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小説を書こう!
第40回
 投稿小説 フタリシズカ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

★★★
 ボォン ジョルノ、こんにちわ。クニークルスです。
「こんにちわ。みなさん。ムーシコスです」
『こんにちわ。呟き尾形です
「今回は、さて、投稿小説がありましたので、今回は、投稿小説を
掲載します。今回読みきりで、ジャンルは童話」
 表現技法の紹介 については、ちょっとお休みです。
 読者からの要望があれば、シニョール呟き尾形の重い腰もあがるかもしれない
けれど、現在はマイペースみたいだね。
『重い腰は余計です』
「まぁ、まぁ、
 それより、今回、投稿していただいた方は、前回ひ引き続き、メロスさん。
 タイトルは”フタリシズカ”」
 それじゃ、はじまりはじまりぃ〜。



作者名 メロス
ジャンル 短編
アドレス 非公開
題名  フタリシズカ

田辺雅夫は去年会社を退職した。妻と2人での生活を送っていた田辺は、今年

の2月に医者にガンである事を宣告されて以来、半年もの闘病生活を続けてい

る。



最近、日を追う毎に自分が弱っていくのを実感していた。妻はそんな私を見て

も面会の時に弱気な態度を見せた事はなかった。



時々、こんなにも自分に尽くしてくれる妻を見ていると奇妙な感覚に襲われる

事がある。現代には多くの建前というものがある事に気づいていた。それをモ

ラルの一言で済ますほどに薄情な男ではいないつもりだ。私は、妻への愛情を

何で示して来たと言うのか?いや、あるいはそんな生半可な感情ではないだろ

う。体の衰弱に漂う幽かな香り、もう二度と帰れないかもしれない予感に恐怖

していた。



今日の面会の時間が終わり最後に妻は言う。「また明日も来るから、ゆっくり

休んでね」「ああ、頼む・・・」その後は決まっていつも恐怖の感情に支配さ

れるのだ。闘病生活が始まって以来何度も口にした言葉を一人呟いてみる。

「ありがとう・・・」だが、この利己的で不完全な言葉を口にする度に田辺は

後悔を覚えるのだった。



翌日、妻は大きな花束を抱えて見舞いにやってきた。

「遅くなって御免なさい。」田辺は妻が花瓶に花を詰めてくれる様子を眺めな

がら、一つ一つの花を確かめた。赤、黄、白の様々な種類の花がある。しかし

そのどれもが名前も知らない花であった。ふと、妻が花を詰めながら言った。

「あなた。フタリシズカを見た時の事を覚えている?」

「フタリシズカ・・・?」「いやね。ほら、私あの花を見てすごく感動してい

たのよ。」妻がまるで子供にでも戻ったような顔をして話していた。「へえ、

そんな事があったっけ。一体どんな花なんだい?」妻は少し困ったような顔を

した。

「えーと、そうねぇ。とても可愛らしい花よ。白い花穂がついていて・・・」

「大きな花なのかい?」そう聞かれた妻はますます困ったような顔をした。

「小さな花穂が二つ付いていて・・後は4つ大きな葉っぱが在るんだけど・

・。」



妻は明日また来ると言い残して帰っていった。

その後、田辺は恐怖を味わっていた。今はただ自分のついた嘘が怖かった。

妻にプロポーズを決めていたその日、自分の故郷の近くの山へ行った時、妻と

二人でそれを見た。それはとてもみずほらしく見えたのだが、妻の目には違っ

て見えたのだ。あの時の妻の目の輝きを忘れた事はない。星のように不可解な

輝きであり、奇妙であった。



田辺はベッドの中で声を殺して泣いた。

途端、時が止まったように辺りが静かになった。

もはやそれをみずほらしいとは呼ばない。

ありありと戻った記憶の中で、ただ、それの素朴さが怖かった。



★★★
「なんだか切ない話のような気はするんだけど・・・。
 わかったようなわからないような・・・」
 夫婦というのは、一心同体っていう先入観があるんじゃないかなぁ。
 もちろん、運命共同体だけど、それは決して同じ価値観を持つことじゃない。
 でも、主人公は、同じ価値観をもてていない、あるいはとても身近な存在
なのに、理解できていないことが恐怖や不安という形になったんじゃないかと
思うよ。
『そうですね。
 できれば、フタリシズカのエピソードやそれと関連付けることを小説の
中に書けば、ぼんやりした内容がもっと鮮明になったかもしれません。
 でも、オスである男が、男である為のさまざまなアイデンティティーの
根拠を失ったときの漠然とした不安と恐怖が浮かび上がってくるとは思い
ます』
 ちなみに、フタリシズカの画像とデータは下記のサイトにあるよ。
 http://www.kyoto-np.co.jp/kp/koto/sanyaso/san38.html

 というわけで。それじゃぁ、アルデベルチ。



 




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