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小説を書こう!
第21回
 投稿小説 コロボックル 第2回

 

 

 

 

 

 

 

 

  ボォン ジョルノ、こんにちわ。クニークルスです。
「こんにちわ。みなさん。ムーシコスです」
『ごぶさたしました、呟き尾形です』
「さて、今回は、投稿小説を掲載します。全2回で、予定では週間で発
行予定です。
「投稿していただいた方は、いるまがわさん。
 ジャンルはホラーだけど、なんだかほのぼのな雰囲気だよね」
 それじゃ、”コロボックル”第2回はじまりはじまり。

 作者名:いるまがわ
 ジャンル:ホラー
 メールアドレス:irumagawa@hotmail.com
 小説の題名:コロボックル(第2回)

 妹がきてから、ぼくは用心ぶかくなった。もともと友だちなどいないから人
づきあいは皆無に近かったが、それでもアパートの管理人さんが来ることもあ
るし、回覧板や何かのお知らせが回ってくることもあった。セールスマンや新
聞の勧誘だってある。ぼくは玄関のカギを自分で変えた。これで、誰であろう
とぼくの許可なしにこのへやに入ることはできない。
 そのころからだ。こびとたちのぼくを見る目が、なんだかちがった感じにな
ってきたのは。ふと気がつくと、机の上がきれいにかたずいており、こびとが
一人、かたひざをついて、ぼくをまっていた。ぼくがあるくと、こびとたちが
みな立ち止まって、ふかぶかとおじぎをするようになった。ぼくが寝るときは、
こびとたちがふとんのそばで、校庭にならぶ小学生のように整列した。どうや
らぼくを警護しているようだ。
 アイコに聞いてみた。
「ねえアイコ。みんなのようすがなんだかへんなんだけど。」
「チットモヘンジャナイヨ。だいだらぼっちサンハ、ワタシタチノカミサマナ
ンダヨ。」
「神さまだって?」
 ぼくはびっくりした。いつのまに、そんなことになったのだろう。ぼくはた
だ、こびとたちの友だちになりたかっただけだ。
「神さまより友だちのほうがいいなあ。アイコはいつまでもぼくの友だちだろ?」
 アイコは何も答えず、ぼくの肩の上でしずかにこっちをみていた。そしてア
イコはすがたを消した。
 アイコが消えてから七日目の夜、机にむかおうとすると、机の上は何もかも
かたずいていた。そのかわり、四すみには小さなかがり火がたかれ、おおぜい
のこびとたちがぼくにむかってひざまずいていた。机の中央には祭壇のような
ものがあり、なにかが布でおおわれていた。
 長老がいった。
「だいだらぼっちサマ」
 こびとたちがみな、平伏した。
 ふたたびいった。
「だいだらぼっちサマ。イニシエノナラワシニシタガイ、だいだらぼっちサマ
ニ、ミツギモノヲササゲマス。」
(ミツギモノ? プレゼントのことかな。)
「コチラニッ。」
 長老が祭壇の布をとると、そこにはアイコがはだかで横たわっていた。
 ぼくは軽いめまいを感じた。心臓がはげしくうごき、くちがひとりでに開い
ていった。
「死んでるのか?」
「マダデス。デモジキニシニマス。ソノマエニだいだらぼっちサマト、ヒトツ
ニナリタイトモウシテオリマシタ。」
「ひとつになるって……」
「タベテイタダクノデス。」
 いつのまに集まってきたのか、背後のゆかに数百人のこびとたちがならんで、
「るるるるるるるるるるっ。」
「るるるるるるるるるるっ。」
っと、声をあげはじめた。
「るるるるるるるるるるっ。」
「るるるるるるるるるるっ。」
 ぼくの手が机のうえにゆっくりとのびていった。人さし指と親指でアイコの
しろいからだを持ち上げた。重さはほとんど感じなかった。
「るるるるるるるるるるっ。」
「るるるるるるるるるるっ。」
 アイコのからだがぼくの顔に近づいてきた。アイコのしろい腕、しろい足、
しろい背中がみえる。
「るるるるるるるるるるっ。」
「るるるるるるるるるるっ。」
 アイコの頭部がかくんとこちらをむいた。閉じていたアイコの目がしずかに
開いた。やさしいやさしい目だった。ぼくの目は限界まで見開かれていた。そ
してそのままくちをあけた。
「るるるるるるるるるるっ。」
 ぼくのくちのなかにアイコが入ってきた。アイコの感触がわかる。アイコの
足、アイコの胴、アイコの髪の毛がぼくの舌をくすぐった。
「るるるるるるるるるるっ。」
 アイコをかみ砕きたくない。ぼくはアイコを奥へと押しやった。しっとりと
したのどの感触を残して、アイコはぼくの中へと落ちていった。


 しろい部屋に換気扇がまわっている。窓にはブラインドがかかっており、中
央には机があった。そこには白衣の医者が座っていて、反対側には椅子が二つ、
意味ありげに置いてあった。左側の椅子は空だったが、右側には若い女がひと
り、手を膝に乗せてうなだれている。ここは明らかに病院なのに、煙草のにお
いがした。
 医者の口が開いた。
「その後、お兄さんは同じ状態ということですね?」
 女はうなずいた。
「以前、言ったとおり、本人に来てもらわなければ、なんとも手の打ちようが
ないですね。お兄さんは今でもゴキ……」
 女がビクッと反応した。
「その……、蟲に囲まれて生活してらっしゃる。そして、蟲に話しかけている
と。外へは一歩も出ないのですか」
 少し間をおいて女が答えた。
「食事は私が運んでいます。合鍵がないので、中から開けてもらわないと、部
屋には入れません」
「難しい状態ですね。誰かに危害を加えるというわけでもないですからね。や
はり、本人を説得してこちらへ来ていただかないと……公共のケースワーカー
に相談なさってはいかがです?」
 そういうと、医者は上着のポケットから煙草を出そうとした。これは時間が
来たという合図だ。女は諦めて立ち上がった。

 終わり


 あとがき
 多くの統合失調症の初期症状は、もっとリアルなものです。正体不明の声が
聞こえてきたり、自分の考えが他人に漏れていると感じたりします。やがて、
誰かが自分を陥れようとしているなどという感覚を持つようになり、それは、
多くの事実――本人にとってですが――により、裏付けられ、強固に論理的な
妄想となって巣食うのです。このように病人は苦しんでいるのであり、病気に
なれば花園の向こうで楽になっているなどという、時代錯誤の認識は改められ
ねばなりません。
 さて、佐藤さとるの「だれも知らない小さな国」は歴史的名作ですが、私は
これを読んだとき、なぜだか気味の悪さを感じました。予想よりコロボックル
たちが小さすぎるのです。ハムスターぐらいの大きさなら可愛らしい妖精とい
う感じもするのですが、虫ぐらいの大きさとなるとちょっと……。それでこん
な話を思いついた次第です。
 最後になりましたが、この小説は一人称と三人称が並列しています。このよ
うなことが可能かどうか、実験してみたいという考えにかられ、やってみまし
た。どうだったでしょうか。


★★★
「なんだか、怖いお話だけど、なんていうだろう、普通の怖いと違う怖さだなぁ」
 それはサイコホラーといって、心理学的精神的な日常生活では体験できない
ような感覚の怖さってことじゃないかな。
「それにしもても、主人公が統合失調症というのは、びっくり驚いたけれど、や
っぱり、急に妹とお医者さんのシーンになるとなんだか違う雰囲気になるね」
 作者のいるまがわ氏もあとがきで話しているとおり、一人称と三人称が一つの
作品に混じっているからだと思うよ。
 基本的には、一人称と三人称は混じるのはおかしい場合が多いけれど、コロボ
ックルのように、最後のまとめとして使用するのは効果的な使い方だと思うね。
 主人公がいけにえを口にするシーンは読者は何が起きたのか良くわからないま
まシーンが終わりを告げるけれそ、それを妹さんとお医者さんの会話で納得でき
る形にまとめているからね。
 それじゃ。アリベデルチ




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