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ソクラテスの迷宮 00

1990年11月、秋晴れ。
 なんでも、10年後に悪魔の大魔王が降ってくるらしいが実際どうなんだ
ろうか。
 ともあれ、10年後なんて想像のつかない長い時間に思える。
 僕の固有名詞は園縄真理(そのなわ まり)。
 生物学的にいえば、性別はメスなので、女子高生というところになるのだ
ろう。
 女子高生と言えば、お年頃なので、外見や身だしなみは、オシャレという
観念によって整えられるべきだというのが人間社会の観念だ。
 そんなわけで、僕のクラスの女子高生はさまざまなオシャレをし、時には
高校の規則を破ってしまうこともあるくらいだ。
 正直、不潔でなければそのあたりはどうでも良いのではないかとは思う。
 もっとも、生きるためにはどうでもいいことでも、人間社会では重要なこ
とはやまほどある。実際、僕がこうして日々の生活において、毎日狩りや田
畑を耕さなくとも衣食住にこまらないのは、その人間社会のシステムに支え
られているのは事実だ。
 だから、本質的にはどうでもいいことに、人は執着してしまうのだろう。
 なにはともあれ、ルビノ高校は、今日も退屈なくらい平和だ。
 とはいいつつも、のほほんとできるはずの秋晴れには似つかわしくない轟
音が響きわたることもある。
 音の正体は、天竜部隊だ。
 航空自衛隊松島基地第15航空団所属の曲技飛行隊の愛称である。
 展示飛行専任というと、何のことかピンとこないかもしれないが、いわゆ
るアクロバット飛行部隊ということになる。
 各地で行われる航空祭でアクロバット飛行を披露するわけで、その訓練飛
行が、ここルビノ高校の上空で行われているわけである。
 うるさくないのかと言われれば、うるさいのだが、住めば都といわんばか
りに、それが当たり前になると慣れてしまえるのが人間だ。
 だから、天竜のアクロバット飛行によって、青いキャンパスに白煙で描か
れる見事なペンタゴンやハートも、日常的なものになると見慣れてしまって
新鮮な驚きは失せてしまう。
 こういう地元民の心情など知ってか知らずか、日本三景の隣町であるだけ
に、こぼれるようにやってくる観光客は、この訓練飛行をみて、やれラッキー
だの、地元の人は毎日見れるなんてうらやましいなどと言われるわけだが、
さてさて、観光客というのは観光地の表面しか見ないのだから仕方がないと、
苦笑で返すしかない。
 多分、僕も過去に旅行した観光地の表面しか見ていないのだろうからお互
いさまというものだ。
 かく言う僕は、ただただ、やりたいことを見つけることも出来ず、惰性で
平和な学生生活を満喫している。

 
 

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