タイトルへ戻る 戻る 次へ (8/13)

●ブレッダ
 流氷の浮かぶ海の奥に漂う巨大な潜水艦がある。
 その潜水艦の会議室でカイ達は作戦の最後の打合せを行っていた。
「ズサンスキーがバックランド基地に潜入成功の合図と同時に陽動部隊が出撃する。
A・G・Aと陽動部隊が交戦中にズサンスキーがロケットのプログラムを変更。宇宙に
いるネオ・ジオンの同志が回収。可能ならバックランド基地に存在するA・G・A戦力を
殲滅する。いいな」
アルベルトとエイシアらネオ・ジオンのMSパイロット達は、人形のように無表情で頷
いた。
「成功を祈る。
ジーク・ジオン」
 カイが静な声で言う。
「ジーク・ジオン」
 ネオ・ジオンの兵士たちもそれに続いた。作戦の成功を誓って。

 会議は終わり、カイとアルベルトは潜水艦に搭載されたMSたちを見上げる。
赤いMSブレッダ。中世ヨーロッパの騎士を連想させるジャジャX、MSの巨人を連想
させるGV。
「いつに無く過激な作戦だな。何を焦っているんだ?」
アルベルトが話を切り出す。
「シャァ大佐の決断により、時代はオレの予想を上回る勢いで変ろうとしている。モタ
モタしていられないんだよ」
「ワタシはまた、あれがキミを熱くさせたと思ったよ」
 アルベルトは視線で、ブレッダを指した。
 カイは苦笑しながら否定も肯定もしなかった。
「とにかく、オレは利用できるものは何でも利用して、進む。ついてこれない弱者は置い
て行く」
「それがワタシでも?」微笑を浮かべるアルベルト。
「もし、ついてこれないならそうだ。だが、それは万が一にでもありえない」
「当然だ。ワタシはキミがいるから存在している。
 初めて出会った時からそれはワタシは知っていた。
ワタシは運命というものは信じないが、カイ、キミと出会ってしまったからには、こうしてキ
ミについて行くのは、月が地球の衛星軌道を回っているくらい必然的なことなんだ。
 それが、運命というなら、ワタシと君が行動をともにするのは運命に他ならない」
 カイはアルベルトの言葉が聞こえないようにブレッダを見上げていた。
 実際、聞こえていなかったのか、聞こえていないふりをしていたのかは判断の難しいと
ころだった。
「あー、またカイとアルベルト、男の友情ごっこしてる。
 ワタシも入れてよ」
 エイシアとアルベルトの笑顔に、カイの顔からわずかに笑みがこぼれた。



タイトルへ戻る 戻る 次へ