン小隊、全員搭乗しました」とシン。
「ブレード小隊も問題ありません」とカイン。
ケイス・ウィンターホース大尉の声に、各小隊長が返事をする。
「フレイム小隊、ウィンターホース、行くぜ!」
ウィンターホースに続き、ジュゼッペ、ジャネットが続く。
「ジュゼッペ、OKじゃ」
「ジャネット、出れます」
「ドラゴン小隊、シン・イチジョウ、出ます」
シンの後に、リュージ、バナードが続く。
「リュージ、出るぜ!」
「バナード、行きます」
「…エリザ・マーカサス、…でます…」
「ダムス少尉、ルース准尉、準備いいな」カインは各自に確認後、操縦桿を握り直す
「カイン・アベル中尉、ブレード小隊、準備OK」
カインの後に、ダムス、ルースが続く。
「…アグ…ダムス、出る」
「グ、グレイ・ルース、い、いきまーす」
10機のMSが出撃すると、対する敵も12機と大量だった。
「ほほぅ、よくもこんなに寄せ集められたものだな」と不遜な笑みを浮かべるケイス。
「大尉、油断は大敵です。敵機はトーア。足のついている汎用タイプのようですね。フレイム小隊は右翼を」
とカイン。
「分かっている。ブレード小隊は、ネイルアーガマの護衛だ。ドラゴン小隊、せっかくの機会だ、切り込め。フレイム小隊が援護をする。エリザ、貴様はフレイム小隊の背後にいろ」
「大尉、私はMSのテストに…」
「うるせぇ、これは模擬戦じゃねぇ、実戦だ。死にたくなければ指示に従え」
ケイスはエリザに一括した。
(同感だな)カインは正直なところ、エリザの出撃は反対だったのだ。