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相対ゴブリン 03

「父は仕事ばかりで、しばらく帰ってきていないけど、こことは違う帰
る家があるから。
 母は、IT企業の社長で、出張続き。
 母は、生活費と家政婦を雇えば、私のことは何とかなると思っている
みたいね」
 まぁ、カオリさんはしっかりしているしから、両親も安心するのは仕
方ないような気もしないでもない。
《そんなの、やっぱりおかしーのだ》
「ありがとう。
 もともと、私がいい成績をとるのは、親を安心させるためじゃなくて、
親にほめられたかったからだって最近気がついた。
 スポーツもそう。
 もちろん、競争に負けたくないからっていうのもあったけれど、誰に
ほめられるよりも、両親にほめられるのがうれしかった。
 でも、いい成績になるのが当たり前だって思われ始めたとき、今度は、
先生に評価されるようにしたの。
 先生に限らず大人って案外単純なのよね。
 自分のいうことに従えばいいって言うみなに・・・」
 それをいってしまえばおしまいだけど、ある意味、シンリだとはおもっ
た。
 うがった見方をすれば、子供を自分の言いなりにする。
 それが教育だといえるだろうし。
「だから、大人が私に望むことはこなしてきただけ。
 それだけで、先生は私を評価して、その先生の評価で両親は私を観てく
れた」
 ・・・・。
 結果しか見ない親。
 子供にとっては、それは一種の不幸といえるかもしれない。
 だけど、子供に親は選べない・・・どんな親でも親は親。
 そして、子供は親に関心を持ってほしいものだ。
 うん。
 子供の僕がそう思うんだから、間違いない。
 そんな風に、僕が心の中でうなづいていると、カオリさんの肩に小さな
影が見え隠れした。
 まさか・・・哲学モンスター?
「どうしたののだ? マリ?」
 僕の表情をみためぐたんが首をかしげて質問してきた。
 まさか哲学モンスターのことを話をしても信じてもらえないしこまった
なぁ。
「その、めぐたんは、ゴブリンってモンスター知っている?」
「知らないのだ。
 キングコングなら知っているのだ」
 ますますだめだ。
「ゴブリンって、ゲームとかで出てくるモンスターのこと?」
 意外なことにカオリさんがゴブリンのことを知っていた。
 僕はすかさず、カオリさんの言葉にうなづいた。
「そのゴブリンがどうしたの?」
「えっと・・・」
 まさか本人に哲学モンスターがとりついているなどとはいえない。
 だいたい哲学モンスターというのは一般的には知られていない。
 なぜなら、花屋さんの造語だから。
 なんとも、この造語というのは、造語をしらない人に説明するのはなん
とも難しい。
《わかったのだ。
 コンブリンは海藻のことだな!》
「ちがうよ、めぐたん。
 その・・・僕の言っているのはゴブリン。
 多分、信じてもらえないけれど、カオリさんには、相対ゴブリンがとり
ついているんだ」
 もう、僕は破れかぶれで叫ぶように言った。

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