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●暴走
 一方、ネイルアーガマへ帰還中のジャネットとエリザは、そこで立ち往生
していた。エリザの搭乗するZAIRが突如暴れ始めたのだ。
「エリザ、エリザ!」
 ジャネットはエリザに呼びかけつつ、暴れるエリザを止めようと、羽交い
絞めにする。しかし、MSのパワーの差でジャネットは振り払われる。
「人がたくさん死んでいく、熱い、冷たい、苦しい、痛い、息苦しい、寂しい、
もう一度あの人に…逢いたい…もうやめて、私に入ってこないで・・・」
 エリザはこの宙域での戦闘で死んでいった人間の悲痛な叫びを感じ取
り、同調しているのだ。
 ついにエリザの搭乗するZAIRはジャネットを突き放し、ビームライフルを
乱射する。ジャネットのサーディガンは防御するのがやっとで、誘爆はしな
かったものの、ジャネットのサーディガンはジャネットの操作に応じることが
出来なくなっていた。
「だめ、私に入り込まないで、いや。こんなところにいたくも無い!」
 ZAIRは蒼い閃光となって、地球の中に溶け込むように飛んでいった。

「ジャネット、何が起こった?」
 戦場の中、カインは、帰還しているはずの2体のMSの動きの異常にいち
早く気がついた。
「エリザが、暴走・・・したみたい・・・」
「なんだって、状況は?」カインはオペレーターに回線をつなぐ。
「エリザのZAIRが、ZAIRが・・・暴走して・・・大気圏内に入ります!!!」
 冷静沈着が求められるオペレーターだが、絶叫に近い声をあげて報告する。
「ばかな! ZAIRには大気圏突入する機能などないぞ」
  絶望に満ちた台詞を吐くカイン。
(あるとすれば、ZRFしかない。だが、ZRFは単機でのみの大気圏突入しか
できない。エリザは救えないのか・・・)
 エリザを救う手立てを暗中模索するカインに無情な通信が入る。
"全機、帰還せよ"・・・と。
 正しすぎる判断だ。とカインは思わざるを得なかった。戦争において、命は
消耗品でしかない。という冷たすぎる現実がそこにはあるのだ。
 カインが宇宙を見ると、A・G・Aの後続部隊が次々と大気圏に突入していく。
 ウォーホースに撤退の兆しはない。
「・・・このまま、A・G・Aを追撃というわけか」
 カインはウォーホースへ帰還する。
 この時、カインは気がつかなかった。帰還せずに、絶望的なエリザの登場
するZAIRに向かう閃光を。







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