相対ゴブリン 02
《なんで、文化祭にでないというのだ? みんな楽しみにしてたのだ》 「そうかもしれないけれど、みんなの意見はバラバラよ。 それじゃ、できるものもできないわ」 凛としたカオリさんの言葉もまた僕にとっては魅力的だ。 ああ、この場に居合わせてよかったと、僕は心の中でうなづいた。 《だったら、それをまとめられるのは、カオリじゃないか》 「それじゃ、話し合いの意味がないじゃない。 みんな、自分では決めくないから、私にその責任を押し付けているだけ よ」 そいう表現もできるかな。 ただ、多くの人は押し付けている意思はない。 それは、責任を押し付けるということになるのだろうか? そんな疑問をふと頭の中をよぎった。 《そんなことないのだ。 みんなカオリのことを信頼しているからなのだ》 「そんなのいいわけよ。 みんな勝手なことをいっているから、みんなの勝手なことを、いって、 矛盾させているじゃない。 まとめる方の身になってちょうだい」 《カオリ・・・ なにかあったのか?》 めぐたんの質問に、カオリが静かにうなだれた。 たぶん、めぐたんの質問にうなづいたんだとは思う。 めぐたんとカオリさんの組み合わせは見た目にはまったく不釣合いに 見えるけど、この会話を聞いてなんとなく、この二人が親友という関係 が結ばれているのがなんとなくわかったような気がした。 《まぁ、ここではなんだから、カオリんちで、お茶とおやつを食べなが ら話を聞くのだ》 なんともずうずうしいなと思ったが、カオリさんがやっとクスリとわ らったのを、僕は見逃さなかった。 ・・・と、めぐたんのことをずうずうしいと思いながらも、僕もカオ リさんの家に一緒に上がりこんだのだから人のことは言えないのだろう。 カオリさんの家は大きな家で、とても片付いていて清潔感があった。 ただ、なんというか、展示住宅のようで、どこかしら生活感がない。 《おお、このプリンはおいしーのだ》 「それはよかったわね。 たしか、叔父さんがお土産で持ってきてくれたの。 ちょうど、お父さんとお母さんの分が余っていたから・・・」 《やっぱり、カオリのお父さんもお母さんもしばらく帰ってきていない のか?》 な、なんと! カオリさんにはそんな家庭の事情が・・・って、お金もちなんだから きっと長期出張とかなのだろうか? 「ああ、真理さんはしらないよね。 今、私の両親は別居中なの」 ええ? でも、そんなの普通、両親のどちらかがいるものじゃないの か? どうも、頭の中で、整理がつかない。 《まぁ、そこが、カオリの家庭の事情なのだ。 お父さんは、トーシカというのをやっているらしいが、鹿を捕まえる のはたいへんなんだろうな。 忙しくて家に帰ってこないみたいなのだ》 「投資家よ、めぐたん。 株式やとかに投資する仕事をしているのよ」 カオリさんはやさしくめぐたんに説明をし、メグは笑顔でうなづいて いたが、僕にはわかる。 メグは絶対理解していないことを。 カオリさんも、それをわかっていたらしく静かに笑った。 |
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