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光の鳳雛、時の伏龍 3

 

 エルストは、鬼塚の視線におびえなながら、ボタン操作をした。
 エルストのボタン操作によって、壁が開かれる。
 開かれた壁からは、分厚いガラスの壁でしきられていた。
 その分厚いガラスは、厚さ50ミリの硬質防弾ガラスで仕切られていた。その分 厚い防弾ガラス越しに殺風景な部屋が広がっていた。
 その部屋は、さまざまな実験を行う部屋だった。
 ガラス越しの左右の壁にはシャッターがあり、実験対象物がそこから部屋に運び
込まれる。そして、そのシャッターが開くと、檻に入れられた子犬が現れる。
「あら、かわいらしい子犬ね」と冷たく似合わない言葉を呟く鬼塚。
「なるほど、あの子犬にサイジュエリーを埋め込んだというわけですね。
 エルスト」
「人の頭を読んで、人の台詞をいわないでくれないか?
 マクシミリアン」
 自分の言いたかった台詞の腰を折られて、不満顔になるエルスト。
「では、続きを私がいいましょうか?
 エルスト?」
「いいや、説明するのは、私の仕事だ」
「どっちでもいいから、あなたの研究成果を見せて頂戴。
 説明は、その後で十分よ」
 女社長は、つめたい言葉でいいのけた。
「は、はぁ」
 エルストは、しぶしぶ鬼塚の言う事に従ったが、失笑するマクシミリアンの表情 をみれば、エルストの心の中では罵詈雑言で埋め尽くされていた事は容易に想像で きる。
 エルストは子犬の檻を開ける操作をすると、子犬は、檻から解放された自由を喜 んでいるのか、無邪気に飛び跳ねていた。
 その後、反対側のシャッターが開くと、そこには、獰猛な虎が現れる。
「ほう、あの子犬と虎を戦わせるのか?」と蝦夷谷。
「左様」エルストはにやにやしながら頷いた。
 虎は、子犬を餌だと思ったのか、しなやかな動きでゆっくり子犬に近づいたかと 思うと、巨体とは不釣合いな俊敏な動きで子犬を前足で押さえ込むと、その牙で、 子犬ののどを貫いた。
「あっけなく、おわったぞ、エルスト」蝦夷谷は不満げにエルストに言う。
「いやいや、これからだよ。蝦夷谷」
 エルストが自信ありげに言うと。子犬は確実に大きな変化を遂げていた。
 出血していた喉の傷は見る見るうちに消えていき、体の大きさも一回り大きくな った。
「あれが、サイジュエリーの力なの?」
 鬼塚がエルストに質問すると、エルストはサディスティックな笑みを浮かべて頷 いた。

 続く 

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 呟き尾形 2006年4月21日 アップ

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