●それぞれの朝 リュージ・サワムラ中尉の場合
「いや、しかたなかったんだ」
「・・・なるほどね。それで、バックウェポンシステムを破壊したわけね。私
の大事な」
「馬鹿言うなよ、そうでもしなけりゃ、やられてたんだ」
「いいえ、ZAIRの機動力、回避力、そしてなにより、リュージ、あなたの天
才的な操縦能力をもってすれば、バックウェポンシステムは破壊しなくても
すんだはずよ」
「そんな、天才だなんて、ほんとのことを言うなよ。照れるぜ」
少しも照れずにそう言い放つリュージ。どうやら、自分に都合の悪い言葉
は耳に入っていないらしい。
「誉めちゃいません!
ただでさえ、バックウェポンシステムは、コストがかかるといわれて、敬遠
されがちなのよ。
いい?
確かにバックウェポンシステムは見た目上コストがかかるかもしれ
ない。でも・・・」
「それを前提としたMSの開発を行えば、低コストのMSで、必要に応じて装
着することで、全体的なコストダウンが計れる。だろ。
耳にたこができるくらい聞いたよ。
だが、俺はできれば、おまえの大切なバックウェポンシステムは壊したくな
かったよ。だが、あの状況で、ああしなければ俺は確実にやられていた」
「わかっているわよ。そんなこと!
何度もシュミレーションしたもの。
むしろ、あんな活用で、あの危機を脱出したのは奇跡よ。
でも・・・でも・・・」
「悔しいんだろ。見た目は大失敗だからな。
だが、俺はおまえに助けられたと思っているぜ。
大丈夫だ。俺が名誉を挽回してやる。
この無敵のリュージ様がな。絶対だ」
●それぞれの朝 ラグナ・バナードの場合
ラグナ・バナードは愛機のZAIRの調整をしていた。
「お、ラグナ、せいがでるな」
「兄さん。昨日の出撃で分ったんだけど、やっぱり、地球と宇宙では、勝手が違
うって実感したよ。照準も微妙に狂う」
「地球の重力という奴だな。確かに、地球って言うでっかい物質は、空間を歪め
るって20世紀の科学者が言っていたしな」
「アインシュタインだね」
「ああ、だが、ミノフスキー粒子の発見以来、摩擦と重力についての問題は解
決できたけどね」
「でも、やっぱり地球の摩擦は大きいね」
「ああ、だからこそ、MSのバーニアを調整しないといけない。いくら汎用性の
高いMSとはいえ、やっぱり、地球と宇宙では使い分けないといけないのだろ
うな」
ラグナは兄の言葉に無言で頷いた。