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小説を書こう!
第7回
 投稿小説 空を飛ぶ花

 

 

 

 

 

 

 

 

 ボォン ジョルノ、こんにちわ。クニークルスです。
「こんにちわ。みなさん。ムーシコスです」
『こんにちわ、呟き尾形です』
「さて、今回は、白月(はくつき)さんより、投稿小説がありましたので、
白月さんの投稿小説を掲載します。今回、読みきりです」
 それじゃ、”空を飛ぶ花”はじまりはじまり。

作者名:白月(はくつき)
ジャンル:童話
メールアドレス:nekutsu@hotmail.com
ホームページ:http://whsan.fc2web.com
小説の題名:空を飛ぶ花


 ある草原がありました。
 そこには草花が生い茂ていて、虫や小動物も沢山いました。
 一本の花がその草原で暮らしていました。
 その花には、ひとつの夢がありました。
「一度で良いから、空を飛んでみたい。私の上で広がるこの大空を、鳥や虫の
ように飛んでみたい」
 花は自分の葉を翼に見立てて羽ばたこうとしました。しかし、根付いた足が
、花を地面に縛りつけて放そうとはしません。
 空を飛ぶ鳥や虫を見る度に、花は自分の無力さと夢の大きさを思い知らされ
るのでした。

 ある日のこと、花は蜜を取りに来た虫に自分の夢を聞かせました。虫は言い
ました。
「それは贅沢ってものだよ」
 虫は飛んで行ってしまいました。
 虫に言われたことは、花には意味が良くわかりませんでした。ただ、いつも
空を飛んでいる虫から「贅沢」と言われて、無性に腹を立てました。
 またある日のこと、たまたま花の近くで休んでいた鳥に自分の夢のこと、虫
に言われたことを聞かせました。鳥は言いました。
「虫くんの言うとおりだ。僕達は生きるために空を飛ぶが、君は私欲のために
空を飛びたいと思っている。それは確かに贅沢だ」
 花はようやく理解しました。
「それに、もう君は一度飛んでいるじゃないか」
「え?」
 そう言い残すと、鳥は飛んでいってしまいました。
 花は困惑しました。何故なら、花には空を飛んだ記憶なんて全くなかったか
らです。

 やがて季節は流れて、花の一生も終わりが近づいてまいりました。
 それでも、鳥が言ったあのことが、解けない謎かけのように頭の中に残って
いました。
 花の頭には、何時の間にか白い綿を持った沢山の子供が生まれていました。
 ある時、とても強い風が吹きました。花は大きく揺れ、その風に乗って沢山
の子供達が空を飛んで行ってしまいました。
「あ!」
 それと同時に思い出しました。自分が小さい頃、旅をしていたことを。
 今の身長では到底届かない高さを風に乗って飛んでいたこと。全てが小さく
見えて、空が今よりも近く感じて、初めて地平線というものを見たこと。一緒
に飛んでいた同胞達がやがて飛ぶのをやめて、自分も飛ぶのをやめて、この地
に根付いたこと。
 そしてそれらは自分がまだ種と白い綿だけであった時の経験であり、その旅
は母の頭の上から始まったこと。旅のきっかけは、とても強い風。
 解けなかった謎かけが解けました。
 蒲公英(たんぽぽ)の花は全てを思い出しました。

「私は、既に一度飛んでいたんですね」
 蒲公英の花は何時の間にか隣にいた鳥に話しかけました。鳥はうなずくと、
花と一緒に蒲公英の子供達を見送ってくれました。
 子供達が見えなくなると、鳥は言いました。
「そう、君は僕達と同じだ。生きるために空を飛んだんだ」
「……私の夢は、もう叶っていたんですね」
 蒲公英の花は、急に力が抜けました。願いが叶っていた嬉しさと、何時の間
にか叶っていた悲しさが一緒にやって来たのです。そして、自分にはもう思い
残す頃は何もないと思いました。そのことを鳥にも告げました。
「本当にそれで良いのかい? もう一度飛びたいとは思わないのかい? 君さ
え良ければ、僕が君の体を切って、大空へと運んであげるよ」
 蒲公英の花は、しばらく考えました。

 鳥のくちばしが、花の体を二つに切りました。花に激痛が走りましたが、我
慢しました。
 鳥は花をくわえると、自分の羽を羽ばたかせ、飛び立ちました。
 鳥と花の目に、地平線が映りました。
「ああ、私は、一生のうちに、二度も、空を、飛んでいるんですね。なんて、
贅沢なんでしょうか」
 蒲公英の花は感動しました。そして、自分の体にはもう感覚が無いことに気
づきました。
「鳥さん、お願いが、あります」
 花は最後の願いを鳥に話しました。鳥は、快く承諾してくれました。
 鳥は限界まで高く飛び上がりました。今まで小さかった景色が、余計に小さ
くなりました。風も、花が今まで味わったことがないほど強く吹いていました

「良いかい?」鳥が言いました。
「お願いします」蒲公英の花が言いました。
 鳥は、くわえていた蒲公英の花を放しました。
 蒲公英の花は風に飛ばされ、さも自分自身で飛んでいるように見えました。
「鳥さんありがとう。ああ、私は、飛んでいる。あの頃のように、自分だけで
、飛んでいる」
 薄れゆく意識の中で、蒲公英の花は幸せに包まれて飛んでいました。


あとがき
ども、白月(はくつき)と申します。
この度はこんなへっぽこ小説を読んで頂き有難う御座います。いやマジで。
未熟な場所が多少とは思えないほど多く含まれておりますが、
そこは……勘弁してください。これからもどんどん練習します。



★★★
「たんぽぽって、蒲公英って書くんだ。しらなかったなぁ
 (◎−◎)ベンキョウニナルナァ」
 そうだね。こうした、蒲公英という漢字を表記するのは、一つのテクニッ
クだね。それに、蒲公英の一生を上手に表現することで、物語に一種のリア
リティーを与え、そして、蒲公英の擬人化に成功しているね。
「擬人化ってなに?」
 人でない動植物を、さも人のように扱う表現方法さ。それにより、読者へ
対する感情移入を促し、それと同時に対象の象徴的なメッセージを与える効
果が期待できるのさ。
「じゃぁ、クニークルス君はうさぎなのに、こうして薀蓄をかたるから、ウ
サギを擬人化しているってこと?」
 ( ̄▽ ̄;)うっ
 それはさておき、”空を飛ぶ花”は、夢を現実にするための苦しみと決意
を上手く表現できているよね・・・。
「あ、ごまかしてるぅ」
 細かいことは気にしない。
 それじゃぁ、アリベデルチ。

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