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小説を書こう!
第4回
 投稿小説 7・3分けのエンジェル 第3回

 

 

 

 

 

 

 

 

★★★
 ボォン ジョルノ、こんにちわ。クニークルスです。
「こんにちわ。みなさん。ムーシコスです」
『ごぶさたしました、呟き尾形です』
「さて、今回は、前回に引き続き、いるまがわさんの投稿小説を掲載し
ます。全3回で、今回は最終回」
 そうそう、描写の書き方については、来月上旬発行予定だよ。
 それじゃ、”7・3分けのエンジェル”第2回はじまりはじまり。

 作者名:いるまがわ
 ジャンル:児童小説
 メールアドレス:irumagawa@clubaa.com
 小説の題名:7・3分けのエンジェル(第3回)

 産院で誕生した一人の赤ん坊を囲み、父親と母親が会話していた。
「圭介。いい名前だ。どんな風に育てたい?」
「ピアノを習わせてみたいわね。わたし子どものころ習いたくても習えなかっ
たから。」
 圭介は歩けるようになるとすぐ、リトミックなるところで、リズム感をやし
なった。遊びながらピアノを覚えて行き、ピアノ教室の発表会で次第に頭角を
現すようになった。仲間の大部分は、勉強が忙しくなってくるとピアノをやめ
たが、圭介は続けた。いつの間にか全校生徒の合唱の伴奏は、圭介がやるもの
だと決まってしまっていた。
 十二歳の春がやって来た。
「圭介さん!がんばってーっ!」
 栗色の長い髪の少女が叫んだ。
 圭介は小学生最後の晴れ舞台に立っていた。地域全体のピアノコンクールの
最終選考に残ったのだ。本人が思ったより彼には才能があったらしく、みな圭
介を知っていた。いすに座り、深呼吸して、ショパンのプレリュードを弾こう
としたとき、鼻がむずむずしてついには馬鹿でかいくしゃみをしてしまった。
するとなんということか、ピアノのふたが猛烈な勢いで閉まり、圭介の大事な
指を直撃した。薄れ行く意識の中で、二度とピアノが弾けないのがわかった。
 その後の中学生活は最低だった。屋上でタバコを吸ってる連中は、向こうが
相手にしなかった。そして、十四の春になった時、あの天使が現れた。
 圭介は三秒で思い出した。
「あーっ!あーっ!あーっ!」
「どうだ?楽しくやってるか?」
「冗談じゃないよ!」
「そうか?」
「人生をやり直したい……。」

 そんなこんなで、圭介はいく度かの人生を繰り返した。
 柔道に燃えたこともあった。しかし、やはり十二の春に腰を痛めて挫折した。
 漫画家を志したこともあった。「十六才でデビューして高校を中退するんだ!」
と宣言したものの、十二の春にスランプに陥り書けなくなった。
 どうせなら大きな夢をと宇宙飛行士をめざしたこともある。だが、十二の春
に日本のロケットの打ち上げが失敗して命が惜しくなった。それでやめた。
 将棋に燃えたこともある。しかし十二の春、当時の名人がコンピュータにこ
ろりと負けたのを見て、やる気がうせた。
 仏門に走ったこともある。天使を前にして仏の道に入るのもどうかと思うが、
しかし、圭介はベジタリアンの生活に耐えられなかった。

 そして……。

 今度は圭介は剣道をやっていた。テレビで宮本武蔵を放送してたという、そ
れだけの理由だったのだが、結構がんばった。道場で練習していると、栗色の
髪をした女の子が見学するようになった。練習を終えると、自然に一緒に帰る
ようになっていった。特に話はしなかったが、圭介にしてみると、途中まで送
っていくようなつもりだった。
 十二の春になった。
 ある日、二人で小さな川沿いの道を歩いていると、屋上でタバコを吸ってい
るような感じの中学生が、何人かやってきた。彼らにしてみれば、小学生のカ
ップルを見て、何かしゃくにさわるものがあったのだろう。突然、因縁をつけ
てきた。
「ようお前ら、剣道をやってるようだな。」
「ひとつ、俺たちに腕前を見せてくんねーかな。」
 圭介は考えた。ここは女の子を守らねばならない。彼女をうながして、細い
橋を渡らせ、自分は橋の真ん中に陣取った。こうすれば少なくとも回りを囲ま
れることはない。
「なんだこいつやる気かーっ!」
 ふた回りも体格の大きな中学生が、圭介に向かって突進して来た。圭介は突
き出された相手のこぶしにこてを当て、一瞬のちには面を叩きこんだ。相手は
もんどり打って手すりのない橋から落下した。狭い川だが結構深かった。
「おい、気をつけろ。このチビやるぞ。」
 敵はまだ二人残っていた。彼らは石を持ち、圭介に向かって投げ始めた。後
ろに女の子がいるので、圭介はよけるわけにはいかなかった。飛んでくる石を
竹刀で叩き落としたが、一発顔面に命中し、そのあと肩にも当たった。圭介の
顔が血だらけになったのを見て、中学生たちは逃げて行った。
 女の子に連れられて病院に行ったが、顔より肩の方が重傷だった。どうなっ
たかと言えば、圭介は左腕が上がらなくなってしまったのだ。そして2年の歳
月が流れた。

 十四の春、あの天使が現れた。
 圭介は三秒で思い出した。
「あんたか……。」
「天使に向かってあんたとはなんだ。」
「ごめん。」
「で、どうするね?その様子では剣道はやめたようだが。」
 天使は髪を手ぐしで分けながら聞いた。
「うん。もうこれでいいよ。今のままで十分だと思う。」
 圭介は後ろを振り返った。ベンチに栗色の髪をした少女がすわっていて、こ
っちを見ている。
「ふーん。」
 天使は何とも言えないひねくれた目で圭介を見た。
「お前がいいのならこれでお別れだ。天帝に感謝を忘れるでないぞ。」
「はい。」
 天使はばさばさと羽音をひびかせて飛び立った。よたよたと右に左に飛びな
がら、地上の圭介と少女が小さくなって行く。天使はちらりと下を見てからつ
ぶやいた。
「やれやれ根性のない少年だ。このあいだのイエスという男など、三十七回目
にして納得したものを……。」

 あとがき
 いるまがわの初めての小説です。まだまだろくなもんじゃないですが、最後
までお読みいただいてありがとうございました。「7・3分けの天使」という
のは、学生のころ友人と美術部の作品を眺めていて"発見"したキャラです。ホ
ントにそういう絵を描いた人がいたんですよ。なんで7・3分けだったんでし
ょう?(^_^;。



★★★
「あ〜、おもしろかった(*^0^*)」
『全体を通して起承転結ができている良い小説ですよね』
「起承転結っていわれてもいまいちピンとこないね」
 まぁ、いづれで起承転結については、呟き尾形から”小説を書こう!”で
解説があると思うけど、今回の場合、天使の登場が起、人生のやり直しの繰
り返しが承、転がちょっと判断が難しいところだけど、主人公が人生のやり
直しの終わりを宣言するところ。そして、最後の天使の一言が結となるよ。
 まぁ、この場合、天使の最後の一言が、読者を納得させつつ、驚かせると
ころなので、転と結がいっしょになっているともいえるけどね。
「ふ〜ん、そうなんだ」
『クニークルスもいいましたが、起承転結はこうでなくてはいけない。
 という形式はありません。なので、判断が難しいところですが、クニーク
ルスの言い分がまず言い当てていると思います』
 7・3の天使というのがインパクトがあったし、最後も上手くまとまって
いたし、おもしろい小説だったね。
「次の投稿があるのかなぁ。楽しみだね」
 それは次回のお楽しみ。次回は、描写の書き方です。
 アリベデルチ




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