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●決戦
 そうして、ドラゴン小隊とブラック小隊は出撃した。
「イチジョウ中尉、分かっていると思うが、敵はおそらく、この前の赤い奴等
だろう、援護するから、ドラゴン小隊を突っ込ませろ」
「了解」
 シンのZRFの加速と同時に、リュージ、バナードのZAIRも加速して戦場を
駆け抜ける。
「よし、ブラック小隊はドラゴン小隊の援護だ」
「「了解」」
 戦場はA・G・AのMSと小型MSが入り乱れて戦闘を繰り広げていた。
 ブラック小隊はドラゴン小隊の進むコースにあるMSを次々と撃破して行く。
 するとA・G・Aの陣営から1機のMSがケイスに向かってくる。
「あのMSは・・・ゲイツ!」
「ケイス! 落ち着け!」
 ジュゼッペがあらぶるケイスをいさめるが、その時にはすでにケイスのサー
ディガンとゲイツのビームサーベル激しく衝突していた。
「奇遇だな。ケイス。お前にしては消極的な作戦だと思っていた。
なんの効果があるか知らないが、あの戦闘機を進めるのが目的だったとは気
がつかなかったぞ」
「ふん、目が衰えたな。あれが戦闘機? 大気圏の戦闘でおまえ達がてこずっ
たガンダムだよ」
「ふん、そうだとしても、たかが3機最前線に送ったところで、もう手後れだよ。
こっちの目的は、もう終わったも同然だ。
またこっちの勝ちだ」
「ぬかせ!  勝負は最後までわからんぞ」

一方、ドラゴン小隊はA・G・Aの防衛ラインをことごとく破っていく最前線のMS
の小隊のところまで追いついた。
 と、そのとき、ガザタイプのMS、ガザWが振り返りざまに、ビームを放ってく
る。
「シン、リュージ、ここは俺にまかせて、先に行け」
 バナードはにガザWに正面から突っ込むが、ガザWはそれを高速でかわす。
「今のはほんの挨拶代わりだ」
バナードはそうつぶやきながら操縦桿を握り締めていた。

 シンとリュージが追うMSは数日前に遭遇したジャジャXとブレッダだった。
「シン、赤い奴はおまえに譲るぜ。どうやら、あのギャンもどき。
 懲りずに俺様と張り合うつもりだ」
「分った」
 シンとリュージは言葉を交わすとそのまま二手に分かれ、それぞれの相手に
向う。
「この前は不覚をとったが、今度はそうはいかない」
 ジャジャXのパイロット、アルベルトが言う。
「何度やっても同じだよ。この無敵のリュージ様が相手じゃな」
「ぬかせ!!!」

 リュージとアルベルトが戦闘に入ると、蒼いガンダムZRFと白銀の氷原を赤
く染めるブレッダがBサーベルを重ねていた。
「なぜだ、なぜ核を使おうとする!」
「おまえは、あの時の・・・。人は見かけに寄らないな。ガンダムのパイロット」
 微笑を浮かべながら応えるカイ。
「とにかく、核兵器を利用する考えなんて捨てるんだ!」
「我々には武力が必要だ。おまえには分かっていない。
 増えすぎた人口をコロニーという収容する箱だけ提供して、後は何もしない
怠惰な連邦政府のやり方を。
 シン・・・おまえには聞こえるはずだ。同じ人の身でありながら、宇宙で生まれ、
育ったというだけで差別され、地球に住む一部の無能な支配者の贅沢な暮らし
のために、宇宙という過酷な環境を生き抜いてゆかねばならぬ人の苦しみの
声を」
「そんな声なんかより、戦争で死んだ人や苦しむ人たちの声の方がよっぽど大
きい!
 おまえの使おうとしている核は、そんな人たちをふやすんだぞ」
「それが戦争だ。今、だれの決起しなければ連邦政府がおためごかしのエゴ丸
出しの政策ばかり永遠に続く。
 弱者だからといって、甘えていてはなんにもならないのだ。苦しみから抜け出
したいのなら、自分の力で切り抜けるべきなのだ!
 それができない弱者は強者に切り捨てられるしかない」
「ちがう。力のある人は、弱い人を守らなければならないんだ。
 それに、争いは、お互いの誤解で生じるんだ。話し合えば分かり合える。自分
から争いを選択するのは間違っている」
「ならば、エゴの塊の連邦政府の無能な支配者どもを説得してみろ!
 争いは、人間がエゴを持つ限り、生じる現象だ。
 そして、エゴは正義という偽善で正当化される。独善を正当化された人間ほど
タチが悪いのだ。
 だから、戦争は人類の歴史から無くならん」
「確かに、人はエゴの塊かもしれない。でも、みんな話し合って、お互いを助け合
おうっていう・・・同じ人間だっていう意識をもって理解し合えばきっと分かり合え
る」
「ふん、人類はみな兄弟といいたげだな。だが、それは偽善だ。人間は結局、利
害が一致した時だけ協力し合えるエゴの塊にしか過ぎず、仲間だ、友だ、恋人だ
といっても、それは寂しさを紛らわす欺瞞に過ぎない」
「違う!
 君は考えたことが無いのかい? 人がなぜ孤独を感じると寂しいと思うのか?
 それは、人が共感できる仲間が必要だからだ。
 それがなくなってしまえば、人間ではなくなってしまう・・・」
「フン、いまいましい。
 そのとおりだ。すべての情を捨て去ってしまえば、鬼になるしかない。そして、こ
の現実を乗り切る為には鬼が必要なのだ!
 強くなろうとしている弱者のために、無能な権力にしがみ付いた、真の弱者を倒
す為に、俺は鬼になる。
 この戦争は必要悪だ!」
「違う! それは間違っている!
 きみには分かっているはずだ。それが間違いであることを。結論を焦って出して
なんになる」
「だまれ! 昔の俺よ!」
 ブレッダは強引にビームサーベルでZRFをなぎ払い、ZRFはそのまま凍り付いた
山に叩き付けられた。

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