●バックランド基地
ルースとアリエスは、狭いサーディガンのコクピットに乗っていた。二人が、
バックランド基地に到着すると、着陸地点で、一人の兵士がサーディガンを
マシンガンでむかえ撃っていた。
「な、なんなんだ?」
ルースの戸惑いは当然だったかもしれない。
マシンガンのみの武装でMSに正面から迎え撃つなど正気のさたではな
かったのだ。
「くたばれ! 連邦の犬め」
マシンガンを撃つのは、バックランド基地に潜入していた、ネオ・ジオンの
スパイ。ズサンスキーだった。
ズサンスキーは、ルースが味方だと勘違いして、核弾頭を乗せた輸送ロ
ケットの自動発射をアップしてしまったのだ。
マシンガンの放つ弾丸は、ことごとくサーディガンの装甲をはじくが、偶然
にも サーディガンのメインモニターに弾丸が命中した。
ルースの目の前のモニターが消え、見えなくなったルースの顔が青ざめる。
「な、なんだー」
ルースは手元にあったビームライフルとトリガーを引き、ビームライフルを
乱射した。
「やめなさい、ルース」
アリエスに平手打ちを受けて正気に戻る。
「あ・・・、すみません」
「謝る暇があったら、自分のミスのけじめをつけなさい。今の攻撃で、A・G・A
は連邦軍を装うつもりが、正体が見破られたことを知ってしまったのよ」
「す、すみません」
「もう、いいわ」
アリエスがコクピットを開くと、ズサンスキーが弾切れのマシンガンを投げ捨
て、懐のピストルを抜き、パイロットのルースをねらって撃ち放った。
パイロットを殺してサーディガンに乗って逃亡しようとしたのだ。
バァーン。
流れ落ちる鮮血。
コクピットのゆかは赤い水溜りができる。
弾丸が赤く知に染めたのは、ルースではなく、アリエスだった。
「き、貴様!」
今度はルースはズサンスキーに銃を撃ち、ズサンスキーの右足に命中する。
ズサンスキーは声にならない悲鳴をあげて、足を引きずり、建物の影に隠れ
てしまった。
「ルース、お願いがあるの。ロケット制御ルームへ行って赤いコードを切って
あのロケットを止めて」
「でも・・・」
「私なら大丈夫。こうなったのは私のミスよ。それよりも、核の犠牲者を出さな
いためにも」
「わ、わかった」
ルースはMSから降りようとしたとき、銃弾の雨がサーディガンに降り注いだ。
見れば、バックランド基地には、ルースとかわらないくらいの青年が基地を守
っているのだ。
ルースが核による犠牲者を出したくないという信念に基づいて行動している
ように、彼らもA・G・Aなりの信念によって動いているのだ。
ルースが足止めされているその時、A・G・Aの青年達はルースの背後から
撃たれたビームライフルによる射撃で吹き飛ばされた。
「え?」
「ルース少尉。自分だけ正義のヒーローを気取られてもこまるんだよ」
「ダ、ダムス少尉」
「貸しだ。どうせ、おいしいところをもって行ける情報は彼女からもらっているんだろう」