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相対ゴブリン 00

作品紹介

 僕は何のために生まれてきたのか?
 物心ついたころから、僕はずっと問いかけてきた。
僕の母は笑いながら、「何故かしら? わからないわ」と反問するだけで、
僕の父は、「それを見つけるために生まれてきたのさ」という。
 先生は人間として自律するためだという。
 大企業の経営者は、社会で成功するためだという。
 科学者は、法則を発見するためにあるという。
 僕はなんとなく、父の応えに納得できるかもしれないような気はしたが、
それ以上に違う気がした。
 そこで、兄に相談したら、哲学的には、母が正しいという。
 ちょっとまって。
 母は反問するだけでなんにも応えていないと僕は感じた。
 兄は「フフ、自分で考えれば分かるものさ」と笑うだけでお茶を濁して、
占星学の本に手をかけた。

 僕はちゃんと、自分で考えている。
 考えれば分かることばっかりじゃないじゃないか。
 でも・・・
 それは本当に自分で考えている・・・の?

《マリはなにしてるのだ?》
 僕の名前を呼んで、僕の思考に割り込んできたのは、めぐたんだ。
 僕と同じクラスの女の子で、自分のことをめぐたんと呼び、クラスメー
トにもそう呼ばせている。これは、僕の思い込みかもしれないけれどニッ
クネームというのは、自分で名乗るんじゃなくて、他人からつけられるも
のなんじゃないかと思うんだけど、違うのかな?
 それはさておき、めぐたんは、ショートカットでボーイッシュな外見だ
が出るところはきちんと出ている。
 だまっていればかわいいと男子からの評価は、しゃべり始めると、天然
ボケぶりと誰にでもずけずけ物を言うところだろう。
 それがまた、たまに人の心を見透かしたことを指摘するときがあって、
クラスの男子は、めぐたんのことをひそかにおそれている。
 各言う、僕は、生物学的には女であり、外見は普通、成績も普通、性格
も普通で、内向的でいわゆる影の薄い女子生徒ということになっている。
《おい、マリ、聞こえているのか?》
「あ、いや、聞こえているけど・・・」
《だったら、返事をするのだ》
 めぐたんは、ほほを膨らませ腰に両手を宛てて僕を叱りつける。
 まったく、マンガチックで、ラブコメならば、これは恋愛の一コマになり
えるのだろうが、現実はそうは甘くない。
 各言う僕は、頭の中で考えているとさも雄弁に語れるが、いざ、人前で話
すとなると、口下手の部類に入る。
 こうなると、無難な返事しかできなくなる。僕は無難に「うん、わかった
よ」とめぐたんにうなづいた。
 そうそう、大抵の人間は自分の頭の中では饒舌になるけれど、他人に伝え
るために言葉にしてみると口下手になるものだというのは、花屋さんが言っ
ていたっけ。
 たしかに、僕もそうだ。
 多分、他の人もそうなんじゃないかと思う。
 花屋さんというと、普通、きれいなお姉さんなのだが、僕の知っている花
屋さんは哲学と占いをこよなく愛する作家志望のおじさんだ。
 おじさんといっても、本人は30代だからおじさんではないと言い張るが、
僕にとっちゃ30代も50代もおじさんだ。
「あ、うん」僕はあいまいにうなづいた。
《よし、じゃぁ、心して聞くのだ。
 今日のホームルームの話、どーおもうのだ?》

 
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